壊れた鳥籠 7
「じゃあ、学校が終わったらすぐに帰ってきます。それまでいい子で待っていてくださいね」
「み、澪……ちょ、ちょっと待ってよ! 澪!」
そのまま澪は笑顔で僕に手を振ると背を向けたまま、進んでいってしまった。
そして、扉のようなものに手をかける。
一瞬、外の光が薄暗い部屋の中に入り込んできたが、すぐにそれは途絶え、再び陰惨な空気が支配する暗黒の空間に僕は取り残されることになった。
僕は身体を起こす。
そして、大きく溜息をついた。
「そんな……澪まで……」
澪なら何かしら僕に助言を与えてくれて、助けてくれる、もしくは力になってくれると思っていた。
それがこれでは力になってくれるどころか、完全に八方塞がりではないか。
僕はゆっくりと周りを見回してみる。
荷物のようなものが置いてあるのを見る限り、どこかの倉庫のようにも思える。
じゃあ、ここから脱出することは――
「無理じゃよ」
と、僕の背後から無慈悲な声が聞こえる。
見ると白髪の美少女が呆れた顔で僕を見ていた。
「ここは完全な密室じゃな。壁も厚いし……脱出はあそこの鉄製の扉からしかできん。じゃが、鎖でつながれたお主はあの扉までは行くことが出来ん。残念じゃが、脱出は不可能じゃ」
「そ、そんな……」
神様はだから言っただろう、といった顔で僕を見る。
「ワシは忠告したはずじゃぞ? 神林の巫女はいかん、と。なのに、お主はワシの忠告を無視して突っ走りおって……」
「だ、だって……まさか澪がこんなことをするなんて……」
「あのなぁ……お主。その考えで既に三回死んでおるのじゃぞ? いい加減学習したらどうじゃ?」
そう言われて僕は凹む。
結局これで証明されてしまったのだ。
夢も、杏も、翼も、そして澪も……僕の四人の幼馴染は全員、僕のことを好きで……
あまりにも好きすぎるのだ。
そして、僕はその誰と付き合っても、碌な目に合わない。
そりゃあ、翼のときとかは完全に僕に落ち度があるわけだけど……それでも、なんだか他の行動をとっても、結果は同じ様なものになった気もするのである。
僕はまた大きく溜息をついた。
「まぁ、そう落ち込むでない、お主」
と、ポンと神様が肩を叩いてきた。
「確かにお主の幼馴染は全員、お主のことが好きすぎるんじゃよな? 結果として今もこのような状況に陥ってしまっている……じゃが、考えてみよ。この状況を」
「……は?」
「可愛いワシと二人きり……というのは悪い話ではないのではないか?」
神様は少し頬を紅くしながら僕を見る。
……何を、言っているんだ?
そりゃあ、確かに目の前の神様は可愛い。
けれど、結局、この縁結びの神様が何者なのかは知れない。
むしろ、そんな奴とこの狭い空間で二人きり、というのは怖いものがあった。
なぜだか知らないけど、実体化もしちゃっているし……
神様は再びモジモジとしながら僕を見る。
「だ、ダメかのぉ?」
「ダメも何も……ここから出られない以上、そうなるよね……」
かといって、ここから出られない以上はこの空間で神様と一緒だ。
それは否応なしに逃れられない現実なのだから。
神様はすると、なぜか嬉しそうに僕に微笑んできた。
なんだか最近の経験のせいで、笑顔の女の子が怖いとさえ思えてくる。
「じゃあ……よろしくの。隆哉」
「はぁ……まぁ」
よくわからないまま僕は返事する。
正直、僕にとって、この空間で神様と一緒に暮らすのはさほど問題ではない。
そりゃあ、少しは恥ずかしいけれど。
むしろ、問題は、これからどうするのか、だった。
「……って、全く思いつかないよ」
そもそも、どうにもならない状況だからこそ、相談しにきたのだ。
なのに、相談しにきて益々どうにもならない状況になってしまっては、どうしようもない。
僕は再び大きな溜息をついたのだった。




