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「覚醒できない最強の界紋もちの俺、なぜか層界で騎士見習いとして生きることになった」  作者: 翔飛龍髙
第一章

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第7話

第7話 「確認」

 近い。

 距離が、いつもより近い。

 理由は分かっている。

 訓練。

 それだけだ。

 でも、

 近い。

「動くな」

 短い。

 すぐ目の前。

 アリアの手が、肩に触れている。

 押さえられているわけじゃない。

 でも、

 逃げ場がない。

「……別に動いてねえ」

「動いてる」

 即答。

 視線が、腕に落ちる。

 そこから、

 ゆっくりと上がる。

 胸元。

 止まる。

 界紋。

 服越しでも分かる。

 そこを、見ている。

「……何してる」

「確認」

 迷いがない。

 でも、

 少しだけ、声が低い。

 違う。

 いつもと。

 手が動く。

 肩から、胸元へ。

 触れる。

 布越し。

 その瞬間、

 ズレが、引き寄せられる。

 無理やり。

 噛み合う。


 息が合う。

 視界が、重なる。

 固定される。

 でも――

 押さえつけられている。

 そんな感じが、残る。

「……っ」

 アリアの指が止まる。

 一瞬。

 ほんの一瞬だけ。


 力が抜ける。

 すぐ戻る。

 でも、

 見えた。

 顔。

 わずかに、

 崩れた。

「……どうした」

 反応が遅れる。

 問いが出る。

 無意識に。

「……何でもない」

 即答。

 少しだけ、早い。

 でも、

 目が逸れない。

 逸らさない。

 そのまま、

 じっと見てくる。

 何かを確かめるみたいに。

 手が、

 ほんの少しだけ震える。


 押さえつける。

 自分で

 止めるみたいに。

「……」

 沈黙。

 長い。

 風の音だけが通る。

 距離は変わらない。

 でも、

 さっきと違う。

 空気が、

 張りついている。


「……お前」

 言いかける。

 止める。

 代わりに、

「……何か、分かったのか」

 別の言葉になる。

 アリアの動きが止まる。

 一瞬。

 ほんの一瞬。

 そのあと、

 ゆっくりと手を離す。

 触れていた場所から、

 ズレが、戻る。

 完全じゃない。

 少しだけ残る。

 さっきより、

 はっきりと。


「関係ない」

 短い。

 冷たい。

 でも、

 さっきより硬い。

「そうか」

 それ以上は聞かない。

 聞けない。

 聞く気がない。

 でも、

 目は逸らさない。

 アリアも、

 逸らさない。

 そのまま、

 数秒。

 ぶつかる。

 視線だけが。

 やがて、

 先に動いたのはアリアだった。

「……終わり」

 背を向ける。

 歩き出す。

 いつも通り。

 何もなかったみたいに。


 でも、

 一歩目が、わずかに速い。

 乱れている。

 ほんの少しだけ。

 それだけで、

 分かる。

 おかしい。

 いつもと違う。

「……おい」

 呼ぶ。

 足を止めない。

「何」

 振り返らない。

「さっきの」

「忘れて」

 被せる。

 即答。

 間を与えない。

 そのまま、

 少しだけ間が空く。

 ほんの少し。

「……できるかよ」

 小さく言う。

 聞こえたか分からない。

 でも、

 アリアの足が、

 一瞬だけ止まる。

 完全じゃない。

 でも、

 確かに。

 そのあと、

 また歩き出す。


 今度は、少しだけ遅い。

 揃う。

 歩幅が。

 距離が、戻る。

 いつも通り。

 なのに――

 さっきより、

 遠くない。

 胸の奥で、

 何かが引っかかる。

 さっき触れられた場所。

 界紋。

 そこが、

 妙に熱い。

 広がらない。

 でも、

 消えない。

 残っている。

 “馴染んでいる”。

 そんな感覚。

 嫌なはずなのに、

 さっきより、

 はっきりしている。

 ――まずい。

 理由は分からない。

 でも、

 分かる。

 これは、

 放っておくと、

 戻らない。


 前を行く背中を見る。

 アリア。

 さっき、

 何かを見た。

 分かった。

 でも、

 言わなかった。

 隠した。

 あえて。

「……」

 呼ばない。

 もう一度は。

 代わりに、

 一歩、踏み出す。

 地面を踏む。

 ズレる。

 少しだけ。

 でも、

 止まらない。

 そのまま歩く。

 追う。

 距離は変わらない。

 でも、

 さっきと同じじゃない。

 確かに、

 何かが変わっている。

 言葉にはならない。

 でも、

 分かる。

 さっき、

 見られた。

 ただの異常じゃない。

 もっと奥。

 界紋そのものを。

 そして――

 何かと、重ねられた。

 胸の奥が、ざわつく。

 理由は分からない。

 でも、

 消えない。

 そのまま、

 歩く。

 止まらない。

 前を見たまま。

 アリアの背中を追いながら、

 ふと、

 違和感に気づく。


 視線。

 どこかから。

 上。

 空。

 見上げる。

 何もない。

 いつも通りの空。

 でも、

 ほんの一瞬だけ――

 ズレた。

 重なった。

 もう一枚。

 見えた気がした。

 すぐ消える。

 戻る。

 何もなかったみたいに。

 でも、

 残る。

 感覚だけが。

 ――見られている。

 どこからか。

 分からない。

 でも、

 確かに。

 そして、

 それはさっきのものと、

 同じだった。

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