第十五話 安息
『何故......何故なんだ!? 僕たちが何をしたって言うんだ!? ......答えてくれ、カナタ!』
『俺は......平和な世界を望んでいるんだ......その世界に......お前は要らない......』
『カナタ!』
『死ね......スメラギヤマト......!』
『くっ!』
「............っ!」
目を開けると、そこには木で出来た天井。そして薄暗い部屋、木で造られた家の一室らしい。そこには、二人寝ても若干余るぐらいの大きさのベッドに、一人の人間が寝ていた。そこまで大きい部屋ではないが、一人で使うには十分の広さだ。ベッドから降りる。少し違和感を覚えるが、日常生活には支障を来さないだろう。体格などから見て、男だ。その男は、部屋を出る。そして、少し歩いて外に出る。
森の中を少し歩いていく。陽の光が、木々の間から射し込んできている。近くには湖(と言ってもそこまで大きくはないが)があり、その湖に陽の光が反射している。とても幻想的で、綺麗だ。そこで男は、人影を見つける。
光を反射して輝いている翡翠の髪は、これまたとても綺麗だ。その髪を持っているのは、少女らしい。
「ん......?」
「え......?」
目を擦り、目を凝らす。その少女は、よく見たら一糸纏わぬ姿だった。その少女もこちらに気づいたらしく、顔を赤く染めていく。
「ハ、ハヤト......?」
「アリシアか......」
「......」
「ご、ごめん! 見るつもりは無かったんだけど......って、どうした?」
ハヤトは必死に謝ったが、わなわなとその場で震えたまま、アリシアは動かない。そして、小さく声が聞こえた。
「......なさい」
「は?」
「忘れなさい! 見たもの全て! 忘れないのなら......!」
とてつもないほどの殺気を孕んだ言葉に、ハヤトは首を縦に振るしかなかった。
その後、一人で先に家へと帰っていった。
帰ってきてみると、少し家が騒がしかった。家の中に入ると、大勢の森人族が色々な準備をしていた。何事かと思い尋ねようとするが、皆慌ただしそうにしているために、中々尋ねられない。そこで、見知った人物を見つける。
「エルフィンド」
見知った人物とは、エルフィンドのことだ。
「ハヤトさん!? 目が覚めたんですね!」
「あ、ああ......それより、何か祭りでもあるのか?」
「あ......その事ですか? いえ、祭りというわけではありません。宴です。これでも皆、三日も準備していましたからね。大分豪華になりますよ」
「......宴? 三日? どういうことだ?」
ハヤトは、エルフィンドの言ってることがいまいちよく判らなかった。
「えーっとですね......ハヤトさんがこの森に事件を解決してくれたので、お礼に宴を開こうということになったんです。でも、ハヤトさんが三日も寝込んでしまったので、ずっと開けずにいたんです。あ、因みにですね、ハヤトさんが事件を解決しようとしなかろうと、そろそろ"定住祭"が開かれる予定だったんです。なので、それも纏めて行ってしまおう、ということで、こんなに慌ただしいんです」
「へぇ~......ん? "定住祭"って何? というか、三日も寝てたのか!? そうか、道理で違和感があったんだな。......まあいいや。それより、"定住祭"って何なんだ?」
「"定住祭"って言うのはですね、この森に森人族が定住した日にちに合わせて、これまでの安寧に感謝を、そして、これからも安寧が続くように森の精霊に祈るんです。それを祝福して、お祭りを開催するんです」
「なるほどな......」
エルフィンドの言っていることが、やっと理解出来た。その後、パンやサラダを用意してもらい、エルフィンドたちと朝食を済ませる。
「なあ、エルフィンド。ヴェルってどこに居るんだ?」
「ヴェルクロムさんですか? 三日前にこの森の工房に行ったっきり、見てません」
「そうか、ありがとうなエルフィンド」
ハヤトはヴェルクロムの居場所を聞き、森を探索するがてら探すことにした。
「それにしても、無駄にでかい森だな......」
