第六話 ウサ耳少女との出会い
《グランアーサー》が終わり1週間が過ぎた。ハヤトも傷が完治した。現在ハヤトはシュラと共に昼食を食べていた。
「ハムッ! モグッ! バクッ! ......旨いなここの店」
「そうだな......それよりいつ旅に出るんだ?」
「あと2人ぐらい集まったら」
「決めているのか」
「1人は勧誘してみるけど、もう1人はまだ決めていない」
「誰を勧誘するんだ?」
「ヴェルクロム・デミウルゴス、鍛冶師だよ」
「鍛冶師か」
「ああ、武器とか壊れたら、すぐ直してほしいだろ」
「まあ確かにな.........で、もう1人はどうするんだ」
「そこがまだ決まっていないんだよな...........まあどうにかなるだろ」
「気楽なやつだな」
「はっ、褒めるなよ」
「褒めてないんだが」
その後すべての料理を食べ終わり、店を出る。そしてハヤトは武器市場にむかい、シュラは少しモンスターを狩ってくると言い街を出た。そしてハヤトは武器市場でヴェルクロムを探す。
(また居ないな、本当にタイミング悪すぎだろ)
そう思っていたハヤトは何かを感じ取った。
(何か、此方にとてつもない速さで近付いてきてるな)
ハヤトの予想は的中していた。市場の店の屋根を全速で何かが駆けていていたのだ。それはハヤトが居る場所まで近付いていた。そしてハヤトが居る場所は屋根がない。屋根から跳び渡れる屋根もない。ということは.........
「どいてくださ~~い!」
「うわっ! なんだ!?」
そう叫んだのが間違いだった。何も叫ばず避けていれば良かったのだ。ズドォォン!!
ハヤトがいた場所に何かが落ちてきた。いや何かじゃない、人間だ。しかも女子で普通の人間じゃない、フサッとした白い耳、フサッとした白い尻尾、風になびいていた純白の髪、まるで、まるで、
(兎じゃないか)
「イタタ......痛いじゃないですか! 何故避けようとしないのですか!」
「そっちがぶつかってきたんだろうが」
「避ければいいじゃないですか! 何故避けないんですか!」
「突然降ってきて、その言いぐさは無いだろ」
「喋っていても埒が明かないです! 戦って決めましょう! どっちが正しいかを!」
「いいぞ決めてやるかかってこい」
「居たぞ! 此方だ!」
何故か、戦うことでどちらが正しいかを決めるということになり、ハヤトと獣人が戦おうとしているところに、誰かの声が聞こえた。遠目からしか見れないが、体格から見て男だろう。そして黒い服を着ている。その男はこちらを見て誰かを呼んでいる。周りを見たが異変はない、1人を除いて。今さっき戦おうとしていた獣人が、悔しそうにしている。見れば足を怪我している、そしてその獣人はハヤトを見て、あることを頼んできた。
「そこの御仁! 私を匿ってください!」
「さっきと、口調が少し変わってないか」
「いいから、理由を聞かず匿ってください!」
「理不尽だな! 此方の意見は聞かないのか!」
「いいから匿ってください! あっ、此方に来た!」
「おいそこの小僧、その女を此方に渡せ」
「何で?」
「その女は商品だ、だから此方に渡せ」
「...............」
「どうした、速く此方に渡せ」
「俺はあんまり正義のヒーローっぽいことはしたくないんだけど、助けを求められたんだ。助けを求めてきた相手を売るような真似はしたくない。だから渡せない」
「我々に逆らうか小僧、痛い目を見るぞ」
「はっ、今さらそんな脅し文句が聞くとでも」
「なら、容赦は要らないな。やれお前ら!」
