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「ばーかばーか、結局そうやって受け入れるなら最初からそうしなよ」
「梅さんにも協力を頼みたいときがくるかもしれないからよろしくね」
「ふん、あくまで妹のために動くんだからね、大原先輩のためにじゃないから」
「うん、分かっているよ」
さあ、あとは佑未か。
実はあれから話せていないからどうなるのか。
「泣かしたことだけは許さないから」
「妹さんは結構お喋り好きだよね」
「そうじゃなければ私達はなにがあったのか分からないままだからね、助かっているよ」
ま、妹さんにされるのならともかく、佑未にされるのは少し……。
普通に話せるレベルには戻しておかなければならない。
「佑未とは仲いいままでいたい」
「はあ? お兄ちゃんいまこんなことをしている場合なの? 私なんかに話しかけるよりもくっついたままの妹の相手をしてあげてよ」
「このままでは駄目なんだよ」
「はあ~……なんで妹にその感じで接してあげられなかったの。梅、この情けない人がどうしてもって言うからみんなで集まろ」
「情けないね」
グサグサ突き刺さる!
リビングに着いた頃にはボロボロだった。
「妹もよくこんな人をそういう意味で好きになったよねー」
「佑先輩は合わせてくれるから」
ボロボロだけど言いたいことは言っておいた方がいい。
我慢はよくない、それで気持ちよくなれたら他のことに集中してくれればいい。
「大事なところで駄目だったけどねー」
「そうそう、そういうところで同じようにできなかったら意味がないんだよ」
「そんなことはない、そうではないなら僕は佑先輩を好きになってはいない」
「なんかごめんね……」
「うん、妹のために言わないでおくね……」
本当にそう、ごめんねと謝りたくなる。
「ま、悪いところばかりでもないか」
「そうそう、それは本当にそう」
「無理やりよく言ってくれなくていいんだよ」
「「泣かせたことが許せないだけ」」
二人はそれぞれ両腕に優しく拳を押し付けてから出ていった。
突っ立っていると「佑先輩のお家なんだから座った方がいい」と誘われたので隣に座る。
「はあ」
「や、やっぱり体調がよくなかったとかっ?」
立ち上がりかけて急にふらっと倒れそうになったからガシっと腕を掴んだ。
急にくたりとされたら心配になる……。
「違う、受け入れてもらえるまでに本気で悲しくなったから落差で疲れている」
「ごめん……」
でも、もう受け入れたからやっぱりやめようとは言わない。
ちゃんと切り替えよう、彼女だけではなくて佑未や梅さんに迷惑をかけないためにもここからスタートだ。
「泣き落とし作戦とかではないけど受け入れられて満足している。佑先輩が卒業するまでになんとかできなかったらそれは僕の力不足なだけだから気にしなくていい」
「内がどうであれ関係が変わったんだからしたいことや頼みたいことがあったらどんどん言ってね」
「それなら頭を撫でてほしい」
それぐらいならいくらでもする。
いまは頬とか手とかが温かいといいな。
「あと、さん付けはよくない」
「ま、妹」
「いまはこれぐらい」
なんかもっとありそうなものだけど……。
「もっといいんだよ?」
「佑未さんではないけどそれならどうして普通に受け入れてくれなかった?」
「うっ、ご、ごめん……」
いやでもっ、受け入れてからも関係が変わる前までの調子でいるよりはいいはずだ!
