決意を胸に 4
「……ベンチにでも座ろうか」
僕と夢は近くの公園まで行くと、ベンチに隣り合って座る。
これは……翼との一件を思い出した。
思えば、あの時から僕は逃げていた気がする。
ずっと、怖いことから逃げていて、結果的に、もっと怖い結果に巻き込まれてきた。
だからこそ、ここは勇気を出していかなければいけない。
たとえ、怖い結果に結びついたとしても、あえてここで踏み出すのだ。
「え、えっと、そ、それじゃ、夢」
「う、うん。何?」
「夢は……僕のこと、好き?」
あまりにも唐突すぎる展開。夢はびっくりして僕を見る。
「え、あ、あ……た、タカ君……な、何いって……」
「ぼ、僕は……夢のことが好きだよ」
夢は顔を真っ赤にして僕を見る。
きっと、自分が最も言って欲しかったことを言われたのだ。
今の夢は嬉しいどころか、何がなにやらわからないはずである。
「あ、あ……た、タカ君」
「……だ、だけど……僕は杏のことも好きだ」
僕は間髪いれずにそう言った。
「……え?」
一瞬にして夢の表情が変わる。
……いや、正確には変わった気がしたのだ。
表情は見なかった。見てしまったら、きっと僕は脅えてしまう。
その表情はきっと、僕を殺す直前に夢が見せた表情、そして、同じように幼馴染それぞれが僕に見せた表情と重なるのだろう。
僕は夢の顔を見ないようにしながら俯く。
「それって……どういうこと?」
夢の言葉には既に抑揚がない。
落ち着け。ここで怖がってはダメだ。
「……杏だけじゃない。翼も。澪も。僕は好きだ」
「……タカ君。私、タカ君が何を言っているか、わからないよ?」
僕は目を瞑った。
……いや、ここではっきりと言わなければいけないのだ。僕はそのまま顔を上げる。
夢が真っ黒な瞳で僕を見ていた。
だが、僕はその瞳を真っ直ぐに見つめたまま先を続ける。
「だからね! 僕は……選べないんだよ! 選ぶことなんて出来ないんだ!」
「……え?」
「わかっているさ! 僕が最低な人間だってことは! でも……無理なんだ! 僕にとっては四人とも僕にとって最高の幼馴染で……大事な幼馴染なんだ! だ、だから……」
夢はキョトンとした表情で僕を見る。
それでも僕は夢の顔を見つめたままで口を開く。
「……だから『今は』……選べない」
「……『今は』?」
「ああ……さすがに最低の僕でも、いつか、そういう時が来るってことはわかっている。でも『今は』無理なんだ。仮に幼馴染の誰かから告白されたら、僕はそのまま流れでその子と付き合っちゃうと思う……そりゃあ、そうだよね。僕は皆のことが好きなんだ。誰とだって付き合いたいって言われれば付き合っちゃうよ」
無言のまま、責めるような目つきをするわけでもなく、夢は僕を見ている。
「でも、それじゃ、ダメなんだ」
ここだけははっきりと、夢にも、そしてここにいない三人の幼馴染にも聞こえるように言った。
「その時が来たら……僕自身が、僕の選択で、選ぶ。覚悟を決めて、その一人と付き合う。きっと、その一人は幼馴染の誰か一人だと思う。夢か、杏か、翼か、澪か……誰かはわからないけど、僕は、その一人を幼馴染の誰よりも……いや、世界の誰よりも愛するよ」
それが、僕の導き出した結論だった。