その言葉で後ろに居た黒服が襲いかかってくる。"真眼"を使って見ると、全員のレベルは平均30、一番高くて35、一番低くて28、今のハヤトのレベルはシュラとの戦闘で50にまで上がっている。ハヤトの敵ではないが今は荷物が1つある。流石に、荷物1つ抱えて十数人と戦うのはいくらハヤトでも至難の技だ。なので.........逃げることにした。ハヤトは獣人を抱えて逃げる。ここからだと、ハヤトたちが泊まっている宿は遠い。なのでヴェルクロムの屋敷に行った。屋敷の扉を叩くとヴェルクロムが出てきた。
「誰だよ、うるせぇなぁ.........ハヤト!? どうした!? それにその少女は誰だよ!?」
「ちょっとなにも聞かずに匿ってくれ」
「いいが......どうした!?」
「じゃまするぞ」
そう言いヴェルクロムの屋敷に入る。抱えていた獣人をソファに下ろす。そして獣人に名前等を聞く。
「なぁ、お前は誰なんだ? 商品だなんて呼ばれていたけど」
「っ! 商品だと!?」
ハヤトの質問に反応したのはヴェルクロムだった。その顔は、驚きという感情で染められていた。
「ヴェルはこいつを知っているのか」
「知っているもなにも、商品と聞いて浮かぶのは1つだ」
「何なのさ」
「奴隷です」
「ッ!」
ハヤトはヴェルクロムに聞いた時、獣人の少女は自らが奴隷だと言った。それを聞いてハヤトは驚いていた。一応王城に居たときに、獣人や亜人の奴隷が居るとだけは聞いていた。だが実際、奴隷何てものを見るのは初めてだ。
「何でヴェルは知っていたんだ」
「この【ラジア帝国】では1年に1度、《グランアーサー》と共にオークションが開催される。そして金持ちどもが、オークションの裏で人身売買もやっているという噂を聞いたことがある」
「そうなのか」
「ああ、帝国の軍でも捕まえられない厄介な奴等なんだ。だから今でも捕まっていない」
「......私は最近捕まっちゃって。そしたらオークションに出されかけたので、獣人の力を最大限使って、屋根の上を渡りながら逃げていると着地点にそこの人が居て、ぶつかっちゃって.........今に至ります」
「そうだったのか」
「はい」
「どうするんだハヤト、何時までもここに匿うのは無理だ」
「なぁ名前は」
「ラ、ラミアです。ラミア・ホワイトローズです」
「君はさ逃げてどうするつもりだったんだ」
「獣人界に帰るつもりでした」
「ならさ獣人界に帰るまででも俺らと旅をしないか」
「な、何でですか?」
「旅はやっぱり四人でしょ。どんなRPGでも四人ぐらいだし、三人目が見つからなかったんだよ」
「い、良いんですか!? 私が居ると迷惑がかかると思いますよ」
「良いよ別に、旅に災難は付き物だろ。逆に何もない旅はつまらないだろうし」
「そ、そんな理由でいいんですか!?」
「それに俺らが護衛の役目も務められるだろう」
「............わかりました。獣人界に着くまで一緒に同行させてください」
「わかった。これから宜しくな、ラミア」
「此方こそ宜しくお願いします.........え~と」
「ハヤト・カンザキだよ」
「宜しくお願いします、カンザキさん」
「ハヤトでいいよ」
「そうですか、じゃあこれからよろしくお願いしますハヤトさん」
「ああ、宜しくなラミア。あとヴェルも一緒に旅をしないか」
「俺か!?」
「うん、ヴェルが四人目」
「ま、まあ断る理由も無いからいいが......」
「決まりだな」
ハヤトが勧誘? をしている頃、ラミアを売り捌こうとしていた組織はラミアの居場所を突き止めていた。そして偉そうな黒服の大男が、ラミアの居場所を部下に聞く。
「あの商品はどこに居る」
「はっ、デミウルゴスのガキの家に居ます。すぐ連れ戻しますか?」
「帝国に感づかれている、3日後連れ戻してこい。どんな手を使ってもいい3日経ったら連れ戻せ」
「「「「「はっ!」」」」」
まだハヤトたちはこの事は知らない。その頃のハヤトたちは.........
