第88話『分断:切断 その2』
「第二ラウンドへと行きますか〜!」
杖を再びリドーに向ける。
同時に、魔法陣を展開して、魔力を集中させる。
「爆破魔法!」
赤と青に輝いた魔力は、勢いよく魔法陣から放つ。
「うおッ!それでこそ戦いっちゅうもんダァッ!」
「ちょっと、久しぶりに無茶しちゃおうかな〜!」
そう言って、杖をリドーに構える。
そして、数えきれないほどの魔法陣を展開する。
「爆破魔法《ブラスト・連》!」
その魔法陣、一個一個から本来のブラストと同じ魔力量がリドーに向かって放たれる。
「ハッ!数で押すかァッ!」
リドーは地面に足を叩きつける。
「切断魔法ォッ!」
ガッドはブラストを貫いて、目前まで迫る。
「けど、破壊はできないよね〜!」
首を傾けて、魔力を避ける。
それと同時に、激しい爆発音が響き渡る。
「ッ、痛えじゃねえかァッ!」
爆煙が晴れると、細切れになった布と一緒に、両腕が変色したリドーが視界に入る。
(素手でブラストを耐えた……!?なんとていう耐久力……)
「やるじゃん。私のブラストを生身で受け切ったのは二人目だよ」
ゆっくりと地に足をつく。
「二人目……か、俺以外にも生身で耐えたやつがいるのか」
リドーは肩を鳴らしながら笑う。
「だったらよォ……俺で最後になるなァッ!」
突然、リドーの体が歪む。
(いや、違う……!)
「爆破魔法!」
勢いよく飛び上がり、再び宙に舞う。
(詠唱なしで撃たれたら反応できないよ〜……)
「でも、当たらなければ関係ないよね――」
目の前が血で染まる。
一瞬の出来事だった。
肩、太腿、腕。
同時に裂け、血が吹き出す。
「当たらなければ……な?」
(ッ……流石に同じ手は通用しないか……)
バランスを崩して、地面に叩きつけられる。
「う〜ん……なかなかめんどくさいね」
「それはコッチのセリフだッ」
リドーが一歩、また一歩とその体が大きくなっていくように見える。
「まあ、もう勝負は決まったな――」
「バ〜カ……勝つのは私だよ」
地面が膨れ上がり、赤く輝いていく。
「爆破魔法……!」
地面に流し込んだ魔力は、地雷と化し、触れた瞬間――
爆裂する。
爆煙が辺りを覆い尽くし、リドーの姿を捉えられなくなる。
(なんとか……)
足の痛みに耐えながら、地面を掻き、煙の外に出る。
「リリス様、大丈夫ですか……!」
ネオンの声が聞こえると同時に、ネオンが駆け寄ってくる。
「ネオン……まだいたんだ」
「リリス様……一度引きましょう、リアル様は見失ってしまいましたし……」
血の滲む太腿を押さえながら、ゆっくりと立ち上がる。
「いいや……ここで私はアイツを倒す」
「リ、リリス様……!」
ネオンが突然表情を変えると、私の背後に向かって飛び出す。
「ちょ、ネオン……?」
振り返ると、爆煙が一直線に裂けていた。
「回転魔法――」
ネオンの声と共に、爆煙がネオンを交わすように消える。
「危ない……ありがとう、ネオン――」
「リ、リリス様……」
そのネオンのか細い声に、目を細める。
ネオンの体は震えており、手首は裂けてしまっている。
「な、なんで……!ネオンは確かに魔法で――」
「残念だ、リリス・ハルカを狙ったつもりが、違う女が間に入ったか」
煙の中から、低く嘲笑うような声が聞こえてくる。
「今の斬撃は魔力を固めたものだ。その分曲げたり、戻したりはできないが、硬度はピカイチだァ」
ネオンは手首を押さえながら、その場にうずくまる。
「ネ、ネオン……!」
無意識のうちに杖を落としていた。
「私は大丈夫です……リリス様は、あの人を」
その言葉を最後まで聞き取ることはできなかった。
ゆっくりと立ち上がり、ネオンの頭を撫でる。
「アイツ殺したら、ネオンのことなでなでしてあげるから」
妙に手に入る力が強く感じた。
地面に落とした杖を拾い上げる。
「もう、許さないから」
杖をリドーに向ける。
杖の先端には、巨大な魔法陣を展開する。
「私は知らないよ?死んでも」
(これを撃てば――全部終わる)
地が震える。それは、地震なんかではない。
(けど、私は終わっても構わない)
――私の魔力に惹かれている。そう思った。
「爆破魔法――」
視界が閃光に染まる。
世界が止まった。
そう感じた。
魔力は最大限に高揚している。
「地獄で詫びな――」
地面を強く踏み締める。
それと同時に、視界がぐらりと揺れる。
「っ……」
視界の端に、微かに桃色の炎が見えた。
「やりすぎた、リリス」
その声は最後まで聞き取ることはできず、目の前には何も映らなくなった。
――
【同時刻、エレナ視点】
突然、地面が激しく揺れる。
「ちょ、地震!?」
「こんな時に限って……」
揺れと同時に、とんでもない憎悪の籠った魔力を感じ取る。
同時に、クロエの矛盾魔法が崩れる。
「っ……この魔力」
「リリスの……」
リリスのことが心配で、胸の奥が震えていた。
「ははは!すごい魔力!。君たちのお友達!?」
心音しか聞こえなかった世界に、異音が混じる。
「やばすぎー!リドーと戦ってるんだろうねー!多分だけど、お友達死んじゃうね」
「何言ってんの?アンタの戯言なんて誰が聞いてると思ってるの」
目の前に立ち尽くす赤髪の男。
一瞬の沈黙の後に口を開く。
「そっか。誰も聞いてないよな!そんじゃー戦いを続けようか!」
――第89話へ続く。




