決意を胸に 6
「それでね、確かその時は私がお嫁さん役だったの。だから、タカ君は私が一番好きって言ってくれた。でも、それを聞いた翼ちゃんが怒っちゃってね。タカ君と喧嘩しちゃったんだよ」
「え、あ……そ、そうだったか」
「うん。澪ちゃんもいつもなら翼ちゃんを止めてくれるはずなのに、その時は止めてあげなかった。もちろん、杏ちゃんもね。その時私気付いたんだ。皆、タカ君のお嫁さんになりたいんだな、って」
夢は物憂げな瞳で僕を見る。
僕は何も言えなかった。
「私ね、思うんだよ。あの時は喧嘩で済んだけど、もし、仮に、今、誰かが本気でタカ君のお嫁さんになろうとしたら……喧嘩よりもっと酷いことが起こるんじゃないか、って」
そう言われて僕は背筋に冷たいものを思い出す。
喧嘩どころかの騒ぎではない。
杏も、翼も、澪も、それぞれがそれぞれ喧嘩では済まないことを僕にやってきた。
それはもちろん、最初の夢もだが。
夢はそこまで言って僕を見る。
「実は……私はそれをやろうとしてたんだよね」
妙に反響するように夢の言葉が耳に残る。
本来ならば明日、僕は夢に告白されるはずだったのだ。
そして、そのまま行けばおそらく、夢自身に殺される。
「ゆ、夢……」
「たぶん、皆もそうだと思うよ。タカ君のことが好きでたまらないからね。本当なら自分だけの物にしたいと思っているんだと思う。幼馴染の中で自分だけを見ていて欲しいと思っているだろうし、そのためになら手段を選ばないってくらいに」
何もいえなかった。
今まで見てきた、経験してきた四ヶ月のループがそれを何よりも証明している。
夢はそれを見ていないはずなのに、見てきた僕以上に正確に述べてみせた。
「……で、話を戻すけど、タカ君、翼ちゃんと喧嘩してたとき、なんて言ったか覚えている?」
「え? え、えっと……」
夢はもう一度僕に優しく微笑みかけた。
「『僕は、皆のことが好きだ』ってね」
そういわれてはっと気付く。
そういえばそんなことはあった。
僕は言っていた。翼と喧嘩していたときに、半分やけになって僕はそういったのだ。
夢はようやく思い出したか、という風に笑いながら僕を見る。
「それで、皆、タカ君がそういうなら仕方ない、ってことで納得した。みんなタカ君のことが好きだからね。それ以上のことは言えなかったんだよ」
そのまま夢は僕の方にゆっくりと近付いてくる。
「だから、さっきの言葉を聞いて、ああ、やっぱりタカ君は変わっていないなぁ、って思ったよ」
「そ、そうか……」
「最も、タカ君本人は昔のこと、忘れていたみたいだけどね」
なんというか……小さい頃の僕の方が判断力に優れていたというか……
最初から答えはわかっていたというわけか。




