↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
聖女はレティ成分でできている 〜世界より推しが優先です〜  作者: 浦賀やまみち
第四章 嵐を呼ぶ聖女

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
22/27

第22話 聖女、返却される




「はぁーー……。」



 何もやる気が出ない。

 レティ専用のベンチに座りながら、青空にため息をつく。


 ベンチの背後に植えた白百合。


 巡礼の旅から帰った頃には、見事な花をたくさん咲かせていた。

 それも今では、花びら一枚残っていない。


 百合たちの中、私とレティが並んで微笑む。

 その一枚を描いてもらうため、教会の絵師まで呼んでいたのに。



「もう三週間も経つのに……。

 まだ帰ってこないのぉ~? レティ~……。」



 レティの馬鹿、馬鹿、馬鹿。


 乙女ゲームの一枚目のスチル絵。

 レティとアルベルトのあの一枚を、現実で上書きしないと駄目なのに。



「あーー……。アルベルトのやつ、事故死しないかなー」



 私の聖女魂が、わなわなと震えた。


 決めた。

 今夜から、アルベルトを呪ってやろう。



「やっべっ……。

 元気なさそうだから、声を掛けようとするんじゃなかった」



 ふと声が聞こえ、視線を正面へ戻す。

 セドリックが、上げかけた右手を止めたまま、顔を引きつらせていた。



「んっ!? 生徒会長じゃないですか? 暇なんですか?」



 何をそんなに驚いているのだろう。

 私は首を傾げた。



「お前ほどじゃねーよ」


「……というか、これ、無自覚だ。知りたくなかった」


「俺、すごい秘密しっちゃった?」


「いやいや、何も聞いてないよ。

 うんうん、俺は何も聞いてない」


「さーて、お馬さんに乗りに行こうかなー?」



 何やらぶつぶつ言ったかと思えば、一人で納得している。

 そのまま口笛を吹きながら立ち去っていった。



「……なに、あいつ?」



 私はもう一度、首を傾げた。




 ******




「……誰よ、あの女」



 気が狂いそうなほど、レティ成分が足りない。


 廊下の曲がり角に身をひそめる私の視線の先。

 そこには、レティの部屋の前に立つ見知らぬメイドがいた。


 もう小一時間ほど前からだ。


 もちろん、曲がり角に居続けたら不審者だ。

 だから、何度も廊下を往復している。


 つまり、あのメイドは不審者だ。

 レティの部屋の前に、小一時間も立ち続けているのだから。



「でも、美人……。」 



 寮長に引き渡そう。

 女子寮の平和を守るのも、聖女の務めだ。


 そう思った矢先、私のレティレーダーが反応した。

 この微かに漂ってきた香りは、レティがつけている香水だ。


 ドキドキドッキーンッ、と胸が跳ねた。



「レティ、おかえりなさい!」



 私はすぐさま駆け出した。

 廊下の向こう側に見えたレティへ向かって。


 もう我慢できない。

 ギュッと抱きしめて、くんくんしちゃう。



「ご無礼」



 次の瞬間、視界の前に手が割り込んできた。


 頬をがっしりと掴まれる。

 反動でよろけたところを、今度は腰を掴まれ、そのまま引き寄せられた。



「あぁん? なんだ、お前?」



 私は無法なメイドを睨みつけた。


 私とレティの感動の再会を邪魔するなんて、異端者決定だ。

 火あぶりの刑にしてやる。



「フィオナ、お久しぶりです」

「うん、五十二日と六時間ぶり!」



 だが、レティは全てに優先する。

 私はご機嫌にニッコリと笑う。


 無法なメイドは、あとで寮長に言いつけて、絶対に解雇してもらおう。



「しょ、紹介いたします。

 彼女は、子どもの頃からの私付きの侍女です」

「……えっ」



 しかし、レティの一言で、私は固まった。

 そんなキャラ、乙女ゲームにはいなかった。


 レティは公爵家令嬢。

 専属のメイドがいても、何もおかしくはない。


 実際、家から従者、侍女を学園に伴っている生徒はいる。


 だが、レティはそうしなかった。

 公爵家の力を使わず、自主自立を目指して。


 そういう設定だったはずだ。



「マリアと申します。お見知りおきを」



 なぜ今さら、その設定を破ってまで侍女を連れてきたのか。

 私に分かるのは、今後のレティ成分の採取が難しくなるということだけだった。


 簡単に想像が出来てしまう。

 レティが部屋を留守にしている間、このメイドが無表情のまま扉の前に立ち続ける光景を。


 ノエルの出番だ。

 ノエルにメイドを惹きつけてもらい、その隙を動くしかない。



「聖女様、失礼いたします」

「へっ!?」



 しかし、隙をつく前に、逆に隙を突かれていた。

 メイドの手が、いきなり私のスカートを捲り上げる。



「お嬢様、いかがです?」

「……私の下着よ」



 ついに、私の秘密がレティにバレてしまった。


 まずい。

 とてもまずい。



「では、返却をお願いします」

「ひょっ!?」



 メイドはスカートを捲り上げたまま、淡々とパンツを下ろした。



「……あら?」

「まあ……。」



 レティが目を丸くする。


 見られた。

 最も知られたくなかった私の秘密が見られてしまった。


 孤児院でも、神殿でも、学園でも、この女子寮でも隠し通してきたのに。



「聖女様はお剃りに……。

 いえ、これは天然のようですね」



 私は下唇を噛みしめ、ぷるぷると震える。


 いや、レティなら見られても構わない。

 いずれ、見せるつもりだったし。


 だけど、それはこんなタイミングではなかった。


 二人が初めて結ばれる夜。

 私は照れながら『笑わないでね』と言う。

 レティは少し驚きながらも微笑み、『可愛いわ』と言ってくれるんだ。


 それなのに、それなのに。


 やばい。

 涙が出てきた。



「だ、大丈夫よ! フィ、フィオナ!

 め、珍しいけど、そういう人もいるって聞いたことがあるわ!」



 レティが慌てて慰めてくれたが、違う。

 私が聞きたかったのは、そんな言葉じゃない。



「レティのバカ、バカ、バカ! 大好きいいいいいっ!」



 私は涙を右腕で拭い、逃げ出した。

 ノーパンのままで。




 ******




「ノエル!」

「わっ!? びっくりした……。

 ……っていうか、フィオナ。ここ、男子寮だよ?」

「毛生え薬って、どこで売ってるのっ!?」

「……は?」




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。