決意を胸に 2
「朝っぱらからそんな風に惚気られているのを見てると、こっちとしてはお腹いっぱいなのよね」
「あ、あのねぇ、杏……僕達は惚気てなんかいません」
「あーあー、そうよね。毎日家に迎えに来てくれている夢のことが、幼馴染四人の中で一番大事にするのは当たり前よね」
杏はわざとらしく、嫌みたらっしくそういう。
僕は特にそれに怯むことなく杏のことを見る。
僕がとくに怯む様子もないので、杏は少し意外だったのか、予想外だという表情で僕を見た。
「な、何よ。文句でもあるの?」
「いや、文句はないよ。そりゃあ、毎日家に迎えに来てくれる夢のことは大事に想っている」
「た、タカ君……」
夢が顔を紅くする。
それとは対照的に杏は少し不満そうに顔を歪めた。
もちろん、その反応が来るとわかっていて僕は次の言葉を繋ぐ。
「でもね。だからといって夢のことだけ大事に思っているわけじゃないよ。僕は杏も、他の四人の幼馴染も、夢と同じくらいに大事に想っているつもりだ」
少しの間、沈黙が流れる。夢も杏も茫然とした顔で僕を見ていた。
僕は僕でその沈黙に動じないまま、杏のことを見ていた。
「……ぷっ」
しばらくして杏が噴き出した。
「ふふふ……あ、あはは……た、隆哉……何格好つけてんのよ……あーあー……最近変だと思ったけど……ま、まさか……ここまでとはね」
「……え? だ、ダメかな?」
杏はお腹を押さえて笑った後、見下すような顔で僕を見る。
「別に、ダメじゃないわよ。ただね、どんなに格好つけても、隆哉は隆哉。自分の身の程を知りなさい、ってことよ」
「あ、あはは……」
相変わらず杏らしい、厳しい物言いである。
「ほら、さっさと行くわよ! 私まで遅刻しちゃうじゃない!」
「お、おい! 杏、待てよ!」
杏はそのまま走りだしてしまった。
「ばーか! アンタは夢と仲良く後から遅刻してきなさいよ!」
杏はそのまま走って行ってしまった。
「あーあー……全く、杏の奴はしょうがないよなぁ……」
苦笑いしながら夢に僕は振り向く。
と、夢は僕のことを見つめていた。
その瞳は驚いているようでも、それでいて感心しているようにも見えた。
「あ……ど、どうしたの? 夢?」
「え……う、ううん。ただ、タカ君……格好いいなぁ、って」
そう言われて僕は頬が紅潮するのを感じる。
「な、なんで?」
「だって、うん……その……ちゃんと、あの時、言ってくれた通りにしてくれているんだなぁ、って」
「あ、ああ……」
そう言われて僕は思い出す。
あの日。つまり、夢が告白してきた日のことを。




