天国から地獄 2
「つ、付き合っているに決まっているだろ! な、なんでそんな……」
「あ、あ……ご、ごめん……」
慌てる夢。そしてそのままキッチンに戻る。
まさか夢にこんなこと聞かれるなんて……
い、いやいや。慌てる必要はない。大丈夫だ。僕と翼が付き合っているという事実は変わらない。
だから、問題はないんだ。焦る必要もない。
僕は大きく深呼吸する。
「あはは。ほれ、見たことか。だれが見たってそうなるに決まっておる」
馬鹿にした声で神様が僕に語りかける。
「う、うるさい。僕は、翼と付き合っているんだ。そ、それは紛れもない事実だ」
「そうじゃな。だが、お主、そろそろ気付いた方がよいぞ。確かに、お主の考えはよかった。こうすれば夢や杏に殺されることもないし、誰かと結びついたことになる。ワシが科した死のループからも開放される……じゃが、今のお主がやっていることは最低極まりないぞ?」
「さ、最低? 何が?」
「うふふ。それがわからんようでは……結果は目に見えているの」
「ま、待て! どういうことだよ!?」
僕は慌てる。
あり得ない。
結果が見えているだと? そんなわけあるか。
それはつまり……あれか?
翼が僕のことを?
いやいや。あり得ない。
ない。絶対に。
僕は何度も頭でその可能性を打ち消す。
しかし、見えてくるのは今まで自分が死んできた瞬間。
「た、タカ君?」
「ひっ!?」
思わず僕は椅子から転げ落ちてしまった。
「ど、どうしたの!?」
驚く夢。
死ぬ……殺されるのか? また?
僕は夢を見る。
……落ち着け。今目の前にいるには僕を殺した夢じゃない。
僕の知っている幼馴染の優しい森崎夢だ。
「あ、ああ……すまん。夢」
「だ、大丈夫?」
「ああ。ごめんね。ホントに」
夢の心配そうな顔。
落ち着くんだ……笠木隆哉。何もおそれることはない。
今回はあり得ない。僕は、死なない。
誰かに殺されるなんてことはない。増してや幼馴染に。
僕はそう言い聞かせてなんとか自分を落ち着かせようとしたのだった。




