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果てなき空の精霊歌③

『ジルハルト殿下って……あんなに情けない王太子だったのか!?』

『最悪だな……!』


逆に、番組を見ていたルージュ王国の人たちは口々に不満を言い始めていた。


自分の姿が、テレビによってさらされている。


そんな深刻な状況になっているとは知らない使者さんは、ずっとひれ伏したままだった。

そこにレポーターのアリスが、マイクを持ってやってくる。


『使者さん、こちらをご覧ください』

『こ、これは……!』


テレビ画面越しに、ジルハルト殿下のブチギレっぷりを見た使者さんは、『あ、これ戻ったら処刑されるやつだ』と悟ったのだろう。


『お、お助けください! 私、今から家族共々、ラトレ村の住人になります! どうか移住させてください!』


使者さんは涙目で、あっさりと『辞表』を叩きつける。

辺境伯への忠誠心により、家族の命を守ることを優先したのだろう。

思わぬ形での住民確保。

とりあえず、ジルハルト殿下たちが何か手を打つ前に、精霊さんたちにお願いして、彼の家族をラトレ村に移住させておこう。


『おめでとうございます! ラトレ村に、新住民の誕生です! 後日、盛大な歓迎会を行います! スペシャルイベントも盛りだくさん! お楽しみに!』


アリスはマイクを手に、まるで感動のフィナーレのように中継を盛り上げる。


『なんなんだ? 一体、何が起きているんだ!』

『分かりません。ただ、我々が、世界中にさらされていることしか……』


この光景を目の当たりにして、泡を食ったのはジルハルト殿下たちだ。

テレビ画面越しに、ラトレ村に派遣した使者が寝返り、その家族まで逃げられたのを見たジルハルト殿下はもはや、怒りを通り越して愕然としていた。

王家が報復を考える隙すら与えない、精霊さんたちの機動力。

私たち、異世界TVスタッフの根回しが完璧すぎて、ジルハルト殿下たちの負けっぷりが際立ってしまったのだ。


『くそっ、何とかしろ! たかが辺境の村、一喝すれば従うだろう!』

『そう言われましても、そもそも、村にたどり着くことができないので……』


悪あがきを続けるジルハルト殿下に、臣下の者たちの苦労は絶えないようだ。

その必死すぎる模様が、既にバラエティー番組と化している。

そこで画面が切り替わり、アナウンサーの私がいる森の中が再び、映し出された。


『はい。王城からは威勢のいい声が届いておりますが、ここで一旦、後日開催される歓迎会の詳細です!』


私がそう発した瞬間、画面端には『歓迎会の日程と催しもの』というテロップが表示された。

そこには、歓迎会が行われる日と催しものの内容が詳しく説明されている。


ルージュ王国の闇の暴露と歓迎会の詳細。


ドキュメンタリーとバラエティーを同時にやるのが、異世界TVの真骨頂だ。

画面の片方では、ルージュ王国の王家が大パニック。

もう片方では、『美味しい屋台情報』や『花火情報』といった平和な告知が流れている。

さらには、元使者さんによる目玉イベント、『ルージュ王国の王家のここが変だよ』という、暴露トークショーも開催されることになっていた。

うんうん。

この情報密度のカオス感が、視聴者を飽きさせない、『異世界TV』の強みになっていると思う。


『王城は大混乱だが、ラトレ村の方は幸せそうな雰囲気だな……』

『王都にいるより、ラトレ村の歓迎会に行った方が幸せになれるんじゃね?』


実際、それを見たルージュ王国の人たちの間では、王国からの移住ブームが巻き起こり始めていたからだ。


『今すぐ、この物体を叩き壊せ!』

『それが何故か、触れることができなくて……』

『なら、宮廷魔道具師たちを呼べ! 一刻も早く、この状況を何とかしろ!』


わめき散らしているジルハルト殿下は、完全に余裕がないみたいだ。

でもね、ジルハルト殿下。

宮廷魔道具師さんたちを呼んでも、どうにもできないと思うよ。

私はほくそ笑む。

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