第4話 全校生徒の前の「審判」
翌日の昼休み。
学校の一番大きなオープンスペースであるセントラルラウンジは、異様な熱気に包まれていた。
学校一の有名人である蓮くんが、大勢の生徒が見守る中、
美月と拓海くんを呼び出したからだ。
遠巻きに何百人もの生徒がスマホを片手に注目している。
その中心に、私は蓮くんに肩を抱かれるようにして立っていた。
「蓮くん、急に呼び出すなんてどうしたの? 私、実結のことが心配で……」
美月は相変わらず、消え入りそうな声で悲劇のヒロインのフリをしていた。
でも今の私は知っている。
知っているよ。美月。
──知りたくなかったけど。
隣に立つ拓海も、気まずそうに、でも私を忌々し気に見つめている。
蓮くんは、ポケットから自分のスマホを取り出すと、
ラウンジの中央にある大型モニターにそれを接続した。
画面に映し出されたのは、ある「通信ログ」のデータと、ネット掲示板の管理画面だった。
「おい、美月。これに見覚えはあるか?」
蓮くんの低く冷徹な声が、ラウンジに響き渡る。
「え……? 何、これ……?」
美月の顔から、みるみる血の気が引いていく。
「あの嘘の写真をネットに一番最初にアップロードした端末のIPアドレスだ。お前のスマホの固有番号と、完全に一致した」
ラウンジがざわめきだす。
「……お前が裏で、うちのチームの奴らに『実結の写真を拡散しろ』って命令してた通話録音データも、ここにあるぞ」
蓮くんが画面をタップすると、美月の声がスピーカーから大音量で流れた。
『あの地味子、調子に乗っててムカつくんだよね。早く学校にいられないようにしてよ』
静まり返るラウンジ。
「嘘だろ……」
「美月がやったの?」
生徒たちからざわめきが起こる。
「美月……お前、俺を騙してたのか……?」
拓海が、裏切られた衝撃で目を見開いた。
白々しい。
最初からこいつも美月の共犯だったクセに──!
「違う! これは捏造よ! 蓮くん、実結に騙されないで! 実結は拓海を誘惑して――」
「往生際が悪いんだよ」
蓮くんが美月の言葉をピシャリと遮り、底冷えするような三白眼で彼女を睨みつけた。
「実結を嵌めて、悲劇のヒロインのフリをして楽しかったか? 」
蓮くんが一歩前に出る。
「お前が好きなのは拓海じゃねえ。拓海の『蓮の親友でモテる』っていうステータスだけだろ」
蓮くんの怒りが拓海にも向けられる。
「実結を傷つける奴は、誰であれ俺の目の前から消えてもらう」
「っ……あああああーーーっ!!」
すべてが暴かれた美月は、頭を抱えて発狂したように叫び、その場に泣き崩れた。
周りの生徒たちの目が一瞬で美月への軽蔑へと変わった。
「実結……俺、お前のこと……」
青ざめた拓海くんが、震える手で私に近づこうとする。
自分の誤ちに気づき、後悔に満ちた目をしている。
けれど、私は蓮くんの学ランの裾をきゅっと握りしめ、拓海くんを真っ直ぐに見つめ返した。
「拓海くん。私を信じてくれなかった拓海の言葉は、もう私には届かないよ」
そして私は二人に別れを告げる決意を決めた。
「……あなたたちの顔は、二度と見たくない」
私が静かに、でもハッキリと告げると、拓海くんは絶望したようにその場に立ち尽くした。
蓮くんは私の手を優しく、でも誰にも渡さないと主張するように強く握りしめてくれる。
崩れ落ちる二人に見向きもせず、私を連れてその場を歩き出した。




