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かって夢見た光景④

*


時は少し遡る。

事の発端は、ルージュ王国の王城に新たな伝令が届いた時だった。


『ジルハルト殿下! 辺境伯様から伝令です!』

『何か、つかめたのか?』


ラトレ村に派遣した調査官さんたちが消息を絶ってから、ルージュ王国の王城はいまだに騒然としていた。


『件の村には、辺境伯領、ひいては国家において、稀有な人材がいる可能性があり、そのうちの一人は「大精霊」ではないか……とのことです。ラトレ村が賑わっている要因は、その大精霊の加護のおかげかと……』

『大精霊だと? まさか、あの偽聖女が大精霊と契約したというのか!?』


ジルハルト殿下は、予想外の報告に愕然とした。

ルージュ王国では、精霊さんと妖精さんは『国の財産』として扱われている。

もっとも、実際は『道具』としてしか見られないけれどね。

それなのに、ラトレ村は現在、『数多の精霊の加護を持つ村』として一躍有名になっている。

『国の財産』を、『小さな村』が確保し過ぎているのだ。

当然、見過ごすわけにはいかない。

そして、その要因がアリスにあると考えたのだろう。


『至急、使者を派遣しろ! あの偽聖女を、王城に呼び戻せ!』

『しかし、調査官たちを始め、視察に行った者たちは一向に戻ってくる気配はありません。ラトレ村にたどり着くこと自体が困難かと……』


ジルハルト殿下の言葉に、臣下の者たちは歯切れが悪い。

スローライフを掲げた騎士爵の調査官たちは今も、森の牢獄の中で快適な生活を送っていた。


『なら、ラトレ村に行ったことがある者に、王城への招待状を渡せ! その者なら、ラトレ村にたどり着くことができるだろう!』

『は、はい! ただちに手配いたします!』


埒が明かないと強硬手段に出るジルハルト殿下たち。


『これは……大変なことになりそうです! 至急、アウリス・クロエ様にお伝えしないと!』


その様子を見ていたテレビの精霊さんが、大慌てで私たちのもとに駆けつけたのだ。


「ヤバいわ。これは予想を越えすぎる反響のせいかも……!」


あまりにも想定外な出来事に、私は今までのことを思い返す。


アリスと契約したことで始まった、念願の異世界『アルトクラン』生活。

アリスとともに潰れかけていた食堂を立て直しただけではなく、未知の精霊さんの力を駆使して、『あり得ないほどの美味しい日本の料理の数々』を披露した。

そして、従来の『魔道具による生活基盤』を、ラトレ村の食堂やテレビが圧倒的なクオリティで塗り替えてしまっている。

しかも、呼び出した冷蔵庫の精霊さんたちのおかげで、コスト削減済み!

つまり、食堂の繁盛が村を潤し、テレビ番組の放送によって、ルージュ王国の既存の権威を脅かすほどの新たな経済圏やコミュニティを作ってしまっていたのだ。


小さな村に、大金を生み出す産業ができている。


そんなの、王家から目をつけられるに決まっている!


『みんなが望む、穏やかな日々。それを最大限応援するのが、この村に住む、大精霊の役目。この事実は、何としても隠蔽しなくちゃね!』


頭を抱えた私は以前、決心した想いを反芻する。


アリスやサフランくんたちに危険が及ばないように……?

隠蔽……?


いやいや、完全に瓦解している。

これでは本末転倒だ。

既に、みんなが望む、穏やかな暮らしがままならなくなっている。

このままでは、私たちは問答無用で、ルージュ王国の王城に連れていかれてしまうだろう。

ラトレ村の人たちの平穏な日々が、お先真っ暗に……。

どうにかする方法を考えないと……。


「私たちはただ、ラトレ村と精霊たちを救いたかっただけだ。それなのに、どうしてこうなったんだ?」


腕を組んで思い悩むのは勇者リスアだ。

それは、私が聞きたい。


「ふむ。未知で万能な能力はすばらしい。しかし、それらの使い道は慎重に行うべき。軽率な行動は、自らを危険にさらすということだな」

「うっ……」


痛いところを突っ込んでくるのは魔王ウリだ。

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