壊れた鳥籠 5
「……今日はここに来るまで、誰かに見られましたか?」
しかし、澪の口から出て来たのは、僕の予想とはまったく異なる言葉だった。
「……え?」
拍子抜けしてしまった僕は、思わず聞き返す。
「ですから、今日はここに来るまでに誰かとお会いしましたか? 例えば、夢ちゃんとか?」
「夢? いや、会ってないけど……」
「杏ちゃんもですか? 翼も?」
「う、うん。会ってないよ」
「そうですか。それは良かったです」
そういって嬉しそうに笑う澪。
な、何が良かったんだろうか?
僕にはよくわからなかった。
「え……で、澪。その……僕の相談の答えについて聞きたいんだけど――」
「隆哉君。確か……ご両親は今長期出張中。すぐには御家に帰ってらっしゃいませんよね?」
と、澪は僕の言葉を途中で遮っていきなりそんなことを言い出した。
「え? あ、ああ。そうだよ。な、なんでそんな話するの?」
「それは、もちろん大事なことですから」
「大事? いや、別に今はそんなこと関係な――」
その時だった。
視界が大きく揺らいだ。
立っていられないほどに、フラフラとした感覚が僕を襲う。
「うふふ。どうしました? 隆哉君」
「な、なんだか……へ、変だな……」
「変? ちっとも変じゃありませんよ。大丈夫です」
澪の言葉が頭の中に響く。
なんだか心地よい気持ちになってきてしまった。
このまま眠ってしまいたいような気分だ。
「おい! お主! おい! しっかりするのじゃ!」
あれ……頭の中からも声が聞こえる……
不味いな……本格的に不味いぞ……
もう呂律も回らない……段々と視界もぼやけてきてしまった。
そんなぼやけた視界の中で、澪は笑っていた。
見たこともないような邪悪な笑みを浮かべて、嬉しそうに僕を見ているのだ。
「ああ。そうでしたね。隆哉君。相談の答え、教えてあげますよ。隆哉君は……私だけのものになればいいんです」
澪がそう言ったのか言わなかったのか……
それさえもわからないうちに僕の意識はそこで途切れた。




