やり直しの世界 5
僕はあくまで冷静にだが、曖昧に微笑みながら翼に言う。
翼はむすっとした表情で僕を見ていた。
しばらくそのままの表情で、ずっと。
そして、ふいにまた溜息をつくと、微笑を浮かべる。
「ああ。もし、あったら……そうだな。まぁ、面白いかもな」
「お、面白い……か」
「ああ。面白いな」
「じゃあ……その面白いこと、してみない?」
「……は?」
翼は僕を見る。僕も翼を見る。
一筋の汗が僕の額を流れた。翼は僕をじっと見つめている。
「……隆哉。なんだ、お前、俺を馬鹿にしているのか?」
「いや、僕は本気だ」
「本気って……えっと……その……お前と、か?」
「……うん」
翼は狐につままれたような顔で僕を見ている。
僕は翼から視線が動かせなくてずっと翼を見ていた。
しばらくして翼はふっと俯いた。
そのまま大きく息を吐く。
「……よし」
そして、立ち上がった。そのまま公園の出口の方へ向かって歩き出したのである。
僕も慌てて立ち上がる。
「ちょ、ちょっと! 翼!」
しかし、翼はそのまま歩いていってしまう。
不味い。このままでは本当に不味い。
僕は走り出した。そして、そのまま翼の肩を掴む。
「ちょ、ちょっと、翼! それはないんじゃないの!?」
「……」
「黙っていてもわからないよ! ダメならダメ、OKならOKって言ってよ!」
僕が大声で言うと翼は少し驚いたようだった。
女の子らしい細い肩がビクンと震える。
そして、ゆっくりと身体をこちらへ向ける。
その顔はどこか悲しげだった。
「……なぁ、隆哉。いいのか? それで」
「え? な、何が?」
「……俺でいいのか、って聞いてんだよ」
翼が僕を見る表情は真剣そのものだった。
「あ、当たり前だろ! 良いに決まっているさ!」
「……本当かよ!? お前には夢も、杏も、澪もいる。その中で俺? ちょっと信じられないぜ? 例えるなら、三軒並んだ有名レストランをスルーして、その後ろにある小汚い定食屋に入るような選択だ。金のないヤツならわかるが、お前は持っている。富めるものだ。なのに、それでいいのか?」
翼は辛そうな顔でそう言った。
もちろん、そう言われると、本当のことはわからない。
僕の中で四人の幼馴染は同等の価値だし、そもそもその中から一人選ぶということ自体無理な注文だ。
だけど、この質問には詰まってはいけない。
それだけはしてはいけないことだ。
僕は真っ直ぐに翼を見つめていった。
「ああ……それでいい。僕は、翼がいいんだ」




