表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
3/5

第3話 雨の中の救世主

 あれから数日。学校は私にとって、ただの息苦しい地獄でしかなかった。






 私の存在は完全に無視され、すれ違うたびに向けられる冷たい視線と、クスクス笑う声。




「美月を裏切った最低女」




 そのレッテルを貼られた私に、弁明するチャンスなんてどこにもなかった。




 ♢




 そんなある日の放課後。

 私は誰もいない渡り廊下で、偶然、拓海くんと出くわした。




「あ……拓海くん……」




 すがるような思いで声をかけた私を、拓海くんは信じられないくらい冷たい目で見下ろした。


 前までの優しい笑顔は、どこにもない。



「……もう俺に話しかけるなよ」




「え……?」




「美月から全部聞いた。お前、蓮に近づくために俺を利用したんだってな。美月が裏でどれだけ泣いてるか知ってんのか?」



「違うの!  私はそんなこと……!」



「お前が蓮を好きなのは勝手だけどさ……俺の気持ち、踏みにじって楽しかったか?」





「っ……」





 言い返す言葉が、喉に詰まる。拓海くんの瞳にあるのは、私への純粋な軽蔑だった。


 拓海くんはそれ以上私の言葉を聞こうとせず、肩をぶつけるようにして去っていった。




 その瞬間、外の空気が一気に暗くなり、大粒の雨が地面を叩きつけ始めた。

 まるで、私の心を映したような土砂降りの雨。




 ♢





 私はもう、教室に戻る気力もなくて、カバンを抱えたまま保健室の裏の濡れたベンチに座り込んだ。



 雨の音が、私のすすり泣く声をかき消してくれる。






(どうして……どうして誰も信じてくれないの……?)






 冷たい雨が私の体温を奪っていく。




 孤独と絶望で頭がどうにかなりそうだった、



 その時。


 

 バタバタバタッ、と激しく水溜りを跳ね上げる足音が近づいてきた。




「ハァ、ハァ……っ、実結……!」




 濡れた前髪の隙間から見えたのは、




 傘もささずに、




 激しく肩を上下させている、

 




 蓮くんの姿だった。





 息を切らし、狂ったように私を探していたのが一目でわかるほど、全身の服が雨で張り付いている。




「蓮……くん……?  なんで……」




 私が驚いて顔を上げると、



 蓮くんは一瞬で私の両肩を痛いほど強く掴んだ。





「探した……っ、どこにいたんだよお前……!」




「冷たい……蓮くん、雨に濡れちゃうよ……私に関わったら、蓮くんまで……」




 そう言って俯こうとする私の顎を、蓮くんの大きな手が強引に上を向かせた。


 その三白眼は、怒りで燃えるようにギラギラと輝いている。





「関係ねえよ、そんなこと……!」




 蓮くんは、自分が着ていた黒い学ランをバサッと脱ぐと、私の濡れた肩に乱暴に、でも愛おしそうに着せかけた。


 彼の体温が残る学ランから、独特の甘い香りがして胸が苦しくなる。





 次の瞬間、私は蓮くんの固い胸の中に、強く、強く抱きしめられていた。





「なんで俺を頼らねえんだよ……!」



「蓮、くん……」



「あの写真が嘘だってことくらい、俺が一番よく分かってんだよ。学校中が、世界中がお前を敵に回して、嘘の噂で責め立てたとしても……」




 蓮くんの腕の力が、さらに強くなる。骨がきしむほど、必死に私を自分のものだと主張するように。




「俺だけは、お前を信じる。お前の味方だ。……だから、もう一人で泣くな」






「……っ、うあ、ぁ……っ!」






 その言葉を聞いた瞬間、せき止めていた涙が溢れ出した。




 私は蓮くんの濡れたシャツを両手でギュッと掴み、子供みたいに声を上げて大号泣した。





 蓮くんは何も言わず、ただ私の背中を大きな手で何度も、優しく、撫で続けてくれた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