第87話『分断:切断 その1』
「俺たち以外にも魔法使いがいる――」
リアルの声が静かに響く。
「なるほどね……」
杖を拾って、ゆっくり立ち上がる。
「とりあえずみんなと合流しよう!だからまずはこの霧を――」
杖を上に向けたその時、突然横髪が空を舞う。
「……へ?」
「攻撃だッ!」
リアルの声が響く。
「リ、リリス様……!」
切られた髪がゆっくりと地面に落ちる。
「この魔法……」
『切断魔法ォッ!』
突然目の前の霧が裂ける。
「ッ……」
咄嗟に頭を下げる。
『ッチ、外したか……』
「誰だ貴様は」
リアルが霧の中に声を掛けるが、返答はない。
「敵と見ていいようだな」
リアルの体が炎に包まれる。
「鏖炎の流派ッ」
すると、霧の流れが変わる。
「第一流儀・炎華楼ッ」
リアルを覆う炎が勢いよく弾け、桜色の炎が霧を焼き払う。
「まあ、あえて外したんだがな」
「ッ……お前は」
焼き払われた霧の中から、ガタイの良い大男が現れる。
「久しいな、リリス・ハルカッ!俺だ、リドー・メロ様だァッ!」
「あの時の……!」
数ヶ月前の魔法祭典、カルデラとの試合中に乱入してきた男。
(確かに、トドメはさせなかったけど……クロエの矛盾魔法で削ったはず)
「……なんでここにいるの。着けてきたの?」
リドーは不敵に笑みを浮かべる。
「いいや、元からここにいた。まあ、いずれ分かることさ……あ、いやわからんか」
「お前の命はここで終わるからなァ!」
リドーは地面を蹴り上げ、私に一直線で飛びかかってくる。
「私は死なないよッ……!」
魔力が激しく飛び散り、大爆発を起こす。
爆風と爆煙が簡易的な視界妨害を成り立たせる。
「リアルはネオンを連れて逃げて!」
「なぜだ、それだとお前が死ぬだろ!」
(戦った事があるからわかる……
狙った獲物は絶対に捉える、まさに『狩人』のような性格を)
「いいから……!コイツの魔法は――」
突如、左肩に激しい痛みを感じる。
地面には血が滴り落ちる。
「油断は禁物だぜェ?」
「リリスッ、大丈夫か」
「リリス様……!」
(油断は一触即発……!)
「大丈夫……!ただ肩が削られただけだからっ」
地面を蹴り上げると同時に、爆発を起こして勢いよく上昇する。
(確実に対空を狩りにくる。だけど――)
目の前の霧が裂ける。
「お前の魔法の弱点はもう知ってるの〜!」
一度目の爆発で抉った地面の破片を裂けた霧に投げると、破片が霧と同じように真っ二つに切れる。
「物体一つ挟めば防御可能。でしょ!」
すると、複数箇所から霧が裂け始める。
(ちょ、連続は聞いてない!?)
「爆破魔法!」
足元を爆破させて、空中で回避する。
(危ない……てか、視界が悪すぎる!)
「さあ来いッ!お前の一撃がお前の命の終わりだァッ!」
「へへ、終わるのはどっちかな――」
地面に向けて杖を構えたその時。
突然、服の端が切られる。
(ッ……急に!?)
ふと、さっきまでいた場所を見ると、霧が晴れていることに気づく。
(私のブラストだと、爆風で霧を吹き飛ばせる。けど、ガッドは直視できない……)
「ッチ、不意打ちは失敗か。うまく曲げられたと思ったんだけどなァッ!」
再び目の前の霧が裂ける。
「危なっ……」
体を曲げて、うまく回避をする。
しかし、右腕から血が吹き出す。
(いっ……ま、曲がってきた……!?)
「おっと、今度はヒットしたようだなァッ!」
攻撃で滞空が不安定になり、落下していく。
(ま、まずい……!)
「トドメだッァ!ガッドォォォォッ!」
目の前の霧が大きく裂ける。
「回転魔法……!」
ネオンの声が響くと同時に、リドーの放った魔力が軌道を変えて霧を裂きながら闇に消えていく。
「ッチ、邪魔しやがってェッ……!」
「き、軌道を変えられるということは……魔力の斬撃。私のロールでも、軌道を変えられる……!」
「ナイスネオン!」
杖を地面に構えて、霧の中に微かに見えるリドーに標準を合わせる。
「爆破魔法!」
大爆発と共に、辺りを覆っていた霧を吹き飛ばす。
「さて、第二ラウンドへと行きますか〜!」
――第88話へ続く。




