かって夢見た光景②
「いや、そこまで重くなくていいんだけど……」
予想以上の反響に、私は苦笑いする。
だが、最高に食欲をそそる料理は、一口食べれば虜になってしまうのだろう。
興奮して盛り上がる冒険者さんたちを見ながら、私はにっこりと微笑んだ。
「大変なこともあるけれど、こうやって、みんなで目標に向かって、協力して進めるのも楽しいわね」
食堂を繁盛させることから始まった私たちの取り組みは、精霊さんたちのための国造り、という極大まで広がった。
アリスと契約してから始まった、異世界『アルトクラン』の生活。
あまりにも突拍子がない出来事の数々が続いたけれどーー。
どれもこれも、一人では味わえない達成感がある。
ラトレ村はすっかり、生活環境が整って、暮らしが良くなってきていた。
新しい建物や観光客も増えて、もはや、『ラトレの町』だと言ってもいいかもしれない。
『ラトレ村が大繁栄した理由?』
『それはひとえに、大精霊様と聖女様たちの御業の賜物です』
『魔道具師様の力をもってすれば、造作もないことですよ』
『勇者様と魔王様とギルドマスター様が降臨したからです』
ラトレ村に滞在する精霊さんと妖精さんたちは、口々にそう噂していた。
精霊さんたち、話を盛り過ぎだよ……!?
どんどん、話が変な方向に進んでいる気がする。
そんな大混乱もあったけれど、すべてが順風満帆だった。
そして後日。
マリン様とリラ様が、ラトレ村を訪問した。
「星を司る大精霊、アウリス・クロエ様。聖女アウリス・リネット様。サフラン・フォーラム様。お久しぶりです。ミモザ帝国の第一王女マリン・ゼナート・ミモザでございます」
「第ニ王女リラ・ゼナート・ミモザでございます。本日は、ラトレ村と精霊様たちの国をつなげるための助力をするために参りました」
マリン様とリラ様が裾をつかんで、丁重に一礼する。
「ええええ!?」
「ミモザ帝国の王女様!?」
近くにいた村の人たちはみんな、仰天して大声を出す。
「ミモザ帝国の王女様たちが、ラトレ村に来られているのか!?」
離れた場所でも、混乱が起こっている。
大国、ミモザ帝国の双子姫、王女殿下たちが来訪したことは、たちまちラトレ村中に広がりそうだ。
「ようこそ、お越しくださいました。では、食堂までご案内いたします」
「ありがとうございます。待ちに待ったロールケーキを、ついに食べられるのですね。すごく楽しみです!」
リラ様がうっとりとした顔で微笑んだ。
お目当てのロールケーキを存分に堪能したいみたい。
リラ様が希望されていたロールケーキは、食堂でお披露目することになっている。
食堂に移動すると、アリスのお父さんがお二人を出迎えた。
「初めまして、ミモザ帝国の第一王女マリン・ゼナート・ミモザでございます」
「第ニ王女リラ・ゼナート・ミモザでございます。このたびは急なお話だったにも関わらず、食事会の場を設けていただき、誠にありがとうございます」
「お初にお目にかかります。ようこそ、愛され食堂へ」
マリン様とリラ様が裾をつかんでお辞儀すると、アリスのお父さんは威風堂々とした声で挨拶する。
「早速ですが、まずはこちらを。ご希望されていましたロールケーキになります」
アリスのお父さんがテーブルに置いたのは、色鮮やかな二種類のロールケーキだった。
旬の果実が、宝石のように散りばめられているロールケーキと、精霊の加護を感じるような不思議な輝きのあるロールケーキだ。
店主としてのアリスのお父さんの佇まいを見て、アリスが誇らしげにしている。
「こちらがフルーツを仕込んだロールケーキ、あちらがアーモンド風味を活かしたロールケーキになります」
「どちらも美味しそうですわ!」
「賞味させていただきます!」
マリン様とリラ様はぱあっと表情を輝かせる。
お二人に付き添っていた従者の人たちがチラッと視線を向けて確認した。
さらに、アリスのお父さんから、別のロールケーキを受け取り、味見する。
恐らく、料理に何か含まれていないか、鑑定スキルで確認して、さらに念入りに毒味しているのだろう。




