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転生ダンジョンマスターですが、弱小だし、辺境だし、どうやって生き残れと?  作者: 膝関節の痛み
第3章 弱小辺境ダンジョンの新事業

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1.ロリBBA商会長のお願い

 お客さんが来ない。

 まだ猟が始まっていないのだ。

 宿に原因があるわけではないにせよ、営業面では致命的である。


 言われてみれば、今は餌の乏しい冬が明けたばかりで獣は痩せているのだから、猟に向かないのは当たり前だ。

 春になれば猟が再開されると思い込んでいた私がバカだった。

 家族に猟師がふたりもいるんだから確認しとけよって話だ。


 現在、その猟師ふたりは、ダンジョンに戻ることなく引き続き村で仕事中である。

 農家は畑仕事や家畜の世話で忙しく、猟師チームは害獣対策として、ねずみやモグラ用の罠を作ったり、草原で冬の間に増えたスライムとかを狩ったりと、やることがてんこ盛りだそうだ。


 採取チームは一度様子見に来たけど、特にめぼしいものが見つからなかったらしく、これまで通り森の浅いところで山菜などを採っている。

 父さんによれば、村の作業が一段落したら魔物狩りは再開するらしいのだが、つまりそれまでは開店休業が確定したということである。

 けっこうしんどい。


 こうなってみるとディオさんと契約しておいて良かった。

 とか思ってたら、そのディオさんが「ちょっと相談があります」って転移してきた。


「新しい魔道具が売れてないです。本はもっと売れてないです」


 挨拶もそこそこにディオさんが悲報を口にした。


「あんなに自信満々だったじゃないですか」

「自信はあるですよ。ダイエット方法を書いた教本も付けたです。

 カロリー測定の方はまだしも、体重計は絶対に売れるはずなのです。

 でも、新しい理論のせいなのか、なかなか信じてもらえないです」

「そんなのディオさんを見れば一目瞭然じゃないですか。

 『私はこれで痩せました!』って見せればいいんですよ。

 てか、ディオさんちょっとリバウンドしてません?」

「それは無理なのです。

 ディオはずっと人前に出ていなかったので、ディオの昔の姿を知ってる人がいないです」

「あ、そういう……」


 引きこもりじゃあビフォーアフターの比較なんてできないもんね。

 そりゃ、エビデンスなしのダイエット器具なんか売れるわけない。

 あと、リバウンドの件はスルーしやがったよ。


「誰かいないの? 商会の取引先とか」

「取引先とは営業の担当が会うです。

 ディオのことをよく知ってるのは領主さんくらいですけど、王都に行っていてまだ戻ってきてないです」

「じゃあ、戻って来てからだね」

「いえ。戻ってきても、領主さん太ってないので買ってくれないです。

 なので方法を考えたです。思い切って無料でお試ししてくれる人を募集たらどうでしょう?」

「あ、それいいんじゃない?」

「ですよね?

 そんなの聞いたことない、タダで使わせるなんてダメ!って副会長は反対するですが、ディオは画期的な方法だと思うですよ!」

「うん。商会と関係ない人が成功すれば、みんな信じると思う」


 さすが商売人。無料モニタを自力で思いついたか。


「じゃあ、早速明日から募集始めるです」

「うん。頑張ってね」

「はいです。ミリちゃんもよろしくお願いするです」

「え? 何を?」

「またまたぁ、とぼけなくていいですよ?

 ダンジョンでダイエットを体験すれば必ず評判になるです」

「うちでやるの? ダメです、それは!

 ここ、ダンジョンですよ?

 一般の人を入れてバレたらどうするんですか!」

「大丈夫です! そこはちゃんと考えてあるです!」


 そう言って、ディオさんはバッグから紙を取り出した。

 そこには2つの魔法陣と何やら細かな注釈が付けられたドアの絵が書かれていた。


「何ですかこれ?」

「ドア型の転移陣です。

 これを商会の地下室に設置しすれば、直接ここに来ることができるです」

「ん? どゆことですか?」

「つまりですね、地下室からドアをくぐった次の部屋が、このダンジョンのどこかになるです。

 ドアの先が遠くにあるダンジョンだとは誰も思わないですし、よほど高位の魔導士でもない限り、転移したことには気づかれる心配もありません」

「ほんとですかぁ?」


 疑いの目を向ける私に、ディオさんはグイグイ迫る。


「ほんとです!

