やり直しの世界 4
「翼」
僕は手を振って翼を迎える。
「おお。もう来てたのかよ。まぁ、お前の家の方が近いからな。で、どうした? 何の用だ?」
「あ、ああ。と、とりあえず、座ってよ」
翼も不思議そうな顔で僕を見る。
そもそもいきなり呼び出しているだけでも相当不審なのだ。
翼としては僕が何を考えているのか知りたいだろう。
かといって僕も神様が言ったようなこと……つまり、翼と恋仲になるということをいきなり切り出せるわけでもない。
心の準備が必要なのだ。
「あー……な、何か買ってこようか?」
「はぁ? なんだよ。お前、奢ってくれるのか?」
「ま、まぁ……呼び出しちゃったわけだし。いいよ」
「じゃあ……缶コーヒー」
僕はそういわれて足早に自販機に向かう。
背中には翼の明らかに不審げな視線を感じる。
自販機に小銭を入れながら頭の中で告白のセリフを考える。
そもそも、翼に告白するなんて考えていなかったな……
もちろん、翼のことは好きだ。
でも、それは友達としてであって、恋愛対象として考えると果たしてそれが正確に合致するかどうかはわからない。
だけど、僕は翼に告白する。
それが最も僕が誰かと結ばれて、且つ、僕が平和的な暮らしに戻ることができる手段として最善であると思える方法。
だからこそ、僕は翼と付き合わなくてはいけないのだ。
「お待たせ。熱いから気をつけてね」
そういって翼に缶コーヒーを差し出す。
翼は相変らず疑心暗鬼な視線で僕を見ている。
僕は翼の隣に腰を降ろした。翼も缶コーヒーを開いて飲んでいる。
しばらくの沈黙。誰もいなくなった公園で、僕と翼だけがはっきりと存在していた。
「……で、話ってなんだよ」
沈黙を破ったのは翼だった。
僕の方から切り出そうとしていた手前、つい戸惑ってしまう。
「え、えっと……翼、今、付き合っている人、いるの?」
「……はぁ? なんじゃそりゃ?」
怪訝そうな顔で僕を見る翼。
男勝りで快活、多少がさつであるが、話していい気持ちのいい翼は男子受けもよい。
そんな翼はクラスでもそれなりに人気があるとの話だ。
「……なんでそんなこと聞くんだ?」
「ま、まぁ……なんとなく」
「ふーん……まさか、そんなこと聞くために呼んだんじゃねぇよな?」
「ち、違うよ! それは違う!」
不機嫌そうな顔で僕を見る翼。
僕は必死で否定する。
もちろん、翼が怖いということもないが、女の子にしては僕と同じくらいの高い身長。
怒らせない方が無難ではある。
しばらく機嫌悪そうに僕をジト目でにらめつけた後、呆れたように翼は溜息をついた。
「……いねぇよ。そんな奴」
「あ、ああ。そう……なんだ」
「大体よ、俺が男と付き合う? そんなわけねぇだろ。あり得ないんだよ。そういう話は」
そのまま大きくあくびをしてベンチに横になってしまう翼。
僕はゴクリと唾を飲み込んだ。
ここだ。ここしかない。
「……じゃあ、もしあったら?」
「はぁ? 何が?」
「その……翼が……誰かと付き合う、ことがさ」
僕は腹の底から押し出すようにそう言った。




