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【聖獣機神ガオガオン】特A級AIエンジニア、手作りスイーツで美少女聖獣たちをテイムして最強機神のマスターになる件  作者: 月神世一


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EP 15

それぞれの思惑と、激怒するインテリヤクザ

新宿の夜空を二分した圧倒的な光の奔流が収まると、そこには静寂だけが残されていた。

三体のボス級魔将機は跡形もなく消え去り、黄金の巨神『聖獣機神ガオガオン』だけが、月明かりに照らされて静かに屹立している。

その胸部、コックピットの中。

「……すぅ……すぅ……」

特A級エルゴノミクス・メッシュチェアに深く沈み込み、百夜玲王は完全に寝落ちしていた。

72時間の連続勤務、そして神のシステムをリアルタイムでフルスクラッチするという常軌を逸したオーバーワーク。そのツケが限界を突破し、玲王の意識は泥のような深い眠りの底へと沈んでいた。

『……おい。マジで寝てやがるぞ、このテイマー』

ガオンが呆れたような念話をコックピット内に響かせる。

『そりゃそうっしょ。アタシらだって、あんなエグい速度でOS書き換えられたらショートするし。この人間、マジでヤバすぎ』(白虎)

『ええ。ですが……彼の組んだシステムは完璧です。機体温度は完全に平熱を保っています』(青龍)

『フッ、俺の最高の背中で、ゆっくり休むといいぜ。オーナー』(朱雀)

『ああ……玲王様の寝顔、とっても尊くて……重い愛で包み込んで差し上げたいわ……!』(玄武)

五体の聖獣たちは、玲王の安らかな寝顔をモニター越しに見つめ、不思議な温かさを感じていた。

「しゃーねぇ。お前ら、こいつを家に送り届けるぞ。この最強の『福利厚生』を失うわけにはいかねぇからな」

ガオンの号令とともに、ガオガオンは光の粒子となって瞬時に武装解除デスマウントし、玲王を抱えたまま、夜の闇に紛れてその場から姿を消した。


新橋のガード下にある、赤提灯が揺れる場末の居酒屋。

「いやー、助かったぁぁぁぁっ!!」

ヨレヨレのエンジ色のジャージに健康サンダル姿の女――女神ルチアナは、ジョッキのホッピーを煽りながら、壁掛けの小さなテレビを見上げて歓喜の声を上げていた。

『ニュース速報です。新宿エリアに出現した巨大な魔将機は、突如現れた黄金のロボットによって完全に撃破されました。被害は最小限に……』

テレビから流れるキャスターの声を聴きながら、ルチアナは安堵のあまり机に突っ伏した。

「よかった……! これで日本政府から天文学的な損害賠償を請求されずに済むわ! 私の神界(持ち家)とガチャ代が守られたのよ!」

女神としての威厳など微塵もない。彼女は焼き鳥のネギマを齧りながら、スマホの画面をタップする。

「お祝いに、ちょっとだけ課金して10連ガチャ回しちゃおっと。……ん? あの黄金のロボット、どこかで見たことあるような……まあ、いっか! 私の定時後のプライベートには関係ないし!」

完全に現実逃避を決め込むダメ女神。

だが、彼女が「見なかったこと」にした問題のツケは、別の場所で最悪の形で爆発しようとしていた。

アナスタシア世界の最終ダンジョン、その最深部『天魔窟』。

現在、そこは黒革の高級ソファやマホガニーのデスクが並ぶ、ヤクザの組事務所のような禍々しくも豪奢な空間へと変貌していた。

「…………」

最高級のアルマーニのスーツを着こなすイケメン――邪神デュアダロスは、魔法で生成した薄型テレビの画面を、血走った瞳で凝視していた。

画面には、先ほどまでルチアナが見ていたのと同じ、日本のニュース番組が映っている。そこには、光の剣を振り下ろすガオガオンの姿がハッキリと映し出されていた。

「ワレらぁ……」

デュアダロスのこめかみに、青筋がピキッと浮かんだ。

任侠映画のDVDを擦り切れるほど見続けた結果、彼の方言とメンタリティは完全に『広島の極道』に染まりきっていた。

「ワレらァァァァッ!! ガオンも、四神のクソアマ共も! ワシの監視役のくせに、シノギを放り出してシャバで派手に暴れ回っとるじゃねぇか!!」

ドガンッ!!

デュアダロスが怒りに任せて指を鳴らす(指パッチン)と、傍らにあった大理石のテーブルが塵となって消滅した。背中に彫られた『登り龍』の刺青が、神気を帯びて妖しく赤く発光する。

彼がここまで激怒しているのには、深い理由があった。

「ワシはのゥ……! 封印されてからずっと、おどれらが差し入れで持ってくるコンビニ弁当を唯一の楽しみに生きとったんじゃ! じゃのに、日本と繋がった途端にワシだけハブりか!? ぶち舐め腐りやがってからに!」

デュアダロスはスーツの胸元から魔力で生成したトカレフを引き抜き、天井に向けて八つ当たりのように乱射した。

「ワシだって……ワシだって日本のネオン街を肩で風切って歩きたいんじゃ! 極上の葉巻を吹かして、最高級のヴィンテージワインを引っかけながら、トロットロの熱い焼きチーズで一杯やりたいんじゃァァァァッ!!」

哀しきインテリヤクザ(邪神)の魂の叫びが、天魔窟に空しく響き渡る。

「……よう見とけよ、ガオガオン。それに、あのデカブツを操っとった得体の知れんガキ。この封印をブチ破った暁には……キッチリ落とし前つけさせた上で、ワシの専属シェフにしちゃるけえのゥ!!」

かくして。

日本の命運を背負う防衛省、定時帰りのダメ女神、そして焼きチーズに飢えた『広島弁のヤクザ邪神』。

すべての思惑が、爆睡中の特A級社畜エンジニア・百夜玲王を中心に回り始める。

だが、今の玲王にとって最も重要なミッションはただ一つ。

明日の朝、完璧な目覚めのコーヒーを淹れることだけだった。

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