 温泉を使わせてくれるだけでいいです。その他のところには一歩も入らせないです。

 そう、これは販売協力なのです!契約書に書いてあるです!

 それとも、ミリちゃんは契約破るですか?」

「いや、破りませんよ? 協力はもちろんします。ただ……。

 ちょっと考えさせてもらっていいですか?」


 さすがに即答はできないので、家族会議案件として一旦持ち帰らせてもらうことにした。

 その後、そそくさと帰ろうとするディオさんを引き留めた。どうせ絶対になんか食べるつもりだからだ。

 ダイエットが成功して正しいロリBBAになったんだから、すぐリバウンドするとか鬼トレーナーとして絶対に許さん。

 お説教に加え、たっぷり2時間の温泉ウォーキングをやってもらった。


 ヘロヘロになったディオさんが帰った後は、早速対策会議だ。

 私は母さんとリリにディオさんからの要請内容を説明した。

 ちなみにコア部屋には家族でも入れないので、モニタしているコアちゃんの意見は

リリから発言することになる。


「――でね、私としては、ダンジョンだってことが秘密にできるならやってもいいかなって思ってるんだけど、母さんどう思う?」

「転移のドアだっけ?

 ディオが大丈夫って言うなら、多分大丈夫だと思うよ。

 転移の魔道具はあそこの看板商品だし、がめついけど、技術は王国一って評判だからね」

「なるほどお」


 どうやら品質については信用できそうだ。

 もちろん、自分の目でちゃんとチェックするけどね。


「となると、あとは運用費の問題だね。

 温泉動かすと、最低でも一日12DPかかるでしょ?

 今は宿のお客さんがいないから、ちょっと赤字になっちゃうんだよね」

「はい!ディオおばちゃんみたいに泊まってもらっちゃダメなの?」


 リリが手を挙げて、かわいらしく意見を下さった。

 尊いけど、採用は難しい。


「そうだねえ、来る人がディオさんクラスの魔導士だったらそれでもいいんだけど、そんなに都合よくはいかないと思うんだよ」

「そっかあ……」

「ごめんね、せっかく考えてくれたのに」

「何言ってんのよミリ! リリちゃんが正しいわ!」


 ばあばが全力で孫の肩を持った。

 いや、気持ちはわかるけどさ。


「いーい?

 そもそも魔道具を買えるのは、貴族かそこそこ以上の商人かお金を貯めて引退した元冒険者くらいなのよ。

 リムズデイルには領主様一族しか貴族はいないし、商人は忙しい。となると、体験に応募するのはお金と暇のある元冒険者になるわね。

 金持ちの元冒険者ということは、当然ランクは高かったわけで、つまり全員が一定以上の魔力持ちということよ」

「魔力のない冒険者は?」

「そんなのいないわよ。魔力が足りなかったらヒューみたいに適性試験で落ちるもの」

「父さん落ちたの?」

「あ、これ内緒ね?言うと拗ねてめんどくさいから」


 父さんの黒歴史か。いいこと聞いた。


「冒険者さん来るの?」


 私のニヤつきを洗い流すように、リリが目をキラキラさせて訊ねた。

 そっか、ずっと冒険者を待ってたもんね。

 これは無下にできないなあ。


「来るよ。もう引退しちゃったけど、昔は強い冒険者さんだった人だよ?」

「やったー! 冒険者さんだあ!」


 ああもう、かわいいなあ!

 コアちゃんも念話で乗り気だし、もうこの線で行くっきゃないでしょ!

 そうだ!元冒険者はこちらからの条件にさせてもらおう!


 こうして、まさかのモチベ爆上げでモニタ受け入れが決まってしまった。

 しょうがない。かわいいは正義だ。

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