新たな国造り②
傭兵を雇えるようになるまでの間、何もしないわけにはいかない。
サフランくんの工房で、『防犯カメラの精霊さんをもとにした魔道具』を作ってもらったりと、村の安全面を強化してもらっていたのだ。
「冒険者に……?」
「もしかして、冒険者ギルドに依頼するの?」
思わぬ提案に、私とアリスは疑問の声を上げる。
サフランくんは満を持って切り出した。
「はい。冒険者ギルドに、ラトレ村の警護依頼を出せば、毎回違う冒険者たちが村を訪れます。村を守れる上に、村の存在を知ってもらうことができます。一石二鳥だと思うのですが」
「それ、いいわね!」
その発案に、私は意気揚々と声を弾ませた。
心に、ぱあっと一条の光が差し込む。
冒険者ギルドに依頼する。
この方法は確かに、勝算があるかもしれない。
つまり、この村に訪れた冒険者さんたちがまた、警護したくなるような『魅力』を提供できればいいわけだ。
大盛況を博したスペシャルイベント。
そして、精霊さんたちの加護と日本の料理が、その動機になってくれたらいいなと思う。
「よし、この調子でもっともっとアピールして、村にたくさんの人たちが来訪してもらえるように頑張るわ! そして、冒険者ギルドに、村の警護依頼を出さなくちゃ!」
「その意気だわ。冒険者ギルドへの依頼、楽しみね!」
張り切って、村の経営に励む私とアリスだった。
『星を司る大精霊、アウリス・クロエ様。聖女アウリス・リネット様。サフラン様。ミモザ帝国の第一王女殿下と第ニ王女殿下からご通達がありました』
その時、テレビの精霊さんが会話に入ってくる。
『ぜひとも、精霊たちの国のために、力を尽くしたいと。ただ一度、オンライン通話で、そのことについて会談をしたいと申しております』
「分かったわ」
ミモザ帝国の双子姫ーー第一王女マリン殿下と第ニ王女リラ殿下との初対面に緊張が走る。
凝縮する私たちをよそに、テレビの精霊さんは満足そうに画像を映した。
『星を司る大精霊、アウリス・クロエ様。聖女アウリス・リネット様。サフラン・フォーラム様。初めまして、ミモザ帝国の第一王女マリン・ゼナート・ミモザでございます』
『ミモザ帝国の第ニ王女リラ・ゼナート・ミモザでございます。私たちはどちらも、アウリ様たちと同じ「アウリス」です。今回、勇者リスアからお話を伺い、オンライン通話の会談をさせていただきました』
神々しさを感じさせる、絹のように滑らかな銀色の髪を持ち、金色の瞳は宝石のように輝いている双子姫。
テレビ画面の向こうで、第一王女マリン殿下と第ニ王女リラ殿下が華麗に一礼した。
「マリン様、リラ様。星を司る大精霊、アウリス・クロエです。ご尊顔を拝見できたこと、光栄に存じます」
「ルージュ王国で聖女を務めておりました、アウリス・リネットでございます」
「サフラン・フォーラムです」
裾をつかんで一礼した私に次いで、アリスとサフランくんがお辞儀する。
アリスたちは、マリン様とリラ様を見て、少し驚いているみたいだった。
二人の驚きは、私にも分かる。
マリン様とリラ様はそっくりだ。
声が、容姿が、さりげない仕草が、穏やかな性格が。
二人を構成する要素、すべてがどうしようもなく、苦しいくらいに似すぎている。
すべてが瓜二つだと言ってもいいほどだった。
『本日は、このような機会を設けてくださり、ありがとうございます』
『お三方にお会いできて嬉しいです』
言葉にできない想いを抱き止めるように、マリン様とリラ様は微笑んだ。
『星を司る大精霊、アウリス・クロエ様。聖女アウリス・リネット様。あなた方はやはり、私たちに似ていますね』
マリン様の気持ちに、私とアリスはシンパシーを感じる。
私たちも同じだ。
マリン様とリラ様は、私たちとどこか似ている雰囲気を感じていた。
だから、お二人を初めて見た時から、少しずつ惹かれていた。
私たちはきっと、分かたれた別の私たちに、前世の自分の面影を重ねてしまっている。
『実際に、お会いできて幸せです』
『これも、テレビの精霊様のおかげですね』
マリン様とリラ様の屈託のない笑顔を見ていると、私とアリスが抱いている気持ちと同じものが、二人の中にもあるのだと悲しいくらい分かった。
今は名前が違っていても、やっぱり、彼女たちも、私たちと同じ前世を持つ『アウリス』だと。
『テレビの精霊さんを通じて、初めてラトレ村を拝見しましたが、住民の皆様が笑顔でとても良い村だと感じました』
『ええ。一目見て、素敵な村だと確信いたしましたわ』
「ありがとうございます」
マリン様とリラ様からの嬉しい言葉。
心が壊れそうなほど、音を立てて脈打っているのを感じながら私たちも同意する。
『……すべての事情は、勇者リスアから伺いました』
リラ様は深刻な面持ちで告げる。
ルージュ王国における、精霊さんたちの実情。
内心、気が気ではなかったのは、マリン様とリラ様も同じだったみたいだ。