「ちょっとシュラを呼んでくる。荷物も持ってくるから」
「了解だ」
ハヤトはそう言いヴェルクロム屋敷を出た。そして熱帯雨林に行き、シュラを見つける。
「あ、居た居た、オーイ、シュラー」
「何か用かハヤト」
「いや、ちょっと」
ハヤトはさっきの出来事の一部始終をシュラに伝え、宿屋に置いてある荷物を取りヴェルクロムの屋敷にむかった。
「まさか本当に獣人が居るとは......」
「珍しいのか?」
「珍しいもなにもこんな場所に居ると相当目立つからな、帝国を出るなら早朝か深夜に出るのが妥当だろう」
「そうか、でも準備や追手のことも考えて、4日後の朝出よう」
「わかった」
「わかりました」
「了解だ」
ハヤトの考えに皆が賛成する。そしてその日はなにも起きず幕を閉じた。
翌日、ハヤトは帝国を見て回ることにした。シュラはギルドでクエストを行うらしい。ハヤトは準備をしてヴェルクロムの屋敷を出た。帝国は帝城を中心に、北部、南部、東部、西部に別れており、北部は武器市場になっていて、南部は住居区になっている。東部は北東部に闘技場があるためホテルや宿等が密集していて、西部にはいろいろな食材や衣服などが売ってある市場がある。なので、基本帝国で何でも手に入る。ハヤトは今回、いろいろと準備をするために西部で買い物をすることにした。
「はあ、何を買えばいいかわからないな」
「おい! そこのあんちゃん、このリームパイを買わないか」
「なんか美味しそうだな.........1つくれ」
屋台から甘い匂いがする。美味しそうな甘い匂いには逆らえない。何故なら、ハヤトは女子並みに甘いお菓子が好きだ。因みにこの事もいじめられていた原因の1つだ。
(ッ! 旨いな。このふっくらとした生地にはリンゴらしき甘い果物が使われている。それに生地の上に乗っている果物も、生地といい感じにマッチしている。いやマジで旨いな)
「どうだいあんちゃん、旨いだろう」
「この生地の果物は何て言うんだ?」
「ああ、その生地に練り込んである果物はリームって言うんだ。そのまま食べても甘くて美味しいが煮ても旨い」
「そうなのか.........この生地の上に乗っている果物は何て言うんだ?」
「それはパウムって言う果物で、そのままだと硬くて食べられないが煮ると柔らかくなるんだ」
「なるほど.........ありがとうおじさん、旨かった」
「またいつか買ってくれよ」
「ああ、いつかな」
そう言い屋台を離れる。そのあと諸々買い物をして、一度ヴェルクロムの屋敷に戻った。
「お、帰ったのか、ハヤト」
「ああ、取り敢えず必用になりそうな物は買ってきた。ちょっとギルドに行ってくるから」
「了解した」
「じゃあ行ってくる」
ヴェルクロムの屋敷を出て、ギルド【ラジア帝国支部】にむかう。今回は、自分の冒険者としてのランクをあげるため、クエストを受注しようかと思っていた。ギルドでは達成したクエストの数や難易度でランクが上がる。ランクが高ければそれなりに待遇も変わる。ランクは10段階あり下から、G、F、E、D、C、B、A、S、SS、SSS、となっている。Sランク以上になるには、ギルドの認証が必要になる。Sランクの冒険者は現在五十人、SSランクの冒険者は十人、SSSランクの冒険者は5人しかいないらしい。
「はぁ~でかいなぁ~、さてと、どのクエストを受けようかな............お、これ良いな、これにしよう。すいません、このクエストを受けたいんですけど」
「"リヴルム三体の討伐"ですね。では、ギルドカードを提示してください」
「では魔石を持ってきたらクエスト完了です。では頑張ってください」
そう言われギルドを出た。熱帯雨林に着くと、早速リヴルムが居た。
「相変わらずでかいなぁ、リヴルム」
そう言うとリヴルムは爆炎の咆哮をハヤト目掛けて撃った。普通なら避けるだろうが、ハヤトはその攻撃を真正面から受けた。
「ッ! イテェ! 滅茶苦茶痛いな! ったくどんな威力だよ! 本当に怪物みたいな......いや完全に怪物だな」
"それを受け止めたハヤトも充分怪物じゃないのか"
「お、アメ! ずっと喋らないから居ないのかと思ったぞ!」
"ちょっと疲れたから眠っていた。それより余所見をするな!"
