やり直しの世界 3
「もしもし? 翼?」
「あ? 隆哉か? なんだよ? 電話なんて珍しいな」
僕は自宅に帰るなり翼の家に電話した。
始めに翼が出てくれたのは好都合だった。
「ああ。申し訳ないんだけど、今日、僕の家の近くの公園に来てくれないかな?」
「公園? あの公園か?」
あの公園、というのは、僕達幼馴染が小さい頃遊んでいた公園のことだ。
だから、公園といえば、それすなわちその公園のことを指すのであり、そういえば翼にもわかってもらえると思ったのだ。
「うん。そう。大丈夫、かな?」
「……いきなり、何の用か知らねぇが……まぁ、隆哉がそういうんならいいぜ。すぐ行く」
「あ、ありがとう! じゃあ、公園で」
そういって僕は電話を切った。
よし。とりあえず、ここまでは大丈夫。
後は公園に行くだけだ。だけど、そこでうまくできるかどうかは気になる。
なにせ、そういうことをするのは今回が初めてなのだから、緊張はする。
といっても、相手は翼なのだから、心配する必要は……
いや、むしろ翼だから緊張してくるのかもしれない。
だけど、ここぐらいは、笠木隆哉、男を見せなくてはいけない。
僕はそう意気込むとそのまま家を出て公園に向かったのであった。
既に夕日も暮れかかっている時間。
急いで帰ったから、前回のように夢に出会うことはなかった。
出会ってしまっているとそれはそれで面倒なことになったのだろうが。
だからこそ、公園に着くまでの道も気を配らなければいけない。
誰かに遭うのは極力避けた方がいい。
僕は慎重に、且つ大胆に公園へと向かった。
公園に着いた。既に夕暮れということもあり人の影は少なかった。
噴水が中央にあり、ジャングルジムやブランコが申し訳程度に設置されている。
何の変哲もない公園。
小学生の頃までは、僕と幼馴染四人はここで遊んでたっけ。
懐かしい気分に浸りながら僕は手近にあったベンチに腰掛ける。
「ふむ。いい公園じゃな」
と、ふいに神様が僕の隣に姿を現した。
少し驚いたが、そのまま構わずに僕は目を細めて公園を眺める。
「うん……僕達の思い出の公園だからね」
「ほぉ。小さい頃は皆仲良くここで遊んでいたということか」
「ああ。そうだね……」
「しかし、今やその内の二人には殺される仲……むしろさらに仲が深まった、といってもよいのかのぉ?」
皮肉っぽい笑いを浮かべて神様は笑う。
僕はブスッとした顔を神様に向けてやった。
「そんな言い方はやめてくれ。まぁ……しょうがないんだよ。僕のせいだし」
「ふむ。一応自覚は出てきたようじゃな。前にお主に質問した時は、なぜこうなったのか、と言っておったのに」
「……2回も幼馴染に殺されればわかってくるよ。自分が悪いことくらい」
「ほぉ……少しは成長したか。ワシもお主に機会を与えたか甲斐があったのぉ。で、今回は大丈夫そうか?」
「大丈夫も何も……大丈夫さ。翼に限って夢や杏のことはないと思うよ」
「ほぉ。そりゃまたどうして?」
「翼はね。僕の友達なんだ。だから、僕に対して夢や杏のようなことをすることは絶対にない」
「友達? じゃが、お主の考えでは、この後、風早翼にその……恋仲になるよう頼むのじゃろ? だったら、それは夢や杏と同じような結末になることも充分に考えられるのではないかの?」
そこまで言う神様に、僕はニヤリと笑みを浮かべて返す。神様は怪訝そうな顔で僕を見た。
「……お主。確認するが、それ、本当にその通り上手く行くと思っておるのか?」
「ああ。上手く行くよ。大丈夫さ」
「まぁ、お主がそこまで自信を持って言うのならワシはもう口を出さぬが……お、噂をすれば影じゃの。ワシは退散するか」
神様の姿が消えると同時に、こちらへ走ってくる翼の姿が見て取れた。




