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暗黒騎士だけど勇者目指してます!  作者: シドなんとか
シーフ・オア・アサシン編
24/45

雑な依頼

「暗殺依頼? また物騒ね」

「はい、しかし確かな依頼です。まあ、物がものですので正式な依頼ではありませんが」


 自動小銃を肩にかけた少女が言った。

 彼女はセシリアらと同じ冒険者であり、ネイチャラントでは存在しない、銃を主武装とする『ガンナー』クラスの人間だ。


 食堂にて発見したオリーブが物珍しがって勝手に隣に座り、戸惑う彼女に根掘り葉掘り質問したのだ。

 そして今は冒険者らしく金目の話をしていた。


 そんな中飛び出して来たのが暗殺依頼である。


「胡散臭いなあ。セシリアはどう思うよ?」


 セシリアは特殊だ。

 意識か無意識かは今の段階では不明だが、彼女の行く先々には事件が起きる。


 故にオリーブは彼女の反応を伺う。


 セシリアは、「良いと思うよ」と、いつもの何も考えていないような返事をした。


(……あたし、間違ってないよね)


 あまりにもな反応にオリーブは不安に駆られるが、やはり初志貫徹を目指し、セシリアの意見を尊重することとした。


「提案した私が言うのも何ですが、本当に良いんです?」


 投げやりっぷりに少女も引いた態度だが、オリーブは強く頷いた。


「ええ、ええ。その依頼に1枚噛ませて頂戴な」


 少女の名前を言おうとして、そういえば自己紹介すら済ませていないことに気が付いた。


「あ、私はエリーです。オリーブさんであってますよね?」


 一夜にして有名になりましたねと、エリーは言った。


 オリーブは少し驚きながらも、溜息と同時に同意した。


 昨日、昇格試験を終えてからやたらめったら周りが騒がしかった。

 あまりにもウザかったので、ちょっとした魔法を見せてやり、そのかいもあり今日は遠回しに見られるだけだったのだ。


 ちなみに、今も彼女たちの会話に聞き耳を立てているものは大勢いる。

 が、彼女達の声が外に漏れることはない。オリーブが魔法により音を遮断しているからだ。


「詳しい話は私じゃ無理ですので、場所移していいですか?」

「あ、待った」


 オリーブは魔法を解き言った。


「店員さーん、このパフェってのくださーい!」

「あ、ケーキおかわりお願いしまーす!」


 セシリアが便乗する。

 エリーはこの人達誘ってよかったのかと不安に思った。




 *********




 街を見渡せるいい立地だ。町長を差し置いて一等地に居を構えるこの屋敷の主人は、さぞや金持ちなのだろう。


 待合室にてティーカップを傾けながら、Bランク冒険者ライオネル・ホアは考えた。


「警備に冒険者雇うだなんて豪胆だよねぇ」


 それとも、よっぽどまずい状況なのかな、と。ソファの弾力を楽しみながら、彼の対面に座るマティルダ・クロウが言った。獲物を狙う肉食獣のような鋭い視線だ。口元の獰猛な笑みを誤魔化そうともしない。


 彼女はライオネルと同じBランク冒険者で、知らぬ中ではない。同じ依頼を幾度も受け、その実力は信頼できる。だが彼は喋るのが苦手で、マティルダは大好きだった。早く誰か来てくれないものかと彼は祈った。


「お待たせいたしました」


 彼の祈りは神に届いた。いかにも執事らしい男が部屋へと入って来たのだ。


 執事は部屋を見渡し、僅かに唸った。ほんの一瞬のことだ。注視していなければ見逃していただろう。


「まだ――」

「やあ、悪いね遅刻しちゃったよ」


 執事が何事か言い終える前に、彼の背後から能天気な声が被さった。

 執事はさぞ驚いただろうに、態度に表すことなく謝罪し体をどけた。

 声の主が部屋へと入る。


 その人物に、ライオネルだけでなく、マティルダさえ目を見開く。


「こんにちは、一緒に依頼を受けるポーラだよ。知っていたかな?」


 知らない訳がない。彼女は、世界に5人にしかいない冒険者の頂点。

『鷹の目』の異名を持つAランク冒険者なのだから。


「それでは本依頼について説明致します」


 全員が席に着いたところで、執事から説明が入る。

 依頼表には館の警護としか記されていなかったが、依頼を受領してから何故か呼び出されたのだ。依頼自体はCランク冒険者も多く受けていたが、呼び出されたのはBランク冒険者の2人と、ポーラだけだ。


