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白色毛玉とおいしいもの食べ隊!  作者: はにか えむ


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45/56

45.名前の由来ですか?

 翌日の放課後。私はいつもの温室で肉じゃがを食べながら、みんなに品評会の相談をする。


「殿下はあのふわふわのパンを振舞うだけでいいって言ったんだけど、本当にそれだけでいいのかなって思って……昨日フワリンとも話したんだけど、見た目とかもっとこだわった方が貴族受けするかなと思ったんだ」


 今日の放課後、フワリンとパンの試作品を作ることになっている。みんなにもその場にいてもらって、どれがいいか意見をもらいたいと言うと、みんな快く引き受けてくれた。

 レヴィーとキャンディは城で開催される行事に幼い頃から参加している。きっと有益な情報をくれるだろう。


「よく出されるパンは大体丸いか細長いのをカットしたやつだけどね。前にねじって焼いたやつも出たことあったかな? あんまりおいしくなかったけど……」


 キャンディが頭に手を当てて記憶をたどっている。でも出されるパンの形なんてほとんど覚えていないのだろう。会場ではパン以外にも豪華な料理がたくさん置いてあるみたいだから、当然かもしれない。


「フワリンのパンならそれだけですごい反響だと思うけどな。母上も前に持っていったパンを食べて驚いてたし……僕はフワリンのパンしか食べたことがないから普通がわからないけど、殿下もそのままでいいって言ってたんでしょ?」


 レヴィーが言うと、使い魔組で駆け回って遊んでいたフワリンが「それは俺のプライドが許さない」と叫んだ。だんだんテレパシーで感情を伝えてくる回数が増えている気がする。

 

「なあ、柔らかいパンはフワリンにしか作れないんだろう? 発表したら貴族からの依頼が殺到するんじゃないのか?」


 モニークが心配そうにすると、腕にくっついて寝ていたスイミーも目を開く。私は最近になって、モニークの感情の変化でスイミーが目覚めることに気がついた。モニークは立場の弱い私が、パン焼き機のような扱いをされないか心配なのだろう。


「殿下が言ってたんだけど、品評会で依頼は神殿を通してしか受け付けないって通達するから問題ないって。使い魔の能力だから神殿が守ってくれるんだよ」


「そうなのか。でも直接クリスタに依頼してくる人もいると思うぞ。私が王家の後見をうけた時も、よくわからない理由で声をかけてくる貴族がいたからな。クリスタと仲良くなればいつでもパンをもらえると思って近づいてくる奴がいるかもしれない」


 モニークも奇跡の子としてもてはやされて色々あったのだろう。眉根を寄せて嫌そうにしている。

 確かにそれはありそうだ。価値のあるものを手にすると知らない親戚が増えるという話も聞いたことがあるし、パン目当てで自称友達が増える可能性もあるだろう。


「そしたらあたしたちの出番でしょ! いつも通り四人で一緒にいればいいんだよ。クリスタに声をかける機会なんて学校くらいしかなんだから、休み時間はみんなでガードしよう」


 キャンディが心なしか楽しそうだ。厄介なことにも楽しみを見出せるのは、ある意味キャンディの長所だと思う。人を陥れる時が一番楽しそうなのはちょっとどうかと思うけど、私たちにはとても優しい。身内はとことん大切にするタイプの子だから憎めない。本当に敵じゃなくてよかった。

 

「そうだ話は変わるけど、今日はショコラを持ってきたんだよね。クリスタにあげようかと思って。料理に使えないかな?」


 私がみんなの友情に感動していると、レヴィーが意味の分からないことを言いだした。ショコラを料理に? カピバラ鍋……!?

 私とモニークがぎょっとしてレヴィーを見ると、言葉が足りなかったことに気がついたのだろう、慌てて説明してくれた。


「違う違う、使い魔のショコラじゃなくて、この粉だよ。ショコラの毛と同じ色をしているでしょ? ショコラの名前はこの粉からとったんだよ」


 レヴィーが取り出した瓶の中には、茶色い粉が入っていた。カピバラにしては毛の色が濃いショコラと同じ色だ。

 調味料かなと思って眺めていると、フワリンが突然毛を逆立ててぶるぶると震え出した。そしてものすごいスピードで飛んで、レヴィーの手から瓶を奪った。

 瓶を口にくわえて高く舞い上がったフワリンは「ココアだー!」と、頭が割れそうなほどの大音声でテレパシーを飛ばしてきた。

 みんなが頭を押さえてテーブルに突っ伏すと、フワリンは瓶をくわえたまま縦横無尽に飛び回る。


「……なんか、すごく喜んでるね」


 頭痛が落ち着くと、レヴィーが歓喜の舞を舞っているフワリンに首をかしげる。


「ショコラは海の向こうの国で飲まれてる滋養強壮の薬なんだよね。苦いからお湯で溶かして砂糖を入れて飲むんだけど、フワリンは香辛料も上手に料理に使ってたからもしかしたらと思って持ってきたんだ。……ここまで喜んでくれるなら持ってきて良かったよ」


 喜びのあまり高速で飛び回るフワリンを、ショコラがくわえて捕まえる。フワリンもだいぶ速いけど、ショコラの『高速移動』の方が速いので捕獲は簡単だ。

 ショコラから微細な振動を続けているフワリンを受け取ると、瓶を取り上げる。蓋を開けて匂いを嗅いでみたら、確かに苦そうな匂いがした。キャンディが瓶に指を突っ込んで粉を舐めると、顔をしかめる。

 

「ショコラってこんな苦いんだ。そりゃ王都まで出回らないよね。値段も高いし」


 レヴィーの生家の領地はこの国で唯一海に面している。だから珍しい交易品はノーム家が最初に手にすることになる。キャンディは知識としてショコラの存在は知っていたが、食べるのは初めてらしい。

 

「こんなに苦いのをいったい何に使うんだ?」


 同じようにショコラを舐めたモニークがフワリンに問いかける。するとフワリンが「菓子パンが作れる」と言った。


「パンのお菓子? ちょっと意味がわからない」


 その時昼休み終了の鐘が鳴って、多くの謎を残したまま教室に戻ることになった。きっと放課後に真実がわかるのだろう。私は楽しみで午後に授業に全く集中できなかった。

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