依頼は大満足
「はえぇ。これがクリスタルなのね」
オリーブが感心して言った。
一見してただの水晶にしか見えないが、よく確かめれば非常に多くの魔素を内包していることが分かる。
珍しいものだ、貴重な物だ。
――欲しい。オリーブは素直にそう思った。
「こ、これがあれば一生遊んで暮らせますよね……?」
同じことを思っていたエリーが発言した。最も、オリーブとは異なる観点ではあるが。
クリスタルを依頼主がひょいと持ち上げた。2人の視線がクリスタルを追う。
彼は笑って言った。
「ははは、上手くやってくれた君たちにご褒美はあげたいけど、流石にこれは無理かな」
でも、と彼は続けた。
「他の物ならあげよう。ほら、これで好きな物を買っておいで」
勿論、これは報酬とは別だと彼は告げ、一般的には大金であろう金額を2人に手渡した。
2人は黄色い歓声をあげ、軽いお礼の後すぐさま街に繰り出した。
1人残ったセシリアにも、彼はお金を握らせる。そしてこう言った。
「あのお方も喜んでいられるよ。次の試練はカルトークルで行われるから、必ず行くんだよ」
*********
ポーラは言った。
「いやあ、見事防衛成功! 良かった良かった」
全くもって白々しかったが、それを否定するものはいない。
依頼主にとってクリスタルは痛手だったが、命に比べれば軽いし、魔物との取引など闇に葬るに限る。
Bランク冒険者にとっても、失敗は報酬が無くなるし評価も下がる。上手くいったことに出来るのなら諸手を挙げて賛成できる。事実はさして重要でもなかった。
(ま、Aランク冒険者が負けたかもってのは驚きだけど)
Aランクを神格化し過ぎていたのかしらん、とマティルダは呑気に考えた。
「皆様、報酬はこちらになります」
執事がカートに載っていた布を取り払った。
流石は貴族な大金だ。
「それと、ライオネル様にはこれを。白魔導士への紹介状となります」
「え? こ、これはご丁寧に」
ライオネルは恐縮しながらも受け取った。
この依頼主はかなり当たりだ。アフターケアまでしてくれる人など早々いない。
彼ライオネルは気絶後程なく目覚めたが、頭を強かに打ち付けていた。
頭の怪我はまずい。数日後ポックリ亡くなっていることも珍しくない。
治療ができるならそれに越したことはなかった。
2人は大満足で帰路に就いた。
彼らが部屋を出てしばらく経った後、ポーラが口を開いた。
「私はいらないわ。半端な仕事で受け取れないものね」
しかし、と主人は否定した。
解決はしており、わざわざご足労していただけたのだからと。
「ああ、それは違うよ?」
ポーラはそれも否定する。
「私がこれを受けたのは、単に道中にあったからだよ。いわばついでね」
ポーラはうーんと悩んだ。守秘義務があった気もするが、別にいいかと言葉を続けた。
「魔王軍が動き出したのさ。私はその対策として、これからカルトークルに向かうんだ」
あ、これは秘密ね、と。申し訳程度にポーラは釘を刺した。
*********
「ええ、白い髪の女の子と、全身緑の怪しい女です」
「あー、そんな奴が前に来たような気がするなぁ」
ダブリスに着いた俺はセシリア、オリーブを探した。
「じゃあ、ピンク髪のおっぱいでかいシスターは?」
「知らないなあ。ところで参考までになんだが、おっぱいはどれぐらいでかいんだ?」
アルバータも居ない、と。
アルバータはともかく、2人はもう旅立ったのだろう。堪え性のない2人だから容易に想像できる。
「ああ、君」
と、横から声を掛けられる。
その男は槍を持ち鎧に身を包んだ――いわゆる警邏の人間だった。
「君が今話した2人組についてなんだが、我々も探していてね」
「はあ、どのようなご用件で?」
「それが貴族邸への放火容疑が」
「――――は?」
「なあ、おっぱいは?」
……あの2人は一体何をやらかしたのだろう?
こういう時はあれだ。他人のふりをしよう。
「いや、俺も詳しくは。道中会った冒険者に探してくれと頼まれただけなんだ」
「そうなのか。ところでもう1人の、とある部位が特徴の女性は?」
「そっちは俺の知り合いだな」
「して、大きさは?」
「どのくらいなんだ?」
牛のようだ、と俺は答えた。