ふと、呟いた。そう呟きたくなるぐらい、この森は大きい。一応地図は貰っているので、迷うことはないだろう。......そう、思いたい。
「"邪霊樹"はもう無いみたいだな。良かった......」
"邪霊樹"、黒い魔力に犯された木。この森を襲撃した敵たちが去っていったのと同時に、"邪霊樹"は数を減らしていった。"邪霊樹"の魔力に犯された人たちも、皆回復の傾向にあるらしい。ただ、疑問は残る。何故、この森が狙われたのか。それは、襲撃した敵たちしか知り得ないこと......でも、気にならないと言ったら嘘になる。だが、それは気にしないようにしようと思った。気にすると、切りが無さそうだから。
ハヤトはそんなことを考えながら、森を進む。そして、ふと思い出した。天羽刃斬のことをだ。相手の攻撃を防いだ時、刀身が砕けてしまったのだ。もしかすると、ヴェルクロムは剣を修復してくれているのでは? と、考えた。そして、工房へ向かう足取りを速めた。
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時を遡ること三日。ヴェルクロムは、刀身が砕けて柄と鍔だけになった天羽刃斬と、その天羽刃斬の砕け散った刀身の破片を眺めていた。それと同時に、その剣に宿っていたアメを見て言葉を掛ける。
「アメ......だったか? ハヤトの許に居なくていいのか?」
「いいの。今行くと、本当に泣きそうになるし。それに、この剣も心配だし」
「......これに宿っていたなら、この構造も判るんじゃないか?」
「まあまあ、かな」
「そうか。......はあ、どうなってんだ、この剣は。俺じゃ、決して直せないぞ。出来ることと言ったら、砕け散った刀身の破片を錆びないように管理することだけだ。本当にどうなってんだ......俺の手に余りすぎる物だぞ」
ヴェルクロムは、武具、特に剣に関しては製作技術そのものに相当な自信があった。そんなヴェルクロムが、砕け散った刀身の破片と使えなくなった柄と鍔を眺め、"これは自分の手に負えない"と、嘆きの言葉を漏らした。天羽刃斬は、それほどの神秘に包まれた剣なのだ。それと同時に、ヴェルクロムはこの剣を造ったであろう人物に恐怖を抱いた。どれだけの歳月を捧げれば造れるのか判らないからだ。いつ完成するか判らない剣を、ひたすら打ち続けるのはとても酷なことだ。言葉で表せと言うのなら、"出口の見えない闇をずっと歩いている状況"、とでも言おう。
「本当に、何とかならないか......」
もう、嘆くことしか出来ない。せめてでも、ハヤトが目覚めるまでには直したかった。この剣を鑑定したとき、純粋に詳しく知りたいと思った。どういう構造なのか知りたい、だが今現在、知ってとても後悔した。世の中には知らなくてもいいことがある、まさにその通りだ。
そう思っていると、アメから声を掛けられた。
「この剣は、今の君が生涯を掛けても作り直すことは出来ないよ。この剣は元々、獣人族の協力があったからこそ、完成したんだ。だからこそ、今の君じゃ絶対に直せない」
「......ま、判りきったことなんだが......」
「ま、獣人界に行くのなら、直すチャンスは巡ってくるかもしれないよ。それよりも今は、出来ることに心血を注ごうじゃないか!」
いきなりテンションが高くなったアメから、ヴェルクロムが作り、ハヤトに譲った連接剣を手渡された。
「......これを強化しろと?」
「そう言うことさ! これからハヤトはきっと、いや絶対と言っていいだろう。強力な敵との戦闘を何度も体験する。その上でこの剣は、強力な敵との戦闘で足手まといになるはずだ。でもこの剣を強化して、ハヤトのレベルに付いていけるようにすれば、それこそ剣を失った時に役立つはずさ」
「......お前は俺を貶したいのか? それとも何だ、俺に剣を強化させたいのか? どっちだ......!」
何となく、アメから嫌味感満載の言葉を掛けられ、少し怒りのゲージが沸点に近づいた。だが怒ることは無く、少し、ほんの少し怒気を孕んだ言葉を投げ掛けた。すると......
