第96話『分断:再結』
【???視点】
音がない。
そんな世界に、静かに血が滴り落ちる音が響く。
「そうか……私は間違っていた……」
身体の半分に感覚を感じない。
けれど、痛くもない。
「人類は完璧でならなければならないと……ルズが死んだ時点で思っていた……」
ゆっくりと、血の池に倒れるルインに近づく。
「くだらない野望を持ち、その先に向かおうとした時点で……」
足の力が抜け、ルインの隣に倒れる。
「すまないね……ルイン……」
「私は本当に間違っていた……結局何も言えずに……また君を一人にしてしまったよ……」
鼓動が、少しずつ遅くなる。
「せめて……君には幸せになってほしい……」
ルインの手のひらにそっと触れる。
「創造魔法……」
何も見えない空を見つめる。
「私は、父として……いや、人間として……不完全だったよ」
視界が、ゆっくりと暗く染まっていく。
息が、途切れる。
「……それでも……」
(頼む——生きてくれ)
——
暗い廊下を駆け抜け、光が見える。
「見えた」
「ほんと!?やっと出れるー」
「しっかりしてください。カルデラさん」
先の光景が見える。その寸前で、足を止める。
「待て。すごい魔力の残留だ、リリスか……?いや……」
「ちょ、なにごと……!?」
後ろから、エレナの声が響く。
「エレナか……無事だったのか」
振り返ると、傷だらけのエレナと、エレナに抱えられるクロエの姿があった。
「エレナちゃーん!」
「ちょ、待って——」
「ドスン」と鈍い音を立てて、エレナは地面に押し付けられる。
「会いたかったー……エレナちゃーん……!」
「もう、重い……くっつくなー!」
カルデラとエレナのじゃれ合いに、クロエが目を覚ます。
「……アルベドじゃん。三人とも何してたの」
「色々あってな……ひとまず合流できてよかった」
クロエは辺りを見渡すと、静かに口を開く。
「リリスは」
「……リリスは見てないな。おそらくあっちでも戦闘があっただろうから心配だ」
すると、突然影が視界を覆う。
「誰だ——」
勢いよく振り返る。
「待て。俺だ」
そこにはリアルと——
リアルに抱えられるリリスとネオンの姿があった。
「リリス……無事だったか」
「ああ、ただ……少し乱暴してしまったがな」
リアルはゆっくりと二人を地面に下ろす。
「リリス……大丈夫?」
エレナがカルデラを突き飛ばすと、リリスの元は駆け寄る。
「もう……無茶しないでよ」
エレナはリリスの頬を軽く撫でる。
「ひとまずは全員と合流できたか?」
すると、人影が再び全員を覆う。
「アタシを忘れてもらっちゃ困るぜ!」
影の元を辿ると、そこにはボロボロのルインが立っていた。
「ルイン様、完全復活!」
「ちょ、ルイン……!?どうしたのその体……!」
エレナはすぐさまルインに駆け寄り、傷の手当てをする。
「ははは!なんか知らん男に殺されかけたけど、気づいたらピンピンになってたぞ!」
——そう言いながらも、ルインの表情が僅かに曇る。
「……けどよ」
自分の足に手を当てる。
「なんつうか……適当に詰め込まれてる……みたいな感じするんだよな」
そう言いながら、足を激しく動かす。
「もう、なんなのよルインは」
エレナはルインの体の傷を魔法で癒す。
——
【???視点】
「はぁ……死んじゃった。つまらないわね〜」
倒れる二人の元に近づく。
「ルズちゃんの子と……リリスちゃんと一緒にいる子か〜」
「流石にリリスちゃんのお友達なら死なせるわけにはいかないわね……」
リリスちゃんのお友達の体に触れる。
「創造魔法」
魔力がその体に流れ込むと、大きく空いていた太ももの傷が再生するかのように埋まる。
しかし、他の魔力に邪魔され、完全には直せない。
「う〜ん……ヘタクソなのに私の魔法使っちゃったから上手く治せないじゃ〜ん」
そう言って見つめていると、リリスちゃんのお友達の瞳が僅かに震える。
「あ、起きちゃう。けど、ルズちゃんの子は気になるから持って帰っちゃお〜」
「ついでに〜」
魔力で大陸を覆う。
「リヴァイアサンちゃんを復活させて、ルズちゃんの子になすりつけちゃお〜っと!」
波が音を立てて震えるのを横目に、ルズちゃんの子を抱えながら海の上をふら〜っと飛んだ。
——第97話へ続く。




