人道的? 非人道的?
最近の医療の進歩には驚かされる。しかし、その大半が穴やら管やらチューブやら。電気を使ったものもある。
少々下品な話にも触るのだが、まずは胃ろう切開術というのをご存知だろうか? 胃ろうの【胃】の文字を見れば、大体の察しはつくだろうが、胃の真上に穴を開け、そこから胃へとチューブを挿入し、流動食や栄養補給剤を直接、胃に流し込むというものだ。これと似たのが鼻腔栄養。これも察しの通り、鼻から胃までチューブを挿入し、流動食や栄養補給剤を流し込むというもの。どちらも、経口摂取が出来なくなった人への医療行為なのだが、果たして非人道的でないと誰が言えるのだろうか?
そして最近身近になったAED。これは、簡易的心臓マッサージ機だと思ってくれればいい。AEDのフタを開けると、人体のどのヵ所にどの電気シールを貼るかが書いてある。後は、その通りにシールを貼って救急車を呼ぶだけ。AEDは、機械自体が人体の生命状態を感知して、心臓が停止しそうであれば電気を流す。大変優秀な奴である。強いて言えば、人口呼吸が出来ないのがたまにきずのように思えるのだが……。近くにアンビュー(簡易人口呼吸機)も一緒に置いておけばいいのに……。しかしながらもし、近くにAEDがなかった時は、近くの誰かを呼んで、人口呼吸法と心臓マッサージ法を行って欲しい。見て見ぬ振りをすれば、最悪殺人罪ですよ! 勿論、病院に到着後は人口呼吸機と心臓マッサージ機が装着されますけどね。
さあ、食のこと・身体維持機能に触れたところで、次は呼吸機能について書いてみます。もし皆さんが、自発呼吸が出来なくなった場合、どういう処置をするか知ってますか? この方法は咽頭ポリープの手術でも同じようなことを行うのですが、気道切開術というものです。何を行うかと言うと、大体男性の喉仏の辺りを切開・切除して大きな穴を開け、そこから呼吸を行えるようにするというものです。ただし、この手術には欠点があり、咽頭部の声帯を同時に切除してしまうため、金輪際一切の発声が出来なくなるということです。窒息して死にますか? ポリープや悪性腫瘍で死にますか? それとも声を失いますか? かなりシビアな選択になろうかと思いますが……。
さぁて、まだ綺麗な話ばかりをしてきましたので、この辺りから下品な話に入って行きたいと思います。
身体切開手術で使用される全身麻酔。これを使用すると、十中八九、バルーンカテーテルというものを挿入されます。バルーンカテーテルとは、バルーン(風船)の字の如く、尿管から膀胱へとチューブを挿入し、膀胱内で風船のような被膜を膨らませます。これに伴い、膀胱内に溜まった排泄物(尿)は、自然と体外へ排出され、カテーテルで繋がった【ハルンバック】や【ウロバック】等と呼ばれる袋の中に溜められるのです。しかし、人間の身体というものは、正確なのか不正確なのか、このような状態にあっても尿意をもよおします。この際、絶対にいきまないで下さい。尿道はカテーテルによって無理に広げられ、膀胱内にあるバルーンも百パーセント完璧なものではありません。いきみ過ぎると、尿道内のカテーテルの外側を通って、尿が漏れてきますよ。また、これは特に男性への忠告です。バルーンカテーテルは、無理矢理引き抜かないで下さい。痛みでそんな事出来ないとお思いでしょうが、実際に行うと尿管破裂(ウインナーが実のないバナナ状に……。『考えるだけでも痛すぎる……』)なんて事になりますので、私はこれまでに幾度となくそんな事例に遭遇してきました。だ
から言うのです。自己抜去は、決して行わないで下さい。そして看護師により抜去を行う際も、衝撃的な激痛を伴いますが、そこはグッと我慢してください。
さあ、これで終わり……? って思ったでしょ? でも、最後に最も下品で最も汚い医療行為の説明を用意致しました。その名もストーマ。俗にストマーとも言われますが、実際的にはストーマが正解です。このストーマ、名前を聞いただけでは何の事やらさっぱりですよね? ですので、ヒントを差し上げます。このストーマは腸閉塞の時に行う切開術です。もう、ピンッときましたか? そうです。これは、腸壁切開型人工肛門開設術なのです。腸閉塞と書くと面倒なのでイレウスと書きますが、腸内蠕導運動が低下して腸内環境が悪化してくると、排便どころか放屁すらも出来なくなります。こうなると、排泄して体内環境を維持していた腸から、人体に悪影響を及ぼす物体・気体が逆流してくるようになります。(ひどい方では、口から排便臭がします)そうならないように、腸壁を切開し腹部にパウチという排泄物を溜め込む袋を取り付け、肛門を腹部に開設してしまおうというのです。しかしながら、このストーマにも欠点があり、人体における飲食物の消化・吸収機能についてはご存知だとはおもいますが、唾液と咀嚼で軽く砕き、食道内の消化酵素で更に柔らか
くします。そして胃液で体内が吸収しやすい流動食状にしてから、腸内にて栄養素の吸収を行うのですが、腸壁切開であるストーマを開設する事により、その能力は激減します。そうなると、体内における低栄養化・栄養不足からの床擦れ(褥瘡)の発生。二次三次疾病への合併。と様々な悪影響が発生してしまうのも否めない話となります。
医学の進歩、それは人類及び、この惑星内の生物に生態系を無視した寿命の長期化を可能にしてきました。しかし、それは本当に生きているのでしょうか? それとも、生かされているのでしょうか?
もう故人となりましたが私の知っている方にこのような方がおられました。鼻腔栄養で栄養補給をし、人工呼吸機で呼吸をし、心臓マッサージ機で心臓を動かし、排尿はバルーンカテーテル。排便はストーマ。表情一つ変えず、目が見えているのか、耳が聞こえているのかわからない状態。鼻腔栄養カテーテルとバルーンカテーテルの自己抜去防止の為に、ベッド柵に両手を紐で結ばれ、一人で身動きがとれない状態が為に、仙骨と踵・肩甲骨と後頭部に褥瘡が出来てました。最期は、病室で看病をしていた息子さんの目前で脳死というかたちで息を引き取ったそうですが、私達は息子さんが機械類のコンセントを一時的に抜いたのではないかと推察しています。
もうかれこれ、十三・四年前の話なので、現在では考えられないような事もやっていますが、それでもそんな事があってから、まだ二十年も経過していないんです。
人類の医学の進歩、悪いことだとは言いません。言いませんが、それが人道的なのか非人道的なのかをもう少し考えて欲しい……。そう思った文章でした。
穴・管・チューブ・電気だけで、解決するのは如何なものでしょうか……?