「どっちでもないさ。ただ、ヴェルクロム君には頑張ってほしいなぁー、って思っただけさ」
人任せにする気、というか人任せにしようとしているアメに、本気怒りのゲージが沸点に到達しようとしていた。だが冷静になり、どうしたらいいか考えることにした。そこで、アリシアが使っていた剣を思い出す。そして、近くにあった羊皮紙にペンで設計図を描いていく。
「よし、設計図は完成した。後は材料だな......!」
そう言い、ヴェルクロムは工房を飛び出していった。
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「え~と、工房ってここだよな。アメも見てないし、シュラやラミアもどこに行ったか判んないし......はあ、どうなってんだ......?」
目が覚めてから、一回も見ていないシュラとラミアとヴェルクロム。ヴェルクロムの居場所はここらしいが、シュラやラミアは見ていない。シュラは、大方素振りや稽古などをしているのだろう。ラミアもそれに付き合っている可能性が高いし、強いから心配する必要は無いはずだ。ただ、ヴェルクロムはさほど戦力が無い。だからこそ、一番最初に安否が気になった。まあ、居場所が判ったから安心したが。
「ま、いいか。取り合えず入ろう」
あまり心配し過ぎるのも良くはない。なので、ここら辺で考えるのを止め、工房内に入る。入った瞬間、驚愕した。理由は、目に入ったものが異常だったからだ。
まず目に入ったのは、魂が抜けたように横たわっているヴェルクロムと、細身だが筋肉質の腕を持つ森人族だ。何があったのかは判らないが、外傷は無いし呼吸もしているので、死んでいるわけではないらしい。取り合えず、近くに毛布があったので、二人にかける。そこで、ある物が目に入る。綺麗な金色の模様が入った連接剣だ。多分、と言うか百パーセントハヤトのものだ。この森に来る前まではこんな模様は無かった。ヴェルクロムが強化してくれたのだろうか? まあ、そうとしか考えられないが。
手に持ってみる。何処と無く、持ちやすくなった気がする。前の連接剣は、持ちにくくはなかったが持ちやすいとも言えなかった。でもこれは違う。天羽刃斬みたく、すぐに手に馴染んだ。そこで、ハヤトはハッと気づく。この剣は、ヴェルクロムが天羽刃斬が使えなくなった自分のために強化してくれたものじゃないか? と。判らないが、そう思いたい。素振りをしたいという衝動に駆られそうになったが、無断で持ち出すわけにはいかないと思い、元々あった場所に戻して工房を出た。
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「あれ、ハヤトさん。ヴェルクロムさんには会えましたか?」
「ん? ああ、会えたよ。でも眠ってるみたいだったから、放っておいた。......あと、工房でヴェルと一緒に居た筋肉質な細身の森人族は誰だ?」
「筋肉質な細身......ああ、ゴウムさんですね! ゴウムさんは、森人族の刀匠なんです。姉さんの短剣や父様の両刃刀、お祖父様の宝刀などの手入れをしているすごい人なんです。この森で知らない人は居ないと言われるぐらい、有名です。多分、ヴェルクロムさんの仕事を手伝ってたんじゃないですか?」
「なるほど......と言うことは、あの連接剣はヴェルとゴウムって人が一緒に作ってくれたんだな。あとでお礼をしておくか......」
ゴウムさんにお礼をしておこうと、頭の片隅に記憶しておく。そろそろお昼だ。工房の往復で、少し時間を使った。今は陽刻の十二時だ。エルフィンドもお昼ご飯を食べに行くつもりだったらしく、付いていく。
お昼ご飯は、朝と同じパンと黄色いスープ、あとは筍......だろうか、筍らしき食べ物の煮物だった。和食と洋食の混合だった。でも、味は案外美味しかった。パンはほんのり甘味があり、黄色いスープはカボチャに近い味、カボチャスープだったのだろう。筍の煮物は単体で食べたが、相当美味しかった。地球に居た頃は、時々煮物を作っていたが、ここまでの完成度で作られるともう自分で作る気が無くなる。それほどに美味しかった。昼食を済ませ、目が覚めてから一度も見ていないシュラとラミアを探すことにした。
シュラとラミアは、三日前から消息不明になっている。ラミアは、時々ハヤトの様子を見に来ていたらしいが、シュラは三日前から誰も見ていないらしい。時々、それらしい姿を見かけたらしいがよく判らない。まあ、二人のことだ。さほど心配する必要は無いだろう。でも、一応探しておく。後々、居ないから探しに行くなど、面倒極まりない。
「でも、どこに居るんだか。......居そうな場所は、何と無く判るけど。遠い......」
地図を見て、シュラが居そうな場所は大体見当を付けている。ただ、どれも遠い。森自体が大きいため、迂闊に動けば迷子になるかもしれない。
(......それだけは避けねば! さすがに、十六歳で迷子は有り得ない。超恥ずかしい。だから、絶対に避けなければ......! よし、行こう......!)
