決意を胸に 1
「タカ君!」
窓の外から声が聞こえる。
僕は食パンを咥えたまま玄関の扉を開けた。
「ご、ごめん……夢」
「もう! 遅いよ。早くしないと遅刻しちゃうよ?」
「あ、ああ。わかっているって」
眉間に皺を寄せながらも、笑顔で僕を見る女の子……
森崎夢はいつものようにそこに立っていてくれた。
「大丈夫なの? 忘れ物ない?」
「あ、ああ。たぶん」
「たぶんって……もう、タカ君はしょうがないなぁ……」
そう言いながらも夢はなぜか嬉しそうに僕のことを見ている。
僕はそんな夢のことを見ながらなぜか酷く安心した。
しばらく学校に向かって二人きりで歩く。
「あー……ね、ねぇ、タカ君」
「ん? なんだ?」
「きょ、今日は……タカ君のお家に夕ご飯、作りに行ってもいいかな?」
「え? あー……すまん。今日はちょっと用事があるからな。一人でなんとかするよ」
「え……で、でもタカ君、今日だって、私が来なきゃ、もしかしたら遅刻してたかもしれないのに――」
と、夢が心配そうにそう言った。
確かに、夢が言うように、夢が迎えにきてくれなかったら、僕は今日遅刻していたかもしれない。
そう言われても、僕は夢の目をしっかりと見て言う。
「……夢。大丈夫だよ。言ったでしょ? 僕はちゃんと、一人でやるんだ、って」
「で、でも……」
「もちろん、夢には感謝しているよ。だけど、夢に頼りきりってわけにはいかない、って僕は思ったんだ。だから……」
夢はそれでも少し不満そうな顔をしている。
僕はそんな夢に優しく笑いかける。
「夢、別に僕の家に来ちゃダメって言っているわけじゃないんだ。だから、そんな不安そうな顔、しないでよ」
「あ……た、タカ君が、そう言うなら……」
「あら、アンタ達、まーた、朝から仲良し夫婦やってんの?」
そんな声が聞こえて僕と夢は思わず振り返る。
「なーにが、自分のことは自分でできる、よ。隆哉みたいなヤツがそんなこと言っても全然説得力ないのよ」
「あ、あはは……杏……」
そこにいたのは可愛らしいツインテールの少女、逢沢杏だった。