 説明が必要なのか。これはいよいよきな臭い。そもAランク冒険者が出張るなど、騎士団クラスの難事ではないか。ライオネルは早々に帰りたくなった。


「事の起こりは、旦那様に脅迫状が届いたことです」


 執事は懐から1通に手紙を取り出し机に置いた。

 果たして読んでいいものか。目線で訴えると、執事は「どうぞお読みください」と言った。


 代表してポーラが手に取り読み上げる。


「『次の満月の夜、死神が貴殿の前に現れる。その者は命を求めるであろう。

 だが案ずるが良い。死神はクリスタルを魂と見誤る』」


 つまり、クリスタルを寄こせ。でなければ殺すという文面だ。


 ライオネルはまず最初の疑問をぶつける。


「イタズラでは?」


 執事は抑揚に頷いた。


「この手紙は、朝旦那様の枕元に置いてありました。部屋の鍵は旦那様しか持っておらず、何者にも侵入はできません。イタズラと断ずるには、あまりにも手が込んでいる」


 次にマティルダが言った。


「しかし、それなら警察に依頼するべき案件では? 冒険者は何でも屋ではありますが、任せられるなら専門に任せたほうが良いかと」

「いやあ、そうでもないみたいよ」


 返答をしたのは、ポーラだった。

 彼女を紙を灯りに照らしながら言った。


「魔素が異常に染みついてる。よほど意識していない限り、地上でこれだけ着くことはないね。魔界で製紙された可能性が高いよ」


 ――魔界。


 2人は息を呑んだ。それが事実なら、Aランク冒険者が出張るのも納得だ。確証がなければ騎士団も動かない。

 しかも相手が魔物であるのなら、クリスタルを差し出すのは取引に当たり、極刑は免れない。


「それで、俺達にその話をしたのは」

「ええ、Cランク以下の方には警備の増員をお願い致しますが、あなた方には死神とやらの対策を考えていただきたい」


 魔物退治ならば専門でしょうと。執事は挑戦的に締めくくった。




 *********




「ははは、暗殺というのは間違いだよ。ただの脅し文句さ」

「なーんだ、そうだったんですね」


 はははとオリーブと依頼主は笑いあう。

 脅迫も犯罪です。


 セシリア、オリーブ、エリーの姦し3人娘は依頼主の元へと行った。

 そこで暗殺というのは間違いであることを知らされる。


「ま、脅迫が効かなかったら殺すんだけどね」

「そりゃそうだ。舐められちゃあアカン」


 はははとオリーブ、依頼主の2人は笑いあった。

 何だこいつらとエリーはドン引きした。


「それじゃあ、詳細を説明しちゃおうかな」


 依頼主の優男はコホンと喉を整え言った。


「基本は潜入任務だね。君たちには館の主と接触してもらい、クリスタルを受け取る。渡さなければさくっと殺ってもらいたい」


 依頼主は窓の外、ひと際大きな屋敷を指差し言った。


「勿論、可能な限りのバックアップはする。Cランク冒険者を何人か雇って、陽動にでも使おうかな」


 今思いついたように言った。

 エリーはあれ、私Cランク冒険者だけど、ここにいて良かったのかなと思った。


 オリーブは訝しげに口を開いた。


「まるで話を通してるみたいな言い方だけど」

「ああ、脅迫状を届けてあるよ。警備依頼が出ていたから、本気にしてもらえたみたいだね」

「難易度が上がってる……」


 はははと依頼主は笑った。今度はオリーブは笑わなかった。


「期待しているよ、大型新人君。何か必要なものがあれば言ってくれ。何でも用意するから」


 どうやら作戦は丸投げらしい。エリーとオリーブは不安に駆られた。

 セシリアは依頼主をじぃっと、感情を感じさせない瞳で見つめていた。

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