かって夢見た光景①
私たちがラトレ村に戻ってきたその日から、精霊さんたちのための国造りが本格的に始まった。
精霊さんたちの要望を聞いて、どんな国にしていくのかを勘案していく。
だが、精霊さんたちのための国を造るのは容易ではない。
困難にぶち当たる時もある。
その度に、勇者リスアと魔王ウリは、私たちの願いを聞き届けて助力してくれたんだけど。
「新しく造る精霊たちの国の名前は『アウリ聖王国』。精霊たちが住まう神聖な地として、そして、ラトレ村の並行世界の国としても、名高い国になるだろう」
「いや、勇者リスアよ。ラトレ村の並行世界の国なら、『アウリ共和国』の方がよくないか?」
そう語る勇者リスアと魔王ウリは得意げだ。
「なに……? その名前? 何で、私の名前が国の名前になっているの!?」
私の動揺をよそに、勇者リスアと魔王ウリの議論はさらに加熱していく。
「精霊様たちが、アウリの偉業を讃え、後世に残すべく、そう名付けたいらしくてな」
「ふむ。後世に残すなら、やはり、アウリ共和国の方がーー」
「やめて! 本当、いろいろヤバい気がするから!」
二人が掲げた議題に、私は慌てて、『待った』をかける。
このまま放っておくと、間違いなく、『私の名前』が国の名前になりそうだ。
頭痛の種を増やすわけにはいかない。
とりあえず、国の名前は保留にしてもらって、まずは国造りに注力してもらおう。
ハラハラしながらも、私が村中を駆け回っていると。
「ここがラトレ村か」
「ギルドマスターのアウリス・ベルワ様の紹介を受けてきたのですが」
ギルドマスターのアウベルさんが斡旋してくれた冒険者さんたちが、ラトレ村に来てくれた。
ラトレ村の警護依頼を引き受けてくれた冒険者さんたちを、私たちは手厚く歓待する。
「ラトレ村へようこそ。よろしくお願いいたします」
「こちらこそ、よろしくお願いいたします」
深く頭を下げると、冒険者さんの一人が代表して切り出した。
「しばらくは、我々が村の警護を担当します。その後もギルドマスターの推薦によって選ばれた、屈強な冒険者たちが控えておりますのでご安心ください」
アウベルさん推薦の精鋭冒険者たち。
まさに、ギルドマスターのアウベルさんの底力を知った瞬間だった。
そんな風に1ヶ月が過ぎ去った頃。
応援してくれているアウベルさんの手前、警護依頼を受けてくれた冒険者さんたちを、食事会に招待することにした。
場所はもちろん、愛され食堂。
「ここが愛され食堂か」
「温かい雰囲気だな」
招かれた冒険者さんたちは席につくと、ほっと一息ついた。
そんな中、視界の端に映ったのはーー。
「なんだ!?」
「あの不思議な生物は一体……?」
とことこ歩く『冷蔵庫の精霊さん』を見て、彼らは思わず、腰を抜かしそうになる。
「……もしかして、『精霊』なのか?」
「……なるほど。愛され食堂に行けば、精霊たちに会えるという噂は本当だったみたいだな……!」
愛され食堂で食事会。
思いつきだったけれど、これが思ったよりも高評価で嬉しい限りだ。
「ビーフステーキとエビとホタテのシーフードドリアです。どうぞ、お召し上がりください」
私はそう言うと、料理をテーブルに置いた。
ふわりと広がる香りに、冒険者さんたちはわくわくした顔になる。
「このビーフステーキという料理。表面は香ばしく、中は濃厚なジューシーさ。噛むほどに旨味が溢れ出すな」
「エビとホタテのシーフードドリアも最高だぜ。濃厚な旨味と香りが口いっぱいに広がり、コク深く蕩ける味わいだ」
日本の料理は、ラトレ村でもなければ、なかなか食べられる機会はないのだろう。
一流の冒険者さんたちが、異世界の絶品料理に胃袋を掴まれる。
「こんなうまい飯が食えるなら、報酬なんて二の次だ! 美食三昧。この村のためなら、俺は命を懸けるぞ!」
「俺たちが死んでも、この村は守り抜く!」
警護のモチベーションが爆上がりしすぎて、重すぎる忠誠を誓い始める冒険者さんたちまでいた。




