↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
23/49

精霊が招く逃避行③

『なるほど。聖女アウリス・リネット様がいなくなった理由は、彼らのせいだったのですか……』

『卑劣な……』


急に消えた聖女に驚き、混乱していたルージュ王国の精霊さんたちも、テレビを見て驚愕に震えた。

聖女は、精霊さんたちと心を通わせることができる。

いわば、聖女は、精霊さんたちにとって、『かけがえのない大切な友人』に当たるのだ。

それなのに、偽物呼ばわりした上に、さらに彼女を貶めようとしている。

なんてひどい仕打ちをするのか、と精霊さんたちは激怒した。


『ルージュ王国在中の精霊さんと妖精さんたち。いっそのこと、ルージュ王国の王都から出ませんか?』


そのタイミングで、アリスがうずうずした様子で口を開いた。


『王都に残っても、いいことはありませんよ。聖女と同じように、搾取されるだけです!』


その言葉が、精霊さんたちにもたらした影響は大きかった。


『搾取……。確かに、最近のルージュ王国の宮廷魔道具師たちの動向は目に余るものがある……』

『我々精霊を、道具としてしか見ていない……』


精霊さんたちの思考はおおよそ、ここに着地するようだった。

星を司る大精霊の私もそう思うよ。

少なくとも、ジルハルト殿下たちはろくでもない。

心の底から、そう思わずにはいられない。

ドキドキ。

手を握りしめて、精霊さんたちの動向を食い入るように見つめていると。


『今なら、わたしたちが、精霊さんたちの移住先を斡旋できます。これを逃す手はないですよ!』


アリスがここぞとばかりに告げる。


『それに、星を司る大精霊様がお怒りだから、この国がまるごと消し飛ぶかもしれないわ!』


アリス……。

肯定の根拠が予想した方向と違うんだけど。


『星を司る大精霊様がお怒り……!? こうしてはいられない!』

『その言葉に甘えよう。我々は即急に、この国から脱出する!』


アリスの誘いに触発されたのだろう。

精霊さんと妖精さんたちは、次々とルージュ王国の王都から飛び去っていく。

精霊さんたちに見限られた、国の末路は考えるまでもない。

っていうか、この国がまるごと消し飛ぶって……。

アリス、話を盛り過ぎだよ!

精霊さんたち、真に受けているし。

大精霊のネームバリュー、すごすぎる!


でも、ルージュ王国の王都から去った精霊さんたちはどこに行くんだろう?

もしかして、このまま、ラトレ村に来たりとかはないわよね?


嫌な予感しかしない。

そこで画面が切り替わり、アナウンサーの私が再び、映し出される。


『レポーターさん、ありがとうございました。ルージュ王国の王都から飛び去った精霊さんたちの行方、気になりますね。……えっと、あれは何でしょうか?』


見上げれば、無数の精霊さんたちが空を背景に漂っている。

どうやら、ラトレ村を目指して、転移魔法顔負けの超特急スピードで飛んできたらしい。


『もしかして、あの精霊さんたちは、移住先を求めて、ラトレ村に来たのでしょうか?』


私は内心、焦りつつも、現状を視聴者たちに伝えていく。


『移住先を斡旋できる場所はどこだ?』

『あのお方は、もしかして異世界TVの……?』

『なら、受付場所はあそこだな!』


案の定、私の予想はばっちり当たったわけで。

移住先を求めて、精霊さんたちがラトレ村入口に詰めかける。


『異世界TVのアナウンサー様、お助けください! 星を司る大精霊様がお怒りなのです!』

『我々をお救いください! ぜひ、移住先の提供を!』


アナウンサー席の前を埋め尽くしたのは精霊さんたち。

ゴリゴリと押し寄せ、話を進めてくる。


『えっと……皆様、落ち着いてください!』


話が突飛すぎて、突っ込むに突っ込めない。

とりあえず、星を司る大精霊は、異世界TVのアナウンサー兼レポーターの私のことです。

……とは、さすがに言えない。


「素晴らしい! 私が提案した企画が、ここまでの成果を上げるとは!」

「これが、噂の壁ドンというやつか! アウリに先を越されるとは思わなかったな!」


その様子を見守っていた勇者リスアと魔王ウリが、能天気な解説をしている。

壁ドン?

少なくとも、こんなの、私が知っている壁ドンじゃないんだけど!


「何が起きたんだ?」

「よく分からないが、この村に精霊様たちがお越しくださったようだ」


様子を窺っていた村の人たちはみんな、口をぽかんとして立ち尽くしている。

そこにサフランくんがやってきて、こっそり耳打ちした。


「アウリ様。ここまで派手にやらかすと、精霊様たちに隠すのは無理だと思います。先に正体を明かしておいて、今後の隠蔽に協力してもらった方がいいのでは?」

「……私もそう思う」


もっともな意見に、私は全力で同意する。

身を焼かれるような焦燥。

頭がくらくらした。

自ら墓穴を掘っていく前に、この場を何とかしないと。


『えー。精霊様たちの移住への斡旋が始まることになり、ラトレ村は精霊の加護のある村、お出かけスポットとしても注目を集めることになりそうです』


マイクを手にした私は気を取り直して、ナレーションを続行した。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。