最低な人間は既に屑と呼ばれる人間達と同じかもしれないけどその中でせめてと動いているのだ。
「なんか弱々しくなってしまった」
「僕なんていつもこんな感じだよ……」
「大丈夫、佑先輩はいままで通りでいい」
ああ……見られている、しかも睨まれている。
だけどそうされてもおかしくはないことをしているわけで、そのまま受け止めるしかない。
「大原先輩しっかり切り替えて」
「そうだよ、しっかりして」
「佑未さん達も佑先輩によしよしてあげて」
佑未は物凄く真っすぐに、梅さんは少し嫌そうにしながらもこちらの頭を撫でてくれた。
「それにちょっと頑張ろうとした私もいるんだから大原先輩――佑先輩はもっと堂々としていてよ」
「む、いま出すなんて卑怯」
「ま、妹には言っておいただろーそれでも頑張って普通レベルまで落としたんだから許してよ」
元々抑えるつもりだったとしてもそれを隠さずに相手に言えてしまうところがすごいな。
そしてそれだけの仲というわけだから羨ましい。
「正直、梅の方が可愛い反応を見せていたよね。その点、妹は滅多に恥ずかしがったりしないからお兄ちゃんにも響きづらかったんじゃないかな」
「な、なんと……」
「そ、そんな顔をしなくていいよ妹、アピールをしてきてくれた妹のそれを受け入れたんだからさ」
これからは差を作っていかなければならないのだ。
「……でも、結局好きになってはもらえていないから」
「ぐは!?」
「はははっ、そうだ言い合えー恋人に遠慮はよくないぞ!」
「うんうん、サンドバッグにすればいいわけじゃないけど我慢はよくないからね。こんな始まり方でももう恋人なんだからどんどんね」
また二人が出ていって約一分ぐらいは静かな時間となった。
少し足を伸ばしつつ窓の方を見ているとまたよりかかられて彼女の方を見る。
「佑先輩に触れていたい」
「妹も呼び捨てでいいよ」
「普通、お試しでお付き合いをしている状態ならこんな感じにはならないと思う」
「そうなのかな」
仮に〇〇が正解となっていても同じようにできるかは怪しいし、そういうのがなくても僕は経験がなくてそれこそ試しながらやっていくしかない。
もう少しぐらい分かりやすく表情を変えてくれたら言葉で刺されてしまうことも減りそうだ。
「佑、好き」
「あ……うん」
いや本当に時間も全く経過していないのになんでこんなに変わっているんだ。
距離感だってグッと近くなったとかそんなこともないのに。
「顔が赤い、この前の熱の影響が今更になって出た?」
「……違うよ、今回は違ったんだ」
え、なに? 呼び捨てにされたぐらいでこれなの……。
試すようなことはしたくないけどそれなら最初から呼び捨てにしてもらえばよかった、そうすれば時間を無駄にさせなくて済んだのに。
「ん?」
「だ、だから好きと言われてその……」
「おお――ふふ、僕もそうしたくなるから気持ちは分かる」
普段変わりにくいからこそその柔らかくて可愛い表情は強く影響を与えた。
心臓がうるさい、あとついでになにをやっていたのかと自分を叱りたくなる。
「見ていました? いまあのお方から抱きしめていましたわよ」
「そうですわね――って、まさかお兄ちゃんからするとは……」
「他県にいても関係なく行こうとしていたぐらいだし、自覚できていなかっただけで妹にゾッコンだったんじゃない?」
「あー『どうすれば好きになれる?』とか聞いてきたこともお兄ちゃんらしくなかったしなあ」
うっ、今度は申し訳なさより恥ずかしさが酷く強くなって、穴があったら入りたい気持ちになった。
というか、どうしてこの子達はこうして器用に痛いところを突いてこられるのか。
妹を泣かせて許せない状態なのは分かっている、でも、元々そういうことが好きなように見えてきてしまう。
「でも、キスはいつまでもできなさそうだね」
「い、いや、それはまだしなくていいでしょ、お兄ちゃんもやっと本当のところが分かったばかりなんだから」
い、いまは抱きしめるぐらいで満足してほしい。
もう少しぐらい時間が経過したら――いや、十二月とか冬になったらかな。
「もう彼氏彼女の関係なんだよ? だったらキスだってしたいでしょ、少なくとも妹はしたいはずだよ」
「佑を食べる」
「す、少し想像とは違ったけど一度狙った獲物は逃さない女の子だからね」
それでも告白をしてきてくれたときと同じように彼女が動いてくれるのであれば話は別だ。
自分から抱きしめたくせに彼女の言うことを聞かないなんてできないから。
少し歪な感じにはなってしまうものの、今回もできることはするつもりでいる。
「って、妹はいつまでくっついているつもりなの、私達がいるところでは抑えてよ」
「佑未さんもしたい?」
「きょ、興味ないけど……?」
「素直になった方がいい、我慢は心にとって毒にしかならない」
「や、やめてっ、惑わさないで!」
兄妹で抱きしめ合っていたらやばい感じが凄くなるから佑未が離れてくれてよかったかな。
「じゃ、私は一回だけ――ねえ、邪魔をされるとできないんだけど?」
「梅は駄目、梅はライバル」
「もう選ばれて自分の方から抱きしめてくれたんだから気にするなよー」
「駄目、そこが佑未さんとは違う」
「ちぇ、可愛くなくなっちゃったな。じゃ、私は佑未さんでも抱きしめていようかね」
結局、なにもしなくてもこの三人は仲がいいままだった。
それなのに僕が壊そうとしてしまっていたぐらいだから気を付けないと。
依然としてくっついたままで「夏なのに温かくて落ち着く」などと言っている妹さんを見て強くそう思ったのだった。




