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聖女はレティ成分でできている 〜世界より推しが優先です〜  作者: 浦賀やまみち
第三章 薔薇は気高く

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第14話 かつての王子様




「フィオナ、一位だよ! すごいじゃないか!」



 ノエルが笑顔で指さした先。

 一学年棟の掲示板に張り出されたダンジョンアタックランキング表。


 そこには、『二輪の白百合、あとおまけ』のパーティ名が一番上にあった。

 私が考えた、私とレティ、ついでにアルベルトのパーティ名だ。


 当初、登録済みだったアルベルト案の『黎明の騎士団』を変更した。

 理由は、厨二病くさいからだ。


 ちなみに、アルベルトは今も納得していない。



「ノエルも、三位じゃない。おめでとう」



 三位には、『鋼鉄の牙』と書かれている。

 ノエルとライオット、それにかつて私が憧れた男装王子様『セシル』のパーティ名だ。



「えへへ、ありがとう」



 ノエルは照れくさそうに笑った。



「でも、僕の場合は、ライオットとセシルのおかげだからさ」

「それは違うよ」



 私は即座に否定した。



「三位って数字は、誰かのおかげで貰うものじゃない」



 掲示板の前には、多くの生徒が集まっていた。


 自分の名前を探す者。

 友人の順位を喜ぶ者。

 悔しそうに次の目標を語る者。


 そこには、それぞれの一か月があった。


 笑って、悩んで、時には傷つきながら積み重ねてきた時間。

 その証が、この数字だ。



「ノエルが三位になったのは、ノエルが頑張ったからだよ」

「うっ……。」



 私がにこりと微笑むと、ノエルは胸元に手を当てた。

 まるで大切なものを抱きしめるように。


 顔がみるみる赤くなっていく。


 可愛い。

 私のレティには及ばないけどね。



「フィオナって……。」



 少しだけ間を置いて、ノエルは困ったように笑った。



「たまに本当に聖女だよね」

「たまにって、何よー」



 思わず頬を膨らませる。

 私はいつだって聖女なのに。



「あーーっはっはっはっはっはっ!」



 突如、高らかな笑い声が響き渡った。

 周囲の女生徒たちが一斉に振り返る。



「キャーっ! ローゼンさまぁ~!」

「今日もお美しいです! ローゼンさまぁ~!」

「こっちを向いてください! ローゼンさまぁ~!」



 瞬く間に、女生徒たちが笑い声の主へと群がっていく。


 振り向くまでもない。

 セシルだ。



「子猫ちゃんたち、困るな!

 僕には向かわなければならない場所があるんだ!」



 さて、用事も済んだし帰ろう。


 今日も、お勤めのポーション作りが待っている。

 教皇様、もう少しノルマを減らしてくれないかな。



「ま、待ってくれ! せ、聖女様!」

「……はい?」



 しかし、セシルに呼び止められた。

 振り返ると、こちらに視線が集まっていた。


 セシルが群がっていた女生徒たちを置き去りにし、私に駆け寄る。



「こうして、ちゃんと会うのは初めてだったね。

 僕は、セシル・デ・リリアン・ローゼン。セシルと呼んでくれ」



 セシルは髪を掻き上げ、爽やかに笑った。

 白い歯がキラリーンと輝く。


 かつての私だったら、間違いなく聖女成分が漏れていた。

 だが、レティを知った私には効かない。



「あっ、はい。私もフィオナでいいですよ」

「……あれ?」



 セシルの笑みがわずかに凍った。

 ノエルが隣で苦笑していた。


 一拍置いて、私はにこりと微笑んで続けた。



「ノエルのこと、よろしくお願いしますね。

 本当は私が一緒だったらよかったのだけど、私たち似たような役割ですから」



 言われてみれば、セシルとちゃんと話すのはこれが初めてだった。

 ライオットにはノエルを守れと言ったが、セシルにはまだ何も言っていない。



「あっ、うん。もちろんだよ」

「では、私はこれで」



 これで、良し。

 要件は済んだ。



「ま、待ってくれ!」



 しかし、踵を返そうとしたところで、セシルに肩を掴まれた。



「何ですか? 私、忙しいんですけど?」



 思わず眉を寄せる。

 かつて憧れていた王子様は、もっとスマートだった気がする。



「ノエル、聞いてた話と違うじゃないか!」

「いや、僕はちゃんと言ったよ?

 女の子は好きだけど、ヴァレンタイン嬢以外は興味ないって」



 セシルはノエルの手を引き、廊下の隅へと連れていった。

 小声で何やら話し込んでいる。



「もう行っていいですか?」



 私は腕を組み、首を傾げる。

 面倒くさくなってきた。



「では……。」



 返事を待たず、踵を返した。


 レティ成分が足りない。

 お勤めの前に、生徒会室へ寄っていこう。



「あっ!? フィオナ、待ってよ!」

「……う、嘘だろ」



 そんな二人の声を背に、私は生徒会室へ向かった。




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