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スタントシーン

2011年02月04日の作品です。

 高い所から落ちる夢を見た。


 落ちて落ちて、落ちていく。底が無いかと思う位、長く果てしなく長く落ちていく。不思議な事に恐怖は感じなかった。落ちて、落ちていった。


「達也!! 達也出番だ!」


 突然、名を呼ばれ夢から覚めた。そう僕は役者だ。今日はビルの屋上から転落するシーンの撮影だ。『スタントを使えば』と監督に言ってみたが、最近は役者が体当たりで行う方がウケがいいらしい。そして、俺は今日ビルの屋上から飛び降りる。もちろん、ビルの下には軟らかいマットが何重にも敷かれ、怪我をする事は無い。だからといって、全く恐怖が無いという訳では無かった。


「本番用〜意!」


「……」


 監督のメガホンの合図と共に、竦む足を奮い立たせビルの屋上から飛び降りた。


 落ちて落ちて、落ちて《バフッ》という音と共に俺はマットの中に沈み込んだ。


「カッット!!」


 監督が大きな声を張り上げる。


「達也! 表情が固い! もう一回!」


 そう言われ、俺は再びビルの屋上へと登った。


「本番用〜意!!」


「……」


 またもや、メガホンの合図と共にビルから身を投げ出した。一度飛んだ為か、余り恐怖は感じなかった。


 落ちて落ちて、落ちて《バフッ》とまた、俺はマットに沈み込んだ。


「カッット!!」


「何か違うんだよな。達也! もう一回行けるか!?」


 監督が遠くから、大声で聞いてくる。俺は無言で頷くと、また屋上へ登った。


「本番用~意!!」


「……」


 監督の合図と共に、屋上から飛び降りた。もう恐怖も何も感じなかった。ただ、今日のシーンが早く終わる事だけを願っていた。


 落ちて落ちて、落ちて《グヂャ》嫌な音がした。『ああそうか、これも夢だな』そのまま俺の意識は消えていった。










 遠くの方で人の声が聞こえる。


「達也!! 大変だ!! 達也がマットの外に!! 救急車ぁ!」




『へっ! 大丈夫だよ。夢……なんだ……から……」







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