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初恋強盗  作者: 御神大河
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いつもと違う図書室

「鏡夜ー!」


 今日も雷歌先輩は元気がいい。

 まるで、周りの連中に自分の存在を誇示するように、大きな声でオレの名前を呼ぶ。

 結局、オレの席に来るのにだ。

 ただ、オレに会いに顔を出す雷歌先輩にクラスの連中も慣れてきたようだ。

 もう教室に雷歌先輩が来ても特に誰も気にしていない。

 そして、風歌先輩は体育祭のリハーサル以降、オレの教室には一度も顔を見せていない。


「またですか?」

「なに?迷惑って言ってるそれ?」

「そうじゃないっすけど……オレ以外に友人いないんすか?」

「え、いるけど」


 そんなあっさり。

 オレが詞にこんなこと言われたら、動揺から冷や汗たらしながらどもるの確定だぞ。

 これが人間関係強者か……。


「応援合戦、紅組は順調なんですか?」

「当然。度肝抜かせてあげるわ!」

「楽しみにしてます」

「じゃあ、また後でね!」


 雷歌先輩との会話は他愛のないものばかりだ。


『ちょっと!雷歌先輩攻略するんじゃないの?ずっと地味な会話してるだけじゃない!』

「いいんだよ。

 雷歌先輩がこちらを堕とそうとしている以上、オレの方から好意がある素振りを見せるわけにはいかない。

 向こうが攻略完了だと思い込み、興味が失せかねないからな」

『でも今のままじゃ単なる気の許せる知り合い止まりでしょ?』

「まあな」


 そもそもオレの予定では、雷歌先輩が積極的にオレを堕としに来たところにカウンターをお見舞いするつもりだったんだ。

 なんせ最初の情報では雷歌先輩は狙った獲物は百発百中で堕としてるって話だったからな。攻略の参考になるかもしれないと結構期待もしていた。

 それが蓋を開けてみれば何のことはない。

 定期的に会いに来て、周囲に自分の獲物であると主張するものの、その後は特段なにもしない。相手が勝手に惚れるのを待つシステムだ。

 今までの男これで全員陥落とは……まぁ、美人だしこれで十分なんだろう。

 オレにとってはなんの参考にもならん。

 そんなこんなしているうちに、オレと雷歌先輩は学校でも有名な仲良し先輩後輩コンビとなっていた。

 最初のころは恨めしそうにオレを見ていた圷も、今やオレが雷歌先輩と会話するのになんとも思っていない様子だ。

 ただ、攻略完了と思われてはいけない以上、こちらから動くわけにはいかねーよな……。

 こりゃ、長期戦になりそうだ。


「……めんどくせ」



 放課後、オレはいつも通り図書室へと転がり込む。

 おや?

 今日はいつもと図書室の様子が違う。

 いつもは陰浦しかいないのに、やけに人が多く、普段は静かな図書室がやけに騒々しい。

 周囲を見て見ると、段ボールに入った大量の本の山。

 新しく本が入荷したから模様替えとか?

 ってことは、ここにいる人たちは図書委員か。陰浦以外の図書委員初めて見たな。

 図書室に入ったはいいが足が完全に止まってしまっているオレに向こうも気付き、ビクンと肩を跳ねさせる。

 まぁ、そうよね。学校で有名な不良が図書室に来るの意味わかんないもんな。


「あー、えっと……お取込み中ですかね?失礼しました……」

「あら!図書室使うの?私たちは無視して自由に利用していいわよ!」


 図書委員の先輩だろうか?

 随分とパッキとした人だな。迷いなくため口を放ってきたということは三年生なのかな?


「いや、大丈……」

「ほら!利用者が来たからそこの机の周りの本退けて!」


 おい!

 そんなことしたらそこに座るしかなくなるだろ!!


「狭いし、ちょっとバタバタしてるけど気にしなくていいからね!」

「あ、はい……」


 完全に退路がなくなった。

 しょうがない、座るか……。

 オレは座ると普段通りゲームをプレイする──が、居心地が悪い。

 周りが必死に仕事をしてる最中に、一人座ってゲームはちょっと……いや、この状況じゃ図書室に相応しい読書であったとしても普通に気まずいだろ……。

 はあ~。


「あの~よければ手伝いましょうか?」

「ほんと!?ありがと!実は人手が足りてなかったんだー!助かるよ!!」


 おい、1ミリも遠慮する気なかったけど?

 もしかしてこれが狙いで図書室に残らせた!?ハメられたのか!?