「ッ! と、本当に半端ない威力だな」
ハヤトは咆哮をかわしながら、技を試そうとしていた。その技とは一閃のマスターだ。一閃を使用している最中に敵を斬ったり、緊急回避だったりとぶっつけ本番だと心許ないので、練習しようと思った。だが、現実はそんなに甘くなかった。
(う~ん、中々反応が追い付かないな。"瞬閃"を使ってみるか)
"瞬閃"を使用して、動体視力などを高めて"一閃"を使用する。
「コツを掴んできたぞ! これなら......」
ハヤトは一閃を使い、リヴルムの首目掛けて斬り込む。首を斬られたリヴルムは、力尽きて倒れる。
「ふぅ~何とか勝利だな」
"危なかったな、ハヤト"
「まあな、それより残りの二体を探すか」
そう言いリヴルムを探しだして、さっきと同じ方法で倒す。残りの二体を倒すのに、三時間ぐらいかけてしまった。探している最中に瞬閃の効果が切れて、倒れていたら大分時間を食ってしまった。
(夜も遅いし、ギルドに行ってから帰るか)
そう思いギルドに行って、クエストクリアの報告と魔石の換金をしたあと、ヴェルクロムの屋敷に戻った。
「疲れたなー」
「どんなクエストを受けてきたんですか?」
「ラミアか、リヴルムを3体討伐してきた」
「そうなんですか」
「ああ、っていうかラミアはなにしてんの?」
「匿ってもらっているのでせめてでも、ごはんぐらいは作った方が良いと思いまして。ヴェルクロムさんにも許可は頂いています」
「そうなんだ。料理って得意なの?」
「ハイ! 獣人界に居たときも、結構作っていたんですよ!」
「妙に自信ありげだな」
そんなたわいもない話をしていると、工房部からヴェルクロムが出てきた。
「なんか良い匂いがするな」
「ラミアがごはんを作ってるぞ。」
「そうか、そんなことも言ってたな」
「忘れてたんですか!?」
「悪いラミア、完全に忘れてた」
「それよりもヴェル、例の物の作成は順調か?」
「ああ、お前から貰った精霊石で動力源の問題はクリアした。操縦方法もお前の提案でクリアだ。あと、もうちょっと手を加えれば完成する」
ハヤトは、《グランアーサー》の優勝商品として貰った精霊石をヴェルクロムに渡していた。理由はヴェルクロムが作っていた、乗り物を完成させるためだ。その乗り物は地球で言う列車に近く、ヴェルクロムは動力源と操縦方法を探していたので、精霊石を動力源として渡して、車と同じ操縦方法を教えた。ヴェルクロムは、まるで目から鱗のように聞き入っていた。そして今まで列車を作っていたのだ。そこでハヤトはふと思った。
「列車の名前は決めているのか」
「いや全く......」
「なら、"魔動列車 ミーティア"でどうだ」
「どういう意味なんですか?」
「魔動って言うのは魔力駆動、魔力で動くって意味。ミーティアって言うのは、俺が居た世界では流星を意味するんだ」
「へぇ~そうなんですか」
「それでいいぞ。大した案なんて浮かびそうに無いからな」
「じゃあ決定だな」
ヴェルクロムと会話をしていると、シュラが帰ってきた。
「む、なんだこの匂いは」
「ラミアがごはんを作ってるんだよ」
「そうなのか......旨そうな匂いだな」
「腕によりをかけて作ってますから!」
「まだ出来ないのか~ラミア~」
「もうすぐ出来ますから待っててください! ほら、もう出来ましたから盛り付けを手伝ってください!」
そう言われ、準備をしてから席に着き食べた。赤色のスープやサラダ、パン等妙に家庭的なラインナップだ。どんな料理なのか、ラミアに聞いてみる。
「ラミア、このスープはどんな料理なの?」
「ミルトを使った煮込みスープです。お野菜たっぷりの体に良いスープです。パンを浸けて食べても美味しいですよ」
「へぇ~」
お腹が空いていたので、流し半分で聞いていたハヤトは早速スープを飲んでみる。
(旨いな、野菜も煮崩れせず良い感じに火が通っていて旨い。スープも少し甘酸っぱいが、それが逆に旨さを引き立てている。パンを浸けて食べても旨いもう本当に旨い、旨い以外に答えが出てこない)
そう思っていると、サラダにも目が移る。
「なぁ、このサラダはなんなの?」
「スープに入っていたミルトやカノム、それにリームも入っているな」
「カノムってこのごろっとしているやつか、ヴェル?」
「ああ、サラダにしてもスープにしても旨い、万能の食材とも言われている。庶民の料理や高級料理にも使われるほどだ」
「補足として、リームから抽出したエキスとミルトから抽出したエキスを混ぜたのがこのサラダのドレッシングです」
ラミアが自慢気に話しているが誰も聞いていない。皆、お腹が空いているので夢中になって食べている。そんな皆の態度にラミアが怒る。