覚悟を決め、迷子にならないようにシュラとラミアを探しに行く。そこで、思わぬ人物と会う。
「あ、ハヤトさん!」
「ラミア......!?」
ラミアと会った。探す手間が省けた。探しに行こうと思っていたときに会うとは、何かを感じる。まあ、それは置いといて......
「目を覚ましたんですね、よかったです」
「ああ。何回かお見舞いに来てくれたらしいな」
「あ、い、いえ、大丈夫かなぁ? って思ってたので、気づいたら足を運んでた次第です」
「有り難うな」
「い、いえ、感謝されるようなことでは無いですよ!」
「いや、それでも有り難いものだよ」
「そ、そうですか......な、ならご褒美をください!」
「ご褒美か......何がいいんだ?」
「はい......あのぅ、そのぅ......頭を撫でてください!」
「え......?」
驚いた。まさかそんなお願いをしてくるとは、微塵も思ってなかった。断る理由も無いので、頭を撫でようとする。そこで、あることに気づく。
(女の子の頭って、どう撫でればいいんだ!?)
根本的な問題に遭遇してしまった。愛莉や小さい少女などの頭なら、撫でたこともある。だが同年代、しかも容姿端麗で現実味を帯びないウサ耳を持つ少女の頭を撫でるなど、一生に一度も無いだろう。そんな状況に今、遭遇している。愛莉は家族だし、小さい少女など異性として見ていないから大丈夫だ。でも、でも同年代のウサ耳少女の頭を撫でるなど、緊張してぎこちなくなること間違いなしだ。だが、ここで断ればラミアが可哀想だ。断るのは論外。でもどう撫でればいいか判らない。進めば俺が困るため進むことが出来ず、退けばラミアが可哀想だから退くことも出来ない。まさに前門の虎、後門の狼という奴ではないか?
「あ、あのぅ......その、嫌ならいいんです! 断ってくれて構いません!」
そんなことを考えていても、ただただ時間が過ぎていくだけだ。少し下を向き、頭を突きだしているラミアはとても愛くるしく、本当のウサギのようで可愛い。......そうだ! ウサギだと思って撫でればいいじゃないか! 灯台もと暗しとはこの事だな! そう思い、ラミアの頭に手を延ばす。
ラミアの頭にはウサ耳がある。撫でていると、時々ウサ耳に当たりその感触が伝わってくる。とてもモフモフでさわり心地が良く、気持ちいい。ラミアも気持ちいいようで、ずっと顔を緩めている。
「ふわぁあ~~~!」
「!? 大丈夫か?」
「は、はい、大丈夫です。有り難うございました! またいつか、お願いします!」
「ええっ......!」
またいつか、頭を撫でることを約束させられてしまった。その後、すぐにラミアは去っていってしまった。
「......今回は何とかなったけど、次どうしよう......」
そんなことを考えながら、シュラ探しを続行した。
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ハヤトがまず向かったのは、シュラが敵と戦った場所である大広間だ。もしかしたら、何かを発見したかもしれないし、広いから訓練にも最適だ。加えて、シュラを大広間で見たという情報もあるため、行く価値在りだ。道中、数人の森人族に称賛の声を贈られた。褒め称えられるのは、慣れていないから若干恥ずかしい。そんな状況から速く脱したいために、ハヤトは足取りを速めた。
大広間に着くと、少し驚いた。何故なら、色々な屋台やらが設置されており、奥の方は宴会用のような小さな椅子などが並べられている。あまり奥へ行くのは避けた方が良いと思い、今居る入り口の地点から周りを見渡す。"真眼"を使用してみたが、見付からなかった。
次はハヤトが敵と戦った場所、大樹の根本だ。こちらは若干、入場規制がかかっている。まあ、近くに行ったら簡単に入れてくれた。あの時は急いでいたのでよく見れていなかったが、改めて根本から見上げると、先端が霞んで見える。近付くと、大樹の周りだけ別の世界みたいに感じる。大樹とは、それほどに大きく尊大な存在だと、ハヤトは知った。
『う~ん、こんな感じで良い、スターシャ?』
『ええ、十分よ』
『だがこれで良いのか? この前見たのと比べると、随分と簡略化したものだな』
『いいじゃん、いいじゃん。......ここからだよ、僕たちの冒険は。今までの苦労と、これから来るであろう苦労を労って。行こう、シウル、スターシャ!』
誰かの記憶、あの男のものじゃない。だって、いつもより音程が若干高い。何故、こんな記憶をいつも見るのだろう。あれは、俺の記憶じゃない。じゃあ誰の記憶なんだ? 何時か、判るといいな......
