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聖女はレティ成分でできている 〜世界より推しが優先です〜  作者: 浦賀やまみち
第二章 私の勇者様

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第11話 レティは勇者!




「レティシアは勇者なのか?」



 こいつは、いきなり何を言い出すのだろうか。

 私は目をぱちぱちと瞬きさせた。



「……はっ?」



 間抜けな声が出た。

 私の頭の中は、宇宙に放り出された猫のようになった。



「あれ? てっきり勇者だから、執着しているんだと思っていたのだけど……」



 だが、アルベルトの口から飛び出した予想外の言葉に、私は我に返った。


 ソファーから勢いよく立ち上がる。

 自分の胸を右掌で叩く。



「私はレティが好き! 愛してる!」



 そして右足をテーブルに乗せ、レティへ右手を差し出した。



「ええっ……。」



 レティは仰け反り、顔を引きつらせた。

 顔色が悪い。


 アルベルトのせいだ。

 私もいきなり『聖女』に認定された時は混乱した。



「どうしたのっ!? 具合悪いのっ!?」



 慌てて私は左足もテーブルに乗せる。


 悪の手から、レティを一刻も早く助けなければならない。

 それが聖女としての使命だ。



「保健室へ行こっ!? 一緒に寝よっ!? くんくんさせてっ!」

「おっと、そこまでだ」



 しかし、レティの肩に触れる寸前、ライオットが私の顔を鷲掴みにした。

 聖女たる私の崇高な使命を邪魔するなんて、異端者決定である。



「死ね! ボケが!」



 私はテーブルの上を軽く跳ね、後ろ回し蹴りをライオットに放った。




 ******




「私は暴君じゃありません。聖女です」



 私は、正座させられていた。


 横暴だ。

 理不尽だ。



「許してください! フィオナは少し情熱的なだけなんです!」



 ノエルが加勢してくれた。

 さすが、私の親友だ。


 欲しがっていた私のリボン付きの髪留めを、あとであげよう。

 この手の品を今まで欲しがらなかったのに、やっと女の子の自覚を持ってくれて、私も嬉しい。



「いや、少しじゃねえだろ。これで何度目だよ」



 ライオットは深いため息をついた。


 相変わらず、無駄にデカい図体しやがって。

 お前が私の前に立っているから、レティの姿が見えないだろうが。


 だが、私は諦めない。

 身体を右に傾け、首を伸ばす。



「反省しろって!」

「ぐぬぬっ……。」



 雑に顔を両手で掴まれ、戻された。

 断じて許せないが、もっと許せないやつがいる。



「さて、どうしようか?

 レティシアが勇者でないなら、当初の予定通りでいいのかな?」



 アルベルトだ。

 三人掛けのソファーに、レティと隣り合って座っている。


 しかし、その言葉は気になった。



「レティは神!」

「座ってろ」

「ぐぬぬっ……。」



 立ち上がろうとしたが、ライオットに頭を押さえつけられた。

 仕方ないので、隣のノエルに視線を送る。



「ええっと……。予定通りというのは?」



 ノエルは苦笑しながらも、私の言いたいことを代わりに言ってくれた。



「ほら、来月からダンジョンアタックのカリキュラムが始まるだろ?」



 アルベルトは軽く肩をすくめ、疲れたように息を吐いた。

 レティが心細そうに、アルベルトの袖をちんまりと摘む。



「あっ」




 羨ましい。

 だが、それ以上に重要なことを思い出し、冷静になる。



「ああ……。一緒にアタックするメンバーですね」

「そう。最初は三人組で始まる。

 僕らは色々と面倒な立場だろ?

 だから、僕、レティシア、ライオットで組もうと考えていたんだよ」



 この世界が舞台になった乙女ゲームは、RPGである。

 一学年の夏から、ダンジョンアタックの授業が始まる。


 その意義は、高貴なる者の使命らしい。

 先日、授業でそんなことを言っていたような気がするが、どうでもいい。


 重要なのは、レティだ。



「だけど、レティシアが勇者であるなら、話は変わる。

 フィオナ嬢が受けた神託は有名だからね」



 当たり前だが、乙女ゲームではプレイヤーがパーティ編成を行う。

 だから、私はレティとパーティを組むのを当然のことと考えていた。



「俺は、この女が聖女とは今も思えねえけどな」

「あはは……。いつものフィオナは、ちゃんと聖女ですよ?」



 しかし、この現実は違う。


 先日の授業で、教師が言っていた。

 得手不得手が被らないように、教師側で編成すると。



「私は、安心しました。

 私が勇者なんて務まるはずがありませんから」



 まずい。

 非常にまずい。


 私は聖女だが、政治力は持っていない。


 悔しいが、アルベルトを頼るしかない。

 鍵になるのは、アルベルトが言っていた『勇者』だ。



「レティは勇者!」

「えっ!?」

「レティは絶対に勇者!」



 私が高らかに宣言すると、みんなの視線が一斉に集まった。


 当然だ。

 これは聖女による、正式な宣言なのだから。


 ただし、なぜか皆の表情は困惑していた。



「フィ、フィオナ? ほ、本当なの? だ、大丈夫なの?

 ゆ、勇者の出現は、教会に記録されるんだよ?」



 ノエルが不安そうに問いかけてくる。

 その表情もなかなか可愛い。



「今、神託を受けたから、レティは勇者!」

「ぼ、僕には聞こえなかったけど……。」

「修行が足りないんだよ!」



 だが、レティには及ばない。

 私は惑わされない。



「あ、あの……。わ、私、剣とか扱えないのですが……。」



 レティが申し訳なさそうに小さく手を上げた。


 なるほど。

 勇者としての不安か。


 でも、何も問題はない。

 勇者を支えるのも、聖女の役目である。



「大丈夫! そういう危ないことは、アルベルト様がやるから!」

「……ぼ、僕は、おまけ?」



 アルベルトが信じられないものを見るような顔をした。

 だが、そんなことは関係ない。



「レティは勇者!」



 私は聖女だ。

 つまり、私が正しい。




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