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265  作者: Nora_
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「ぼふん」


 なんでこんなことになったのか。

 ただ、物凄く早い時間とかでもないからおかしくはないけど違和感はある。


「ま、妹さん」

「あ、昨日は出ていってとか言ってごめん」

「いや……」

「あのときなんか気持ちが悪くなって吐きそうになった、そんなところを佑先輩に見られたくなかったから」


 いやそれ間違いなく僕のせいだろう。

 それなのに勇気を出して僕の部屋まで来てくれた、そのうえで謝ってくれているなんて……。


「もう治ったけど想像以上に悪かったのかもしれない」

「違うよ、調子が悪いときに僕がそのまま乗っかって返事を――」

「乗っかっているのは僕」

「そ、それはそうだけど昨日は、さ」


 お客さんがいるなら合わせなければならないのにこの布団から出たくない。

 僕が言うことを聞かなくて佑未が拗ねたときに布団にこもられたことがあって、なにもそこまでしなくてもと呟いたことがあったけどいまなら気持ちが分かる。

 拗ねているわけではないものの、これは確かに周りの人から身を守れるからいいのだ。


「ん? 佑先輩も風邪?」

「……妹さんがまた来てくれるとは思わなかった」

「え、行くけど。恋人にはなれなかったけどお友達のままではいられるからそれで満足する」


 うっ……。

 いやいやっ、それが理想だっただろと慌てて引き戻す。

 自分の考えている通りになってなにを気にする必要があるのか。


「もう一回海に行きたい」

「それなら佑未や梅さんも誘わないとね」

「行くことは話すけどメンバーは二人だけでいい」


 傷つけたことには変わらない、離れたところでしかやりづらいこともあるのだろう。

 自分可愛さで断ったのだからそれぐらいは受け入れなければならない。

 流石に真夏に布団の中でこもっておくには限界があるのもね。


「そういえば渡し忘れていた。はい、お土産」

「ありがとう」

「結構お金を使っていて個別に買ってくる余裕がなかったのはごめん」


 謝ってばかりなのは二つの意味で本調子ではないから。

 このまま離れてしまっていいのかなとすぐに考えを変えてしまいそうになる。


「っと」

「掴めてよかった」

「ありがと。ただ、向こうでも同じように転びそうになってヒヤッとした」


 ……自分のせいだけど内がごちゃごちゃしすぎてそれこそ僕が気持ち悪くなってきた。

 大人なところに甘えていれば多分、この感じだとこれからもこれまで通りにやれる。


「やっぱり調子が悪い?」

「大丈夫だから気にしないで」

「無理をしてほしくない」

「無理をしているのは妹さんだよ」


 まだなにも食べていないから仮に本気で吐きたくなってもえずくだけだ。

 僕は逆に汚いところを見せたりして離れてほしかった。


「無理なんかしていない、僕はお友達だから佑先輩のところに来た」

「そうやって言い聞かせているだけだよ」


 とにかく行こう、留まっていると時間がもったいない。

 一人で歩いていても意味はないから何回も確認をしながら海へ。


「さ、自由にしてくれればいいよ」


 ここなら少し叫んだところで誰にも迷惑はかからない。

 全てをぶつけてストレスを少しだけでも発散できたら一人で帰ればいい。

 強がっていたっていつか限界はくる、だから年上としてここで変えさせるのだ。


「いいの?」

「うん」

「じゃあ……これ」


 本当に友達として求めているのなら抱きしめたりなんかしないのに。


「やっぱり気にしていたんだね」

「そんなの……当たり前のこと。佑先輩だってどうせ好きな女の子に振られたらそうなる」


 どちらでもいいから好きな女の子ができていたらこんなことにはなっていない。

 彼女は本当に変な人間を好きになってしまったものだ。


「佑先輩は昨日で終わりのつもりだった?」

「うん、だって友達としてはいてほしいなんてズルいでしょ?」


 中には友達みたいにいられる人もいるかもしれないけど僕は同じようにできない。

 ゼロになることは慣れているからまあ、僕らしく生きていくだけだ。


「こういうことは極端な方がいいんだよ、だから妹さんは他のいい人を探してよ」


 帰りたいのは彼女だろうから動いたりはしなかった。

 叩くのでもよし、嫌いと言うのでもよし、なにも言わずに走り去ってなかったことにするのもよしだ。

 返事待ちのときと違って自由だ、なにもマイナスなことはないのがいい。


「嫌だ」

「駄目だよ」

「嫌だっ」


 あ……すごい力だ。

 昨日の梅さんがかなり手加減してくれていたことがよく分かる。

 もちろん、筋肉質でもなんでもない僕は倒される羽目になった。


「そこまでなの?」

「……梅が言っていたように他の人と佑先輩は違う」


 涙ってこんなに冷たいのか。

 傘を忘れて雨の中、歩いたことがあったけどそのときもいまみたいに冷たいとは感じなかった。

 まあ、そのまま存在していれば間違いなくどの季節だろうと冷えるのは確かでもだ。


「少し触ってもいい?」


 頷いたので頬に触れてみるとそっちも冷たかった。

 人によっては暑くて外になんかいられないぐらいの気温なのにそのときの状態次第でここまで変わるとは……。


「……なにもなくていいから受け入れてほしい」

「そうしたら僕は最低な人間になってしまうよ」

「ぐす……絶対に無理?」


 いや……全くそんなことはない。

 ブレブレでダサいけど彼女のことを考えなければここは受け入れておく方が自分にとって間違いなくいい。

 でも、相手のことを考えないなんて駄目だ。


「無言は肯定の証」

「それは違う……」

「それならお試しでもいいから受け入れてほしい」


 なんでここまで強くいられるんだ……。

 これだけ抵抗されてまだ頑張れるなんて……。


「それに最低と言ったら僕も同じ、佑未さんに佑先輩のことを色々と聞いてしまったから」

「僕に関する情報を知ることぐらいなにも最低なことはないよ。僕に直接聞いてくれる方がいいのは確かだけどね」


 とりあえずいつまでも寝転んでいないで立ち上がろう。


「受け入れてくれるまでこのまま」

「分かった」


 昔、女の子に最低と言われたことがあったことを思い出した。

 だから今更な話だったのだと片付けていい加減、前に進めよう。


「佑先輩は僕のこと友達として好き?」

「それは間違いなくそうだよ」

「だったら嫌いよりも可能性はかなり高くある。これから一緒に過ごしていく中で友達としての好きから変えていけばいい」

「卒業するまでそういうつもりで一緒にいるよ」


 これが僕にできる精一杯のことだ。

 卒業してから先は今後の僕達次第だった。

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