新たな国造り①
『春といえばお祭り、お祭りといえばラトレ村!』
リボンとフリルを翻し、私とアリスは回る。
今回も聖女だとバレないように、アリスは変装をしている。
ステップを踏むと、指でハートを作り出した。
その背後には、小さな妖精さんたちがふわりと舞い踊る。
そして、私たちはとびきりの笑顔を浮かべて、画面の向こうの視聴者さんたちへ語りかけた。
『期間限定の春グルメも続々登場! スペシャルイベントも開催中! 精霊と妖精に会える村。ラトレ村に行こう!』
私たちのバックには、無数のスイーツの映像が乱れ飛ぶ。
いちごのショートケーキにチョコケーキ、ティラミスにロールケーキ。
デニッシュ、ワッフル、モンブランも。
よりどりみどりのスイーツの鮮やかさな色は、まるで虹のようだ。
精霊さんと妖精さんたちの移住をお祝いする、期間限定のスペシャルイベント。
その開催を祝して、放送したのが先程のコマーシャルだ。
短いコマーシャルだったけれど、効果は抜群。
妖精さんたちの出演も手伝ってか、放送して間もなく、ラトレ村のイベント用の屋台はいずれも長蛇の列が連なった。
「うまいな、これ!」
「熱々で、癖になる味わいね」
屋台で買った、たこ焼きやフランクフルトなどを手に、観光客たちは村の広場のベンチにふわりと腰を下ろす。
「すっかり、春の花が見頃だな」
「そうね、綺麗だわ」
視界に広がるのは、このイベントのために準備した、華やかなフラワーガーデン。
瞳に色とりどりの花を映して、訪れた人たちはお祭りを堪能する。
春を思わせる、穏やかな青空と雲。
花のガーデンの向こうには、太陽に照らし出された細道ときらきら輝く森がある。
精霊さんと妖精さんたちの移住をお祝いする、春祭りは大いに盛り上がった。
そんなわけで、幸先の良いスタートを切ったスペシャルイベント。
「いらっしゃいませ」
私は忙しなく、食堂を駆け巡っていた。
本来、低位の精霊さんや妖精さんの姿は、普通の人たちには見えない。
その声も、常人には届かない。
だけど、その不思議な力は垣間見ることができる。
「うわあっ、すごい! 見て見て! 料理が浮いている!」
「実は、妖精さんたちが料理を運んでいるんですよ!」
精霊さんたちは料理を運んだりして、私たちのお手伝いをしてくれた。
意思疎通はできないけれど、お客さんたちは、精霊さんたちの存在を身近に感じて興奮しているみたい。
「この料理、おいしいな。無限に食べられる。どうやって作っているんだ?」
「あ……大変申し訳ございません。作り方は企業秘密です」
さすがに、「この世界に存在しない材料と調味料を使って、作っています」とは言えないので、ごまかすしかない。
この世界で、日本の料理が食べられるのは精霊さんたちのおかげである。
「そうなのか、残念だな。まあ、ここにくれば、いつでも食べられるか」
「ありがとうございます。では、ごゆっくり」
「ありがとう。また、来るよ」
おいしい料理が食べたい。
その想いがあれば、もはや、背に腹はかえられないのだろう。
さらに食堂に設置したのは、簡易な特設ステージ。
炎の珠を出したり、つむじ風を起こしたり、水しぶきで虹を出したり。
精霊さんと妖精さんたちが代わる代わる、華麗なパフォーマンスを披露していき、お客さんたちを存分に楽しませた。
「精霊と妖精に会えるという……噂の村はここか?」
「随分、賑わっているな!」
ものすごい精霊さんたちが、ものすごくおいしい料理を食堂で提供してくれるのだ。
その噂は瞬く間に、世界中を駆け巡ってしまった。
精霊や妖精通の魔道具師さんたち、そして美味しいものには目がない美食家のお客さんたちが殺到し、さらに村は賑やかになった。
そして迎えた、期間限定のスペシャルイベントの最終日。
「ついに、この時が来たわね!」
『ついに……とは?』
いつもと違う私の雰囲気に、精霊さんたちがごくりと喉を鳴らせる。
「この調子なら、目標としていた傭兵を雇うこともできそうだわ!!」
『おおおお~!!』
弾けるような笑顔を浮かべて宣言した私の周りに、歓呼した精霊さんたちが集まって戯れ出した。
勇者リスアと魔王ウリたちのおかげで、ラトレ村の平和は守られている。
だが、王家や貴族、領主が関わってくると、話は大きく変わってくる。
人出が増えた今、もはや、傭兵を雇うことは最重要課題だろう。
テレビ番組の宣伝のおかげで、そのための資金は溜まりつつある。
「でも、傭兵さんたちを雇うとしたら、どのくらいの報酬額が必要なのかな?」
「そうね。常時となると、結構な額になりそうだわ。それに長期間、ベテランの傭兵さんたちを雇うのは領地間の軋轢もあって厳しそうね」
私が疑問を口にすると、アリスはうーんと考え込む。
「ベテランの傭兵さんとなると、そもそも引く手あまただろうし、いくら有名になったとはいえ、ラトレ村みたいな田舎はあまりいい条件の職場とは言えないわ」
「だったら、冒険者に依頼したらいいんじゃ……なくてどうですか?」
そこに、『魔道防犯カメラ』の状況を確認していたサフランくんが会話に入ってくる。




