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白色毛玉とおいしいもの食べ隊!  作者: はにか えむ


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35/36

35.深夜のテントにて(メレディス王子視点)

 どうやらソレイル神は私に味方しているようだ。

 学校では逃げ回っていた聖女の妹、クリスタにようやく接触できた。クリスタの使い魔の能力は、派手さはないが驚愕するものばかり。この国の建国王の使い魔は、あらゆる魔法を使いこなし王のために戦ったというが、クリスタの使い魔の得意分野は料理だという。

 正直、戦闘特化でないことには安堵した。王弟であるハーミット・フィストリアは国王である父を追い落としたくて必死なのだ。クリスタが戦闘能力の高い使い魔を召喚していたら、盤面が一気にひっくり返ったかもしれない。

 

「はぁ……なぜフィストリアの娘ばかり……」

 

 聖女、聖人は愛に満ち溢れた家庭に生まれる。そう言われている。ではなぜ現王派の娘と無理やり政略結婚させた王弟の家に聖女が生まれたのか。ソレイル神の考えがわからない。

 

「殿下? 入ってもよろしいでしょうか?」

 

 テントの外から声がする。入れと言うと、聖女と同じ美しい宝石眼をもったシノアが入ってきた。今日は同じテントで休むことになるが、彼は聖人だ。それにふさわしい人格を持っているから、あまり警戒する必要はない。

 むしろ私は、シノアのことをかけがえのない友人だと思っている。ソレイル神の聖地であるアール王国は永世中立国だ。他国の争いに首を突っ込むこともない。この国のお花畑聖女と違って、シノアは他国の事情も理解し、うまく立ち回ることができる。

 本来なら父の右腕の宰相であるウィズレッドの長男、ハリーが私の側近になるはずだったのだが、彼は私の婚約者のアンネマリーに懸想した。そのため私とハリーは引き離されることになった。

 

「すまないな、シノア。こんなことに付き合わせて」

 

 シノアは穏やかな笑みをうかべると、首を横に振った。

 

「いえ、参加して良かったです。探しもののヒントが見つかりましたから」

 

 シノアは明確な目的があって、交換留学生としてこの国に来た。その目的は盗まれた宝を取り戻すこと。それしか語ってはくれないが、とても大切な物らしい。

 

「……もしかしてその宝を盗んだのはフィストリアか?」

 

「今は、なんとも……。ただ答えに近づいたような気がします」

 

 相変わらず、シノアは詳しい内容を話してくれない。聞かせてくれたら、協力を惜しまないのに。

 

「それにしても、米の調理法が聞けてよかったですね。聖女であるアンネマリーのおかげで民の関心は王家よりフィストリアに傾いていましたし、王家の評価を高めるのに利用するおつもりなのでしょう?」

 

 シノアが話を変えた。これ以上しゃべる気はないという意思表示だろう。もしかしたら、窃盗犯が私と近しい人間である可能性が捨てきれていないのかもしれない。

 

「ああ、クリスタが王弟の味方でなくて助かった。だが気をつけなければ……王弟に強く命じられれば、従うしかないだろうからな。クリスタ自身が中立でも、立ち位置が危うい」

 

 立場が弱いまま政争の駒になっていることには同情する。助けてあげたいが、現王派に完全に引き込むと逆に危険かもしれない。冷酷な王弟は邪魔になれば、庶子である娘を消すくらい簡単にやってのけるだろう。

 

「いっそ王弟が大きく動いてくれたら……」

 

「シノア?」

 

 シノアはいつだって中立だった。他国の争いには関与しない。しかし何かがおかしい。まるで王弟に恨みでもあるみたいだ。考えてみればさっきもおかしかった。いつもは政治の話題になると沈黙するのに、自分からその話をふってきた。

 ……やはり、シノアが探す盗まれた宝。それを盗んだのは王弟なのだろうか?

 

「シノア、君が何を探しているのかは知らないが、私は君の味方だ。できることがあったらなんでも言ってほしい」

 

 使い魔のタヌキのエルが、首をかしげる。エルの固有魔法は恐らく「感情検知」だ。王家は例外で、本来なら十歳で行う使い魔召喚を生まれた時に行う。エルは人間の感情の変化を検知できるようだが、喋れないのでそれを私に伝えることができない。

 しかしひどい悪感情を持った人間が近づこうとしたら威嚇するし、仕草でなんとなく判断はできる。恐らくシノアは迷っているのだろう。私を頼るべきか否か。

 心を許した友人に頼ってもらえないのは悲しいが、私たちの身分を考えたら仕方のないことだ。

 

「……確証が持てたら話します」

 

 それきりシノアはうつむいた。

 私はシノアの護衛を増やすよう、父に進言しようと思った。なんだか無茶をしそうな予感がしたからだ。

 そもそもミューズ家の聖人が直接探しに来る宝なんて、国宝級の代物である可能性が高い。だから盗まれた宝を探すために入国を許可してほしいと内密に依頼があった時、父はシノアに護衛をつけた。窃盗犯にその身を害されたら国際問題だからだ。ただでさえ窃盗犯がこの国にいると断定されているだけでも問題なのだ。積極的に協力する以外の道はない。

 

「……聖女の提案も、たまには悪くなかったな。うまい食事にありつけた」

 

「それはスープの方ですか? パンだったらアンネマリーが悲しみますよ」

 

 話を切り替えるようにおどけると、シノアが痛いところをついてくる。アンネマリーのことは、嫌いということもない。しかし私は聖女の監視のために入学を二年遅らせたのだ。同い年の友達を作ることもできず、子供に交じって学ばなければならなくなったのは屈辱だ。

 聖女相手に不敬だが、この女さえいなければと思うことがある。ハリーの件もそうだ。聖女さえいなければ、私はハリーに憎しみのこもった目で見られることもなかったのだ。

 父の右腕である宰相の子供で、四つ年下のハリーは弟のようなものだった。いつか私と一緒に国を守るのだと無邪気に笑っていたことも覚えている。王太子である私の兄も、ハリーを兄弟と同じように接していた。

 ハリーが聖女を好きになる前までは。

 聞くところによるとハリーは庶子であるクリスタにも辛く当たっているようだ。王弟と宰相の妹を政略結婚させたはいいが、王弟は他の女との間に子供を作った。それがクリスタだ。聖女から母が泣いていたと聞いたハリーは、聖女を悲しませた元凶であるクリスタをも憎んだ。

 兄も私もハリーが可愛くて甘やかしていたから、きっとそれも悪かったのだろう。聖女に心酔するハリーをどうすることもできなかった。

 聖女さえいなければ。どうしてもそう思ってしまう。

 

 考え込む私にエルが寄り添った。私の感情が伝わったのだろう。

 それからは特に何を話すこともなく、私たちは眠りについた。

蛇足かなーとも思ったのですが、あったほうがわかりやすいかなと……

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