最後の選択 3
「おい、隆哉。起きるんじゃ」
呼びかける声で僕は目を覚ます。
「……ん……ん?」
「朝じゃよ。起きるんじゃ」
目を擦りながら僕は目を開けた。神様が僕の顔を覗き込んでいた。
「あ、ああ。おはよう。神様」
「その様子じゃと、結局、説得は無駄だったようじゃな」
神様の言葉で僕は思い出す。
澪の狂気に歪んだ瞳。
きっと、もはや、言葉でどうこう言って聞いてくれることもないのだろう。
澪にとっては、僕を監禁することが正しいことだし、それが僕にとってもよいことなのだと、澪も信じている。
つまり、どう頑張っても、澪に対して言葉では説得できないのだ。
「ほぉ。となると、実力行使か? 神林の巫女に一発お見舞いでもして、そのままここから逃走するかの?」
「……それは、ダメだ」
澪を傷つける、とかそういうのはダメだ。
確かに暴力に訴えればもしかしたら、ここから脱出できるかもしれないけど、こんな状況であっても幼馴染である澪を傷つけようなんていう考えは、僕にはできなかった。
「ダメといっても……このままではお主、確実にここで一生を終えることになるぞ?」
「まぁ……そう、かな」
僕が三回目の生き返りを果たした時、確かにここに来るまで誰にも見られなかった。
それはつまり、僕が神林神社に行ったという事実さえ誰も知らないのだということ。
そうなると、僕が失踪してからの足取りは完全にわからない。手がかりゼロということになる。
もしかしたら……
そこまで考えて僕は考えるのをやめた。
そして、大きく溜息をつく。
これは、もしかすると罰なのかもしれない。
何度も四人の幼馴染を傷付け、過ちを繰り返してきたことに対する報いなのだ。
僕はこのままここで一生を終えるのが、僕が償うべき代償なのであって――
「何を考えておるんじゃ、お主は」
そこまで考えると、神様が僕の頭を軽く小突いた。
「え……だ、だって……」
「言ったじゃろう。もし、お主がやり直したければ、そこに落ちているガラス片でもなんでも拾って自刃すればよいのじゃ。それでやり直せるのじゃよ?」
「で、でも、僕には、もう……」
やり直したいと思う相手がいない……
そう言ってしまってはお終いだが、それでも、仮にやり直したとして、四人の幼馴染とまたそういう風なことができるかと聞かれればかなり厳しいものがあるようにも思える。
「……お主はホント、馬鹿じゃのぉ」
呆れたように溜息をつく神様。
そして、僕の顔を覗き込んできた。
今ようやく気付いたが、神様の瞳は美しかった。
曇りひとつない美しさ。先ほどの澪のそれとはまったく違う。
見ているだけで、そのまま吸い込まれてしまいそうな程に、美しい瞳だった。




