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願いをつかめ、想いを解き放せ⑤

「テレビ番組を放送するために、必要な魔道具か。そもそも、テレビの精霊自体がすごいな!」

『ありがとうございます』


サフランくんは、その精巧な造りに舌を巻く。


『まずは、テレビに必要な周辺機器を、魔道具として造り出すことが先決になります』

「分かりました。ご教授願います。まず、この『走査線』の魔力密度は……」

『仕様書によりますと……』


テレビの精霊さんの専門的な説明に、サフランくんは驚きつつも、さらに踏み込んだ話を始めた。

テレビに必要な周辺機器を、魔道具で造り出す。

多分、機能は同じに違いない。

でも、前世と違うのは電気で動くのではなく、魔力で動くということだろう。


「魔道具の方は、これで何とかなりそうね」


その様子を見ていた私はほっと一息つく。

だが、これで問題がすべて解決したわけじゃない。

むしろ、これからが始まりなんだ。

新しいメニューやお店の立て直し、他にもいろいろやることが残っている。

でも、これは私一人で結論を急ぐ必要はない。

何故なら、今の私の周りにはたくさんの頼れる人たちがいるからだ。


「よし、私たちもお店の新装オープン、頑張らなくちゃ!」


サフランくんたちが頑張っている間、私たちも、私たちのするべきことをするだけだ。

そう意気込んでいたその時、窓の外に何かの気配を感じ取った。


「アリス、今の……」

「ええ……。魔物の気配よね……」


アリスも、その気配を察知したみたいだ。

表情に不安をよぎらせている。

私はため息をついて、何とか気持ちを落ち着かせた。


「魔物……」


アリスの言葉を反芻して、不安を払拭させるべく考える。


魔物が、私たちの動向を見守っていた。

この村に、聖女と大精霊がいるから?


そんな疑問がよぎったが、私は無意識に声を発していた。


「魔王の私が、私たちの案に興味を持ったからかも……」


そう考えると、脳裏に浮かんだ様々な疑問がすとんと胸の底へと落ちていく。

魔王の私は同じ前世を持つ、もう一人の私だ。

私たちが食堂の新装オープンにワクワクしたように、魔王の私もそれに関わりたいと思ったのかもしれない。


「そういえば、いたわね。分裂した時に、魔王になったわたしが……。確かに、この話を聞いたら、興味を持ちそう……」


私と同じ結論に至ったアリスがぽつりとつぶやく。

嫌な予感がした。

つまるところ、私たちの動向は魔王軍側に筒抜けの可能性がある。

今後、魔王の私が、テレビ番組に関わってくるかもしれない。

それにーー。


「ルージュ王国を魔物の脅威にさらしたのは、魔王の私よね」


思考の海に沈みそうになった意識を、現実に戻す。

アリスが、ジルハルト殿下に婚約破棄を突きつけられた原因の一端は魔王の私だ。


「そうだったわね。あの騒動のおかげで、ジルハルト殿下と婚約破棄できたし、感謝してもし切れないわ」

「感謝……?」


思わぬ発言に、私は戸惑いがちにアリスに尋ねた。


「だって、そうでしょう。あのままだったら、わたし、一生、ジルハルト殿下と離れられなかったかもしれないしね」


相変わらずのんびりした口調のまま、アリスは何とはなしに言葉を発する。


「それに魔物の脅威にさらしたって言っても、魔物が国境付近に姿を現しただけ。それを大袈裟にしたのは、ジルハルト殿下たちなんだから」


アリスは清々しい表情で私を見た。

私は遠くから眺めていただけだったから詳しくは分からなかったけれど、実際はそうだったのね。


アリスは七歳の時、聖なる力を教会に見出だされ、聖女となった。

ルージュ王国では、聖女は王族と婚礼を結ぶのが慣例である。

アリスも聖女認定された後から、この国の王太子、ジルハルト殿下と婚約していた。

以来、アリスは聖女として、ほとんど休みがない過酷な環境で働き続けてきた。

それなのに濡れ衣を着せられ、いきなり婚約破棄させられた。

しかもそのまま、王都から追放決定。


ちょっ!

改めて考えるとアリス、搾取されている!

聖女って、ブラックだよね!

ほとんど休みなしって、聖女の暮らしは想像以上に過酷だった。


「婚約破棄された時も、解放感しか感じられなかったわ。聖女の力がなくなったことで、国が衰退するかもしれないけれど、それこそ自業自得よね!」


ド正論きた。

私は今さらに、アリスのすごさを実感した。

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