自重ができない私たち④
「気づかなくてごめん……じゃなくて、大変申し訳ございません。このたびは、わざわざご足労いただきありがとうございます。こちらがテレビ用の魔道具になります。ご確認ください」
「うわあっ! サフランくんが造った魔道具、すごいわね! 期待以上よ!」
率直に言った感想だったが、サフランくんからは少し意外な反応が返ってきた。
「ありがとうございます。テレビの精霊様がサポートしてくれたおかげです」
サフランくんは少し照れくさそうに、テレビの精霊さんを見つめる。
するとテレビの精霊さんは興奮気味に、ここぞとばかりに話を切り出す。
『アウリス・クロエ様。サフラン様は素晴らしい技量の持ち主です! わたくしの説明だけで、テレビの構造を理解して、それに伴う魔道具を忠実に造り上げてしまいました!』
「すごいわよね!」
テレビの精霊さんの言葉に、私は大いに納得する。
テレビの精霊さんが認めるほどの優れた逸材。
これだけの腕を持ちながら、ルージュ王国の魔道具師ギルドでは不憫な扱いを受けていた。
恐らく、優秀だったから、妬まれていたのだろう。
ルージュ王国の魔道具師ギルドって、本当に見る目なさすぎる。
悶々としつつも、テレビ番組制作に話は戻る。
「これで、魔道テレビの試作機の準備は万端。よし、量産したら、いよいよ、テレビ番組の収録の準備に入るわよ!」
「さあ、ここから他の作業も仕上げね。放送するって言った手前、最後まで気を抜けないわ!」
私とアリスはぐっと握りこぶしを作って、気合いを入れる。
テレビ番組の放送が終わるまでは気を抜けない。
とはいえ、みんながそろえば百人力だ。
勇者リスアたちの協力を得て、量産した魔道テレビを各地に配置した後。
私たちは満を持って、異世界『アルトクラン』、初のテレビ番組を放送することになったのだ。
*
テレビ番組の名前は『異世界TV』。
テレビ番組の受信場所は、ラトレ村とミモザ帝国と魔王城付近、あとは転生の間のみ。
そして、ライブ中継型プロモーション。
つまり、生中継を流すことにしたのだ。
面白さを追求しつつも、私たちは万全を期すために慎重に打ち合わせを行っていった。
これは魔道テレビを配置してから、二週間後に放送された、実際のテレビ番組の内容である。
『こんにちは。皆様、いかがお過ごしでしょうか』
画面中央にはマイクを持った、異世界TVのアナウンサーの私が映し出された。
番組収録現場は、ラトレ村付近の森。
場所が特定できないように、森の中にしている。
『お昼の合間に、とっておきな情報をお届けする、異世界TVのお時間です。あなたの今、知りたい情報を楽しくお届けしますよ。では皆様、最後までごゆっくりとお楽しみください!』
その響き渡った声に、各地の人たちが手を止め、テレビ画面に目を釘付けにした。
魔道テレビが配置されている場所は、広場などの人目に引くところにしているからか、多くの人たちが足を止めた。
「な、なんだ、あれは? 魔道具か?」
「もしかして、勇者リスア様がおっしゃっていたテレビというものでは?」
「おい! 魔王様が薦めていたテレビ番組が始まったぞ!」
待ちわびた人たちが、続々とテレビ画面に視線を向ける。
勇者リスアのお墨付きだと言われたら、誰だって注目せずにはいられない。
それに魔王軍における、魔王ウリの宣言効果は抜群だった。
『放送第一回目の特集は、『新たな観光地、ラトレ村』。村に暮らす村人たちに突撃インタビューしてきました。では、ここで現場にいるレポーターさんを呼んでみたいと思います。レポーターさん? レポーターさん!?』
私がそう言うと、画面がラトレ村の畑道に切り替わる。
画面端には、『ラトレ村の名産品といえば?』というテロップが表示された。
『はい。こちら、ラトレ村です。本日は、ラトレ村の名産品について、突撃インタビューしたいと思います』
マイクを手にしたアリスは、村人たちへと目を向けた。
聖女だとバレないように、顔をフードで隠して変装をしている。
正体を隠し通して、このままレポーターとして徹するつもりらしい。
『すみません。ラトレ村の名産品について、お伺いしてもよろしいでしょうか?』
『ラトレ村の名産品かい? そうだね。やっぱり、麦やトマトじゃないかな』
『僕、食堂で、麦とトマトを使ったナポリタンをよく食べるよ!』
アリスがマイクを向けると、村の人たちが次々と名産品について話していった。
『ラトレ村の名産品といえば、麦とトマト。それを使った「ナポリタン」という未知の料理を知るため、私は食堂に潜入し、その人気の秘密を深掘りしてきました。ラトレ村にまつわる、美味しい伝説を検証します!』
アリスの弾んだ声と同時に、画面が食堂に切り替わる。
『今回、ご紹介するのは、ラトレ村の「愛され食堂」の定番メニュー、ナポリタン。麦とトマトを使った、甘くコクのある一品ですよ!』
「ナポリタン? なんだ、その料理は?」
「あの、魔王様が話していた料理か?」
アリスの説明を聞いた人たちが、興味深そうに目を見開いた。