気づくと、大樹に寄りかかっていた。少し立ち眩みがしたが、俄然問題は無い。その後、ハヤトは"真眼"を使って森を散策するが、またしても見付からなかった。
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「さて、見当を立てた場所は探した。どこに居るんだか......」
全く見つからない。さて、どうしたものか......
「よし、戻ろう。見つからないならしょうがないしな」
時間を掛けて探したのに、あっさりと諦める。すれ違いになったのかもしれないと思い、一度住居区に戻ろうとする。そんなとき、目的の人物とばったり会う。
「シュ、シュラ!?」
「ん? ハヤトか、俺がどうかしたか?」
本当にすれ違いになってた。
(そりゃ見つかるわけねぇよ......)
大分探し回ったんだ、愚痴を溢すぐらいの権利はあって当然だろう。そこで、頭の上にハテナを浮かべているシュラに事情を説明する。
「なるほど。目が覚めた後俺たちを探していたが、大分探し回ったのに俺だけ見つからず戻ろうとしたところに、俺が現れたと。それは災難だったな」
「他人事みたいに言うなよ。......それより、何ですれ違いになったんだ? 道は一つだけだっただろ?」
「ん? ああ、その事か。それはな、森の中を進んでいたからだろう。道のりに来たのなら、すれ違うのは道理だろう」
「そうか、まあいいよ。それより、俺はそろそろ戻る。歩き疲れたから、少し部屋で休む。シュラはどうするんだ?」
「俺も戻る。もう用は無いしな」
「んじゃ、道中は一緒だな。よし行くか」
シュラも住居区に戻るらしいので、一緒に戻ることになった。
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はたまた時を遡ること二日前、ヴェルクロムに助言をした後のことだ。一人で考え出したので、お邪魔だと思い工房を抜けてきた。その後、森を見て回ることにした。
「はあぁ~、久しぶりだなぁ~。ここも五百年前とは大違いだ。......本当に懐かしいな。幾つもの記憶が頭を過るよ」
彼女がこの森に訪れるのは、五百年ぶりだ。封印される前、何度か前契約者たちと共に訪れたことがある。まあ、それ以前にも何度か訪れたことはあるのだが。
「前は余裕が無くて、よく見て回らなかったからなぁ~。少し、見て回ろう」
そう言って、彼女は緑がうっそうと生い茂っている森に向かって、歩いていった。
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「大分、日が暮れてきたな」
「ああ、だが住居区まであと少しだ。魔獣などは出ないが、気を引き締めていくぞ」
「判ってるって」
日が暮れてきたので、足取りを速めて集落の住居区に向かう。
小一時間程掛かった。気づけば、もう周りは真っ暗だ。
「......?」
「どうした、ハヤト」
「あ、いや、なんか違和感が......」
「違和感? ......確かに、何処かおかしいな」
「だろ? ......あ、判った。森人族の人々の気配が無いんだ」
「何? どういうことだ」
「人の気配がまるで無いんだ。多分、人っ子一人居ないぞ」
「どこに行ったのか、心当たりは無いか?」
「......あ、そういえば。昼間エルフィンドが、夜宴を開くって言ってたな。大広間でなんか準備してたし。そこじゃないか?」
「判った。取り合えず行ってみるか」
「おう。......というか、居なかったら恥ずかしいな」
取り合えず、心当たりの大広間まで行ってみることにした。




