天国から地獄 3
しかし、運命は残酷だった。
次の日、それはやってきたのだった。
いつものように授業が終わり、僕は家路に着く。夢と一緒に。
もちろん、これはしょうがないのだ。
そもそも、翼とは家の方向が違う。
だから、一緒に帰ることも難しいわけで……
「言い訳じゃな。動かぬ証拠じゃよ。お主と翼が付き合っていない何よりの、な」
僕は神様の声を無視してそのまま昇降口に向かう。
そして靴箱を開けたときだった。
「ん?」
「どうしたの、タカ君? あ」
何かが俺の靴箱から落ちる
それは紙切れ、というか便箋だった。
「こ、これって……ラブレター!?」
夢が目を大きくして僕が手にした便箋を見ている。
どう見ても……そうだ。
僕は手が震えた。
ここに来て……まさかの、新たな火種。
まさか、あの幼馴染四人以外から僕にアプローチする女の子がいたとは。
……あり得ないぞ。
そもそも、僕は生まれてこの方あの幼馴染四人以外の人間とまともに話したことがない。
なのに、どうして僕の下駄箱にラブレターが入っているんだ?
ありえない。
何度頭の中で否定しても目の前の便箋が、それが現実だと示している。
「夢……」
僕は押し出すように夢に声をかける。
「な、何? タカ君?」
「……悪いんだけど、先に帰っていてくれるかな?」
あくまで冷静に、落ち着いて僕はそういった。
さすがの夢もどうやら僕の気持ちを察してくれたらしくそのまま手を振って帰ってくれた。
そりゃあ、そうだろう。この状態でラブレターっていうのは、あり得ないんだから。
僕はとにかく落ち着くことにした。
「……『始めまして、いきなりのお手紙お許し下さい。私はいつもアナタ様を見てまいりました。ですが、もうこの気持ち、見ているだけでは抑え切れません……どうか私と会って下さい。アナタ様の家の近くの公園にて、今夜、お待ちしております』……なんだよ、これ……」
それはあまりにも唐突な内容だった。ラブレター、というよりは……
「すとーかー、というヤツじゃな?」
隣で神様が実体化して覗き込んでいた。
「なっ……い、いきなり出てくるなよ、びっくりするだろ!」
「ああ。すまんすまん。で、どうするのじゃ? それ」
「え? ど、どうする、って……い、行くわけないだろう! こんな……怖すぎるだろ……」
「そうかの? じゃが、手紙を寄越すということはお主のことも知っておるし、お主の家も知っておるし、お主の人間関係も知っておるという――」
「や、やめてくれ! そんなこと言うのは……」
あまりに恐ろしくて僕はその場に座り込んでしまった。
そうだ。それはわかっている。
となると、このストーカーがいつ、僕の家に忍び込んでくるともわからない。
もし、僕が寝ているときにやってきてそのまま僕のことをナイフか何かで一刺しなんてことになれば、今までの努力が全て水の泡である。
思わず神様を見る。
……そうか。結果が見えるというのはこれのことか。
「か、神様……これ、行った方がいいのかな?」
「さぁ? ワシはあくまでお主に機会を与えるだけじゃ。助言までは与えられんよ」
あくまで無関心な表情で神様は言う。
仕方ない……ここは直感だ。
行くしかあるまい。どうせ、行かなかった所で僕の結末が見える。
だとしたら、行った方がいい。
僕はぎゅっとラブレターを握りつぶしたのだった。




