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果てなき空の精霊歌④

『あ、今、ルージュ王国の宮廷魔道具師の方々が集まってきましたね! 果たして、この放送を止められるのか!? ……あ、無理そうです。残念!』


マイクを手にしたアリスが、ここぞとばかりに告げる。


『これ、神の領域の魔法、いや、魔道具です……無理です、お手上げです、と。エリートである魔道具師たちが、次々とさじを投げています。……おっと、あまりのショックからでしょうか? ここで、ジルハルト殿下たちの変顔が!』


アリスの一声に、どっと笑いに包まれた。


『本人は必死に命じているつもりでも、異世界TVの「パニック中継コーナー」として、世界中に放送されている皮肉。もはや殿下は、番組を盛り上げる、最高の「リアクション芸人」枠ですね!』


ド正論きた!

アリスはこれまで、聖女として、ほとんど休みがない過酷な環境で働き続けてきた。

それなのに濡れ衣を着せられ、いきなり婚約破棄させられた。

しかもそのまま、王都から追放決定。

理不尽な待遇。

さらに、アリスの実家の食堂を問答無用で潰そうとしたりと、ジルハルト殿下たちから不当な扱いを受け続けた。

もはや、身から出たサビだろう。


『ここで、視聴者プレゼントのお知らせです。今なら、ジルハルト殿下のサイン入りのルージュ王国の機密文書(写し)を、抽選で10名様にプレゼント! 数に限りがあります! 欲しい方はぜひ、歓迎会へお越しください!』

「マジで! 欲しい!」

『機密文書だと!? 一刻も早く、回収しろ!』


アリスの容赦ない追い打ち。

その瞬間、視聴者たちの声は、プレゼント告知に色めき立つ者たちと、さらに顔面を崩壊させて絶叫するジルハルト殿下たちとで二分化された。


ジルハルト殿下のサイン入りの機密文書。


スパイや他国にとっては、喉から手が出るほど欲しいお宝が、バラエティ番組の景品になっている。

もし、それがスパイや他国に渡れば、ルージュ王国の権威が完全に崩壊してしまうだろう。

この瞬間、テレビの盛り上がりが最高潮に達し、ジルハルト殿下の怒りも最高潮に達した。


『おのれ~!! 貴様ら、王族に対する不敬罪で、極刑ものだと言うことが分かっていないようだな!!』


怒り狂ったジルハルト殿下の指示で、歓迎会当日に精鋭部隊がなだれ込んで来そうだけど。

この森には、方向間隔を狂わせる、知覚阻害の魔法が働いている。

そのため、悪意がある者たちが一度、迷い込むと抜け出すのが不可能だ。

妨害工作は無意味。

もはや、何をやっても、精鋭部隊が迷子になる未来しか見えない。

迷いの森は、まさに物理的な『無敵要塞』だった。


『次回の異世界TVの放送の舞台は、ラトレ村の歓迎会! ラトレ村の愛され食堂の店主が手がける、トッピングやソースを自由に選べる本格オムライスに、優しい甘さとなめらかな口どけの新感覚チーズケーキをご紹介します。さらには、元使者さんによる目玉イベント、『ルージュ王国の王家のここが変だよ』、暴露トークショーを開催! ラトレ村に暮らし始めて、早くも気づいた、ルージュ王国の王家への不満とは? ラトレ村の絶好の行楽シーズンが訪れる、この季節! 次回もお見逃しなく!』

「うおおっ! 歓迎会、絶対に行くぞーー!!」

「機密文書、必ず手に入れてみせるーー!!」


確定事項で攻めてくる私のナレーションに、視聴者さんたちはもはや、大歓喜するしかなかった。


*


歓迎会の前に、ルージュ王国の王城でひと悶着あった。

何しろ、ジルハルト殿下の差し向けた使者が、世界規模で公開処刑された上に、ジルハルト殿下たちの醜態をさらしてしまったからだ。

さらには星を司る大精霊、つまり、私を懐柔しようとする目論見もあったようだが、こちらも既に破綻していた。


『何ということだ……』


ルージュ王国の国王様は、思わぬ現状に頭を抱えていた。

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