最後の選択 6
そして、ついに三週間が経過した。
段々自分の中で生に対する実感がなくなってきていた。
自分が起きているのかも、寝ているのかもわからない。
ただそこにいる。僕という存在と他を分ける存在の区別がなくなってきていた。
どういうことかといえば、僕自身は今倉庫の隅に置かれているがらくたと大して変わらない存在だと思うようになっていたのだ。
要するに、僕は僕を、僕自身として認識できなくなっていたのである。
「おはようございまーす。隆哉くーん」
そして、毎朝、僕の所にやってくる、誰か。
その可愛い女の子は、いつもニコニコしていて可愛らしい。
優しげな笑顔で僕に微笑みかけてくる。
「あらあら。隆哉君、なんだかやつれていますね」
座りこんだままで僕は彼女を見上げる。
飯も食べている。健康も完全に彼女に管理されている。
だが、この閉塞感たっぷりの状況で健康な精神状態を保っていられるわけもなかった。
「なにか不安でもあるんですか? 私が相談に乗りますよ」
「あ……え、えっと……み……澪」
そうだ。彼女の名前は神林澪。
僕の幼馴染じゃないか。
「はい? なんですか?」
「あ、あ……だ、出して……こ、ここから……出して」
僕は酷く言葉に詰まりながら澪にそう言った。
しかし、澪はその質問には笑顔でニッコリと返す。
「ダメです」
そして、その上で突き放すようにそう言うのだった。
「あ、ああ……うぅ……」
言葉にならないうめき声をあげながら僕は俯いた。
「じゃあ、私、学校行って来ますからね」
「あ……ま、待ってくれ! だ、出してよ! す、好きだ! 澪! 澪が一番好き! 愛してる! もう絶対他の女の子と喋らない! 誰とも会話しない! だ、だから、ここから出してくれぇ!」
澪は満足そうにニッコリと笑った。
そして、僕に背中を向け、扉を開いて行ってしまった。
僕はその後ろ姿をずっと見続けていた。
澪が扉の先にいなくなっても、ずっと。
「……出して……出してよぉ」
そして、しばらくしてから地面に座り込んで、膝を抱えて、泣いた。




