新たな国造り⑤
「さて、新しい依頼は入っているかな?」
その時、新しい冒険者さんたちが依頼を確認しに、ぞくぞくと冒険者ギルドに入ってくる。
ギルドの受付にいたり、掲示板をチェックしていたりと様々だ。
依頼が貼り出されている、掲示板が並ぶスペース。
そこにギルドの人が来て、ラトレ村の警護依頼も貼り出された。
その瞬間、心なしか、胸が高鳴る。
私たちの依頼を見て、引き受けてくれる冒険者さんたちがいるかもしれない。
もし、引き受けてくれたら、すごく嬉しい……!
冒険者ギルドを訪れたことで、私の中でそんな期待が高まったからだ。
「おっ? 新しい依頼か?」
「ラトレ村の警護依頼だな」
新しく貼り出された依頼に、物珍しさで、わっと集まってくる冒険者さんたち。
最初は依頼の内容を見て、目を丸くしていた冒険者さんたちだけど、どうやら興味を持ってくれたようだ。
「観光がてらに、警護依頼を引き受けるのも悪くないな!」
「雇用条件も報酬も、かなりいいみたいだしな!」
肯定の言葉をもらえるだけで、私たちの心は満たされる。
ルージュ王国内の冒険者ギルドではなく、この港町の冒険者ギルドに来たのは大正解。
冒険者さんたちが依頼に興味を持ってくれたのは、私たちにとって、大きな収穫だった。
「あとは、ラトレ村の警護依頼を引き受けてくれる冒険者さんたちを待つだけね。よし、いよいよ、国造りのための準備に入るわよ!」
「そうね。精霊さんたちのための国造りをするって言った手前、最後まで気を抜けないわ!」
ひと安心した私とアリスは、ぐっと握りこぶしを作って、気合いを入れる。
誰かが、ラトレ村の警護依頼を受けてくれるまでは気を抜けない。
とはいえ、みんながいれば、百人力だ。
ジルハルト殿下たちの出方が心配だけど、こうして冒険者ギルドに依頼を出すことはできた。
ラトレ村の警護は、何とかなりそうだ。
次は、精霊さんたちのための国造りに向けて、試行錯誤していくだけだ。
精霊さんたちは、私の大切な仲間だ。
絶対に、危険にさらすわけにはいかない。
そのためにも、精霊さんたちのための国造りを頑張らないと。
だけど、精霊さんたちのための国を造るのは容易ではない。
それなりの準備が必要である。
物資、設備、人出など。
すべてがまだまだ、足りない。
そんな根本的な問題に直面していたけれど。
「ラトレ村の方とお見受けします」
ギルドを出ようとすると、ばったりと女の人に出くわした。
金髪碧眼の見目の整った女性だった。
「……あなたは?」
「僕は、ここのギルドマスターです。ようこそ、我がギルドへ」
「ええっ! ギルドマスター!?」
私たちの驚愕に、女の人はふふ、と上品に微笑む。
「ただのギルドマスターではないですよ。あなた方と同じ、『アウリス』。アウリス・ベルワと申します。『アウベル』とお呼びください」
この港町のギルドマスターが、私たちと同じ前世を持つ『アウリス』。
二重の意味で驚きだ。
あまりに突然の出来事に、夢でも見ている気持ちになる。
まさか、分裂した私の一人がギルドマスターになっているなんて、思ってもみなかった。
だから、今の時点では会えたことへの感動よりも、驚きが勝っている。
「アウベルさん。あの、どうして私たちがアウリスだと?」
私はふと、気になったことを尋ねる。
「僕はギルドマスターだからね。近隣の情報は常に仕入れています。それに、勇者リスアの出身地がこの港町なんですよ」
「ええっ、そうなんですか?」
「はい。僕たちは、幼い頃からの幼なじみなんです」
思いがけない事実に、私は少しだけ胸が高鳴るのを感じた。
「彼女から、事情を伺っています。『ラトレ村の警護依頼』を出しに来られたんですね」
「はい」
どうやら、勇者リスアから、私たちの事情をあらかた聞き及んでいたみたい。
「では、僕の方からも、冒険者さんたちに仕事の斡旋をできないか、試みてみますね」
「ありがとうございます」
港町ヴァルバルトに来てから早速、心強い味方ができたような気がした。
「ギルドを訪れたことで巡り会えるなんて、不思議な縁ね。もしかすると、わたしたちは別の人生を歩んでも、必ず巡り会えるのかもしれないわね」
そこにアリスも加わったことで、今までの溝を埋めるように、『アウリスたち』がそろった気がする。
不幸続きの残念転生。
女神様の凡ミスで、転生の間に来た時に、私の存在が分裂してしまったけれど。
悲しき過去は別れじゃなくて、ただいまに繋がる。
アリスが言ったとおり、こうして、私たちはいつか巡り会える運命にあるのかもしれない。
「うーん。よく分からないけれど、アウリ様とアリスは本当に顔が広いんだな……」
ただ、サフランくんは一人、事情が飲み込めず、置いてきぼりを食らっていた。




