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王国への意趣返し③

『全くだ。偽聖女アウリスは、己が聖女であると偽って、この国を魔物の脅威にさらした。魔王軍と共謀し、私たちを貶めた罪は重い』

『ジルハルト殿下……』


リリアは周囲に見せつけるように、ジルハルト殿下を見上げる。

茶色の瞳を輝かせ、赤みを帯びた髪は腰までまっすぐに落ちていた。


『リリア、君は美しい。まるで星の精霊のようだ』

『まあ、嬉しいですわ!』


悪びれる様子もなく、二人は微笑み合う。


「……星の精霊って、こんな女と同列にしないでよ!!」


思わぬ茶番劇に当然、私は全力で突っ込んだ。


あまりに身勝手な言い分。

言われのない罪で、アリスを偽聖女と侮蔑し、しかも、アリスの両親の食堂を潰そうとしている。

なんて最悪な人たちなんだろう。


その事実は、私の心を締めつけた。


「……なによ、それ」


アリスはキッと、画面の中のジルハルト殿下を睨みつける。


「それはわたしのセリフよ! わたしも好きで、あなたと婚約したわけじゃない!」


アリスは憮然とした態度で言い返した。

婚約破棄された時も、そう口にできたら良かっただろう。

しかし、王太子相手に言い返すことができるはずもなく、アリスはただ殊勝なふりをして頭を下げることしかできなかった。

だが、ここはラトレ村。

テレビ画面に映し出されているだけで、ジルハルト殿下たちはこの場にいない。

積み重ねた我慢が爆発したのだろう。


「殿下。あなたと婚約してから、本当に踏んだり蹴ったりの人生だったわ!」


アリスは幼い頃から聖女として、ルージュ王国に尽くしてきたのに、突如、ジルハルト殿下から婚約破棄を言い渡された。

しかも、偽聖女のレッテルまで貼られて、王都から追放されてしまった。

渦中の人物、ジルハルト殿下は今もなお、アリスが偽聖女で、聖女をたばかった罪がいかに重いのかという口上をだらだら述べている。

だが、そんな言葉も耳に入ってこないくらい、私たちは頭に来ていた。


『言われのない罪で、聖女を追放する王太子。本当に、ろくでもないな!』

『やはり、ルージュ王国の王城だけは我々、魔王軍が総攻撃で破壊しておいた方が良さそうだ!』


勇者リスアの言葉に力強くうなずくと、魔王ウリは物騒なことを告げた。


魔王軍の総攻撃。


考えるまでもない。

小国、ルージュ王国の王城は、すぐに壊滅することになるだろう。

下手をすれば、ルージュ王国そのものが大変なことになるかもしれない。

だが、ジルハルト殿下は難癖をつけて、『聖女アウリス・リネット』を罠に嵌めて虐げた。

それはアリスだけではなく、『11人のアウリス』全員を敵に回したことになる。

ルージュ王国の未来はもはや、風前の灯だろう。

口火を切ったのは、テレビの精霊さんだった。


『聖女アウリス・リネット様。その、申し上げにくいことなのですが……』


その言葉に、アリスは表情を曇らせる。

私と同じく、嫌な予感を覚えたのだろう。

そして、嫌な予感は見事に的中してしまう。


『実は、ラトレ村が賑わっていることを不審に思ったジルハルト殿下が、ラトレ村に騎士爵の調査官たちを向かわせているようなのです』

「やっぱり……」


テレビの精霊さんの報告に、アリスはぎこちなく笑う。


人気が減ったラトレ村は、さらに貧しくなっていくはず。


ジルハルト殿下はそう踏んでいたのだろう。

だが、アリスは私、星を司る大精霊と契約して、村を大きく復興させた。

それを不審に思ったジルハルト殿下は、本格的な調査に入ったのだろう。

予想外の出来事に、場がしんと静まり返ったものの。


「なにそれ! 最悪すぎる!」


沸々と怒りがこみ上げてくる。


とんでもないことだ。

卑劣で唾棄すべき言いがかりで、アリスを一方的に追放した。

それなのに、今度はラトレ村まで貶めようとしている。


追い打ちをかけてきたジルハルト殿下に、私たちがするべきことは決まっていた。


『よし。クズ王太子に、勇者の力というものを見せてやろう!』

『我が魔王軍は、いつでもルージュ王国を滅ぼせるぞ!』


勇者リスアと魔王ウリはやる気満々。

どちらも、あらゆる名声を誇る、恐ろしい力の持ち主だ。

王城の破壊くらいで済めば、御の字としよう。


『なあ、アウリ、アリス。要は、調査官たちが、ラトレ村に来れなくすればいいんだな?』


勇者リスアが、かなり率直に的を射た質問をしてきた。


「ええ。さすがに行けない村にまでは、手出ししてこないと思うしね」


ジルハルト殿下たちを見た感想をもとに、所感を述べる私。

勇者リスアは満を持って切り出した。


『じゃあ、こういう方法はどうだ? 精神干渉系の魔法』

「精神干渉系の魔法?」

『ああ。知覚阻害の魔法で、方向間隔を狂わせるんだ。視覚を曇らせ、方向間隔を狂わせれば、彼らがラトレ村にたどり着くことは困難になる』


一石投じた提案に、私たちは目を丸くする。


『その上で、ルージュ王国の精霊や妖精たちに向けた、「異世界TV」の特別版を放送したら、奴らの度肝を抜くことができるはずだ!』

「『異世界TV』の特別版の放送……!」


目的が定まれば、もはや、迷いはなかった。

私たちは早速、『異世界TV』の特別版の内容を勘案していく。

この勇者リスアの提案が、ルージュ王国を轟かす大事件に発展していくことになるのだった。

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