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最後の選択 7

「ふむ、そろそろ、ヤバいのぉ」


 誰かが後ろから声をかけてきた。


 僕は振り返らない。


「おーい、お主。生きておるか?」


「……ふふ。この状態が生きている、っていうならね」


 不健康そうな笑顔を僕は振り返ってそう言った。


 完全に澪に生かされている、と言った方が正しい。何もかもを澪に管理されている。 


 でも、最近ではそれがごく当たり前なことのように思えてきたのだ。


 僕は澪に面倒を見てもらって生きて行くだけの存在。それでいいのだ、と。


 だから、僕は僕自身が人間かあるかどうかさえ、認識することができなくなったのだけれど。


 そして、そんな僕を白髪の美少女が心配そうな、それでいて憐れんでいるような目で見る。


 確かこの子は……ああ。そうだ。


 僕が毎日お参りしていた、小石川神社の神様なんだ。


「なぁ、お主」


「ふふ……な、何?」


 笑いが勝手に口から洩れてきた。


「……お主がどうにかなってしまう前に一つだけ聞いておきたいんじゃが……どうして、お主は来たのじゃ?」


「え?」


「どうして、小石川神社にあの時来たのか聞いておるのじゃ」


「あ、あの時……? あ、ああ」


 その時、既に質問の意図がわからなかった。


 そもそもなんで、今、こんな状況でそんなことを聞くのか、と。


 でも、その時の僕にとってはもうそれはどうでもよかった。


 もはや、そんな思考も満足に行えないほどに、僕の精神はすり減っていたのだから。


「あ、あの時は……遊んでいたんだ。みんなと……かくれんぼだった……かな? そしたら、僕、そのまま……迷っちゃって……そ、それで……僕……あ、あの神社に……あ、あの時は楽しかったなぁ……」


 僕は昔のことを思い出していた。


 あの頃は、みんな優しかった。


 夢も、杏も、翼も、そして、澪も。


 みんなと楽しく僕はかくれんぼをしていて……


「……そうか。たまたま、偶然、というわけじゃな」


「うん……そうそう。そういえば、あの時はさぁ……夢が変なところに隠れちゃって……みんなで手分けして探したんだ……」


「……ふむ、そうか。じゃが、その後何度もワシの下に足を運んだのはなんでじゃ?」


「え……そ、それも、た、たまたまだよ。ただ、日常の習慣というか……それで、かな。特に意味は、なかった、かな……って、っていうか、なんで僕あんなボロ神社に毎日行ったのかな、ね?」


 すると神様はなぜか、ふっと笑みを浮かべた。


 錯乱していた僕も、思わずキョトンとしてしまう。


「意味はない、か。ワシは……嬉しかったんじゃがな。毎月、毎月、欠かさず、あんなオンボロ神社にやってきてくれる殊勝なヤツがいてくれて、な」


「……あ、ああ。そう……」


「もう随分と時間が立ってしまったからの……皆、ワシのことを忘れてしまった。じゃから……たとえ、意味はなくとも、ワシの下にやってきてくれるお主のことをワシは毎月心待ちにしておった。そして、ワシは――」


 すると神様はいきなり僕のことを抱きしめてきた。

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