天国から地獄 8
そして、次の日。
「あ! 隆哉様!」
待ち合わせの公園の噴水の前に、あの美少女は立っていた。
前と同じ純白のワンピースを着て。
「あ、ああ。亜由美。お待たせ」
「ええ。ああ、どうしましょう! すごく胸がドキドキしています!」
そういって僕の隣にべったりくっ付く亜由美。
……い、いや。これは友達なんだ。問題ない。僕は翼を裏切ってなんかいない。
「最低じゃな、お主」
空耳が聞こえたが無視した。
「え、えっと……ど、どこ行く?」
「どこでもいいです。隆哉様が行きたい所ならどこでも」
そういわれてしまうと困った。
でも、とりあえず、もしものためにそういう場合行こうと思った場所を考えておいたのだ。
僕と亜由美はとりあえず映画を見た。
「きゃー!」
ちょうどやっていたのがホラー映画だったのが幸いして亜由美は何度も僕に抱きついてきてくれた。
「最低じゃな、お主」
空耳がまた聞こえたがこれも無視した。
「こ、怖かったです……」
「だ、大丈夫?」
「え、ええ……うふふ。隆哉様がいるから平気です」
反則的な笑顔を僕に向けて亜由美は微笑んだ。
その後は亜由美が服を見たいと言ったので、ブティックに入った。
「隆哉様! この服、どうでしょうか?」
「ああ。よく似合っているよ」
一々試着しては僕に見せてくる亜由美。
スタイルのいい身体は何を来ても似合っていた。
「その……隆哉様が一番いいと思うのは?」
「え? あ、ああ……ど、どれも似合っているから難しいな」
「うふふ、隆哉様、優柔不断ですね」
そういって僕と亜由美は二人で笑い合った。
ああ、なんてすばらしい瞬間なんだろう。これ以上の幸せはたぶんあり得ない。
僕は満たされた最高に気分だった。
「……最低じゃな、お主」
どんどん空耳の声のトーンが低くなっていくけれど、僕はそれも無視していた。
そして、僕と亜由美は近くのレストランに入ることにした。
「あー! 本当に楽しいです!」
満面の笑みでそういう亜由美。
僕も同じ気分だった。
なんというか……亜由美がストーカーであるかもしれないことを完全に忘れている。
まるで昔からの幼馴染みたいなのだ。
亜由美と話しているとそんな印象さえ受ける。
「私、今日一日、本当に幸せでした! 隆哉様とこんな風にデー……お、お出かけすることができて」
「あ、あはは……そういってくれると嬉しいよ」
デー…?
今、デー……って……
まさかデートって言おうとしたんじゃないよな?
い、いや、違う。これはデートじゃないんだ。デートじゃない。
断じてそんな――
「見苦しいぞ、お主」
さすがにもはや空耳の域で無視しておくことは出来なかった。
神様の無情な声が頭に響いた。
そうだ……これは間違いなく、デートじゃないか……