 まぁ、いい。

 陰浦と周りの評価を稼ぐとしよう。


「なにすればいいですか?」

「君、背高いし、人手が足りなそうな高いところを頼むよ」

「了解です」


 オレは段ボールから本を取り出し、棚の上の空いてるところに本を並べようとする。


「そ…そこ……」

「ん?」


 オレの後ろで陰浦が睨んでいる。

 なに!?オレ怒られるようなことした!?


「なに……?」

「……」

「……」

『ちょっと!二人とも目つき悪すぎて睨み合ってるみたいになってるわよ!』


 まじ!?──えっとーえっとー笑顔笑顔笑顔!!

 オレはトーカに注意され、にこやかな笑顔をつくる。

 すると陰浦はオレから目線を外し、去って行ってしまう。

 うぉぉぉぉぉぉぉぉおおおおおおおおおおおおおおおお!!失敗したー!

 完全にオレのしょうもない笑顔見て去っていったよな!!恥ずかしいぃぃぃぃぃいいいいいいいい!!!

 オレが膝をつき本棚に手をかけ悶絶していると、ちょんちょんと肩を叩かれる。


「大…丈夫……?」

「え?ああ、平気平気」


 戻ってきてくれた?

 陰浦はオレにスッと紙を差し出してくる。

 手紙?なんだろ?


 ”本を置く場所が違います。それは歴史の資料書なので一番下の棚です。”


 なるほど。


「そうなんだね。じゃあこれは?」


 オレが質問すると、陰浦はペンを走らせ始める。

 効率悪ッ!

 というか、話すの苦手なのか?

 さっき喋ってたし、声を出せないってわけじゃなさそうだけど……。

 オレは再び紙を受け取る。


 ”その本は一番奥の4段目です。”

「ありがと!」

『これものすごい時間かかるんじゃない?』


 オレもそう思う。

 オレは奥の棚へ本をしまう。


『鏡夜!陰浦さんが!?』


 トーカの声に振り替える。

 すると、台に乗っているにもかかわらず、フラフラとつま先立ちをしている陰浦の姿がオレの目に飛び込んでくる。

 おい、それ危ないだろ!

 陰浦は効率を優先したのか、片腕に本を抱きかかえもう片方の手で一番上の棚に本をしまおうとしている。

 バランスを崩し、数秒後に来るであろう衝撃に耐えようと身体を硬直させる陰浦をオレは包み込むように支える。

 トーカのおかげで余裕を持って間に合ったな。


「ここでいいの?」


 オレは陰浦の持っていた本を一番上の棚へとしまう。

 ふー。これだと日が暮れるな。

 陰浦も危なっかしいし。


「ねえ、陰浦さん。オレどこに本を置けばいいかわかってないからさ、よかったら奥の一番上の棚から順番に段ボールから出してくれない?そしたらオレがしまってくから、共同作業でいこう!」

「あぅ……あッ……」


 陰浦はコクリと頷き、段ボールから本を出し始める。

 速いな、つーか一切迷いがない。なにが届いてどこにしまうか完璧に把握してんのか?

 オレは陰浦のスピードに負けないようにサクサクと本を並べてゆく。

 オレと陰浦の作業速度が上がったことで、段ボールに入っていた本は見る見る片付いていった。

 思ったより早く終わったな!


「いや~、助かったよ!君、不良で有名な子だろ?全然いい子じゃないか!?」

「そう思っていただけたんならよかったです」

『鏡夜、時間いいの?』


 おっと、そうだった。


「じゃあオレ、体育祭実行委員の方に行かないとなんでこれで」

「そうなのか!ありがとう!」

「はい」


 オレが図書室から退室しようとすると陰浦に呼び止められる。

 な、なんだ!?

 睨まれてる?オレ、なんか陰浦を怒らせるようなことをしたのだろうか?とりあえず、謝った方がいい?

 いやでも、何が悪いのかもわかってない奴の謝罪はより相手を不快にする危険が……。


「あッ!……その~……」

「はい!」

「……………………ありがと」

「──!?どういたしまして!」


 オレは図書室を後にする。

 図書室で英気を養うことはできなかったが、いつもお世話になってるし、まぁいいか。

 それに陰浦とも初めて話せたしな!

また読んでいただきありがとうございます!

『初恋強盗』の37話です!!

今回は図書委員のお手伝い回!!

美人が頻繫に通ってくれるだけで、意識してしまうは致し方なし!

そして、陰浦栞との初会話!!

次回は風歌先輩との練習に急展開が!?お楽しみに!


忌憚ない批評・感想いただけると嬉しいです。

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