「ちょっと皆さん! もっと私の話を聞いてください!」
「「「食事中なんだから静かにしてくれ」」」
「うっ! 酷くないですか、私に対しての反応が酷くないですか」
ラミアの怒りも3人にスルーされ、いじけてしまう。他の3人もやり過ぎたと謝る。そのあと何事も無く、食事を終えて寝た。
翌日、何も無く過ごした。何かあったことを挙げるならば、シュラとの模擬戦、ヴェルクロムが作っていた列車が完成したということだけだろう。
更に翌日、ハヤトは朝早くに帝国を出て、西の初めてシュラと会った場所に来ていた。目的は、ここら辺に在る筈の洞窟に生息しているモンスターだ。名はストーンリザード、名前の通り石が生えているリザードのことだ。たまに鉱石が生えているリザードも居り、中でも紅い鉱石を生やしているリザードはとても強いモンスターらしい。
モンスターには、冒険者と同じくランクが在る。モンスターを倒すには、そのモンスターと同ランクか、それ以上在った方が良い。ランクはレベルも表しており、例えばランクGのモンスターを倒すためには、冒険者としてのランクがG以上かレベルが1~5以上が適正ということになる。モンスターのランクがSなどの場合も同じで、冒険者ランクがS以上かレベルが81~90以上必要になる。紅い鉱石を生やしているリザードは、レッドストーンリザードと言いBランクモンスターだ。51~60レベル以上無ければ危険大だ。因みにリヴルムはDランクモンスターで31~40以上が適正らしい。
「やっぱり中々見つからないな。本当に何処に居るんだか」
何故、ハヤトがレッドストーンリザードを探しているかというと、ヴェルクロムにリザードの背中に生えている鉱石を、とってきてほしいと頼まれたからだ。その鉱石は魔動列車の鍵になると言われたため、ハヤトは遠い道のりを歩いて、渋々狩りに来たのだ。
「居ない、全く見つからない、どうしたものか」
ハヤトは、洞窟に入っても中々見つけられないので半ば諦めかけていた時、変な声を耳にした。
「グギャ......ア......ア......」
「何だよ一体」
「グ......グギャ......ギャ......アア!」
不気味な声が洞窟の奥から聞こえてくる。その声は次第に近付いてきている。そして、その姿をハヤトは目に入れる。
「マジ......か......よ!? こいつは......レッドストーンリザードじゃないか! 背中に紅い鉱石が在るから本物だとは思うが、体格は180センチぐらいだって言っていたのに......最高でも2.5メートルぐらいだろう、って言ってたのに......明らかに5メートル越えてんじゃねぇか!!」
ストーンリザードは小さいもので15センチ、大きいもので2メートル在り、レッドストーンリザードは小さいもので1.8メートル、大きいもので2.5メートル在る。そんなレッドストーンリザードが、5メートルを越える筈は無いのだ。モンスターの中にも、突然変異種は居る。だが突然変異種は、一億体に1体ぐらいしか居ないのだ。そんな確立でしか会わないモンスターと今、ハヤトは会っているのだ。
「だけど様子がおかしいな、ストーンリザードは案外好戦的だって聞いているけど、襲ってくる気配が無いな。突然変異種じゃないのか? そういやモンスター相手に真眼って使ったことがないな、使えるのか? 使ってみるか」
襲ってくる気配も無いので、真眼を使ってみる。
《モンスター名》 ??? レベル 85
レッドストーンリザードに酷似しているが、他のモンスターを大量に捕食してしまったために、もはやレッドストーンリザードでは無くなっている。
「リザードじゃないのかよっ! しかもランクS! 勝てる気がしないな、でも戦わなきゃ列車は完成しないかもしれないしな。"瞬閃" "一閃"」
瞬閃と一閃を使用してリザードを攻撃するが、まったく効かず逆に攻撃される。攻撃されても捌ききれるが、その途中で瞬閃の効果が切れる。
「くそっ! こんなところで効果切れかよっ!」
倒れ込んでいるハヤトに、リザードが近寄る。
「ヤベッ! 逃げなきゃ......」
ハヤトは逃げようとするが、疲れてまともに身体が動かない。
(ヤバイ、逃げれる気がしない.........冗談抜きで本当にヤバイな、"一閃"も使えない。万事休すだな)
今度こそハヤトは本当に動けなくなり、リザードが近付いてくるのを見ていることしか出来なかった。ハヤトは死を覚悟して目を閉じた瞬間、大きな音が洞窟内に鳴り響いた。驚いて目を見開くと、そこには兎が擬人化したような純白の髪、白いウサ耳、白い尻尾を持った少女が居た。
「ラ、ラミア!」
「迎えに来ましたよ! ハヤトさん!」




