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壊れた鳥籠 6

「……ん?」


 ふと目が覚めた。


「……あ、あれ? 僕は……」


「あら? お目覚めですか? 隆哉君?」


 見ると、目の前に制服姿の澪が立っていた。


「あ、あれ? 澪……」


「随分ぐっすり眠っていましたよ? 可愛い寝顔ですね」


 嬉しそうな顔で僕にそう言ってくる澪。


 それよりも僕が気になったのは自分の状況だった。


 ここは……どこだ?


 澪の顔は薄暗い。


 というか、今、僕がいる空間そのものが薄暗いのだ。


 そもそも、僕はあれからどうした?


 確か……澪にこれからどうすればいいのか相談しにいって、それでお茶を飲んで――


 ……ダメだ。そこからが思い出せない。


 と、見ると、澪は制服だ。


 僕が神林神社にやって着たときは巫女服だったはずなのに。


「み、澪。あの……どうして制服なの?」


「え? ああ。もう学校に行くからですよ」


「学校……ちょ、ちょっと待ってよ。だ、だって、僕がここに来た時は確か夕方だったはずじゃ……」


「そうですよ。でも、隆哉君が寝ている間にもうすっかり朝になってしまったんです」


 ……朝だって?


 じゃあ、何か? 僕は今の今までずっと眠っていたっていうことか?


 そう言われてもこんな薄暗い場所では今が何時かも分からなかった。


「では、私は学校に行ってきますね。隆哉君。少し寂しい思いをさせてしまいますが、我慢してくださいね」


 すまなそうな顔をして、澪は僕に背を向ける。


 え? 寂しい思い?


 意味がわからない。どういうことだ?


「ちょ、ちょっと待ってよ、澪。ぼ、僕もそういうことなら学校に――」


 そう言ったときだった。


 僕はそのまま前のめりにずっこける。


「いたた……え……え?」


 地面に打ち付けた身体をさすりながら目を開ける。


「……な、なんだよ、これ」


 見ると、僕の足には鉄製の足枷のようなものが嵌められていた。


 足枷から伸びた鎖は、その先の大きな木の柱に巻きつけられている。


「え、ちょ……は、はぁ!?」


 いくら引っ張ってもビクともしない。


 これじゃあ、動けない。


 まるで、庭にチェーンで繋がれた犬のようだ。


 誰だ? 誰がこんなことを……


「み、澪。ちょ、ちょっと、これ……」


 僕は澪の方を見た。


 そして、もう一度驚く。


 澪は嬉しそうに僕を見ている。恍惚とした表情でうっとりと僕を見つめていた。


 その瞬間、僕は理解した。


「あ……み、澪」


 すると澪はゆっくりと僕の近くに寄ってきた。


 そして、ずっこけたままの姿の僕と視線を合わせるためゆっくりとしゃがむ。


「怖がらなくていいんですよ。言ったでしょう? 私がぜーんぶ、面倒みるって」


「み、澪……そ、そんな――」


「やっと隆哉君が私のところに来てくれた……夢ちゃんでも、杏ちゃんでも、翼でもない……私のところに来てくれた……だから、もう離しませんよ? どこにも行かせませんし、誰にも会わせません。だって、隆哉君はもう、私だけのものなんですから……!」


 うっとりと僕を見る澪。


 その瞳はすでに何回も見たことの在るものだった。


 半ば狂気染みた、光を失った瞳。


 他のことが一切目に入らなくなって、何も考えなくなった瞳。


 まるで、そのままその瞳に飲み込まれてしまいそうなくらいに、暗い色の瞳だった。